下準備(35)
3019年 2月1日
朝起きると、要らん勘違いをしたリンガーレイフォンが喚いた。
「口の中が変、なにをした」
それはお前の寝ゲロだ。馬鹿野郎。
オスマンさんのところに行って話をしたいんだが……。
どうにもならないので、思いついてアカ子に連絡を取ってみた。
『近くまで帰ってきてるなら、帰ってくれば良いと思いますけどぉ』
なんてフ抜けたことを言うんだ。指名手配されたら石鹸販売が出来なくなるんだぞ。
そうなりゃ、宝石もパー。それこそ、山賊でもして当面の上を飢えをしのぐ事に……しまった、アカ子のやつ飯を食べなくても平気だった。道理で能天気なはずだ。
しかし、帰ってくれば良いと言うアイディアは良かった。
治安維持は俺の仕事だったが、犯罪者を更生させるのは別の人だ。
ならば犯罪者疑惑をかけられるのが俺でも、払拭するのは別の人でも良いはずだ。
人格者ならアンリエードが一番だろうと、アカ子と変態マスクには部屋から出てくるなと伝えて、アンリエードの家に騙くらかせてリンガーレイフォンを連れて行く。
話をどう持って行こうかと思っていたら、アンリエードはリンガーレイフォンと顔見知りだった。リンガーレイフォンも覚えていた。
アンリエードが話を膨らませて、実に和やかな空気になった。
アンリエードの旦那さんが前将軍だったらしい。将軍と言えば軍部のトップだ。彼女の息子と領主の娘のクラウンが婚約をするくらいだから、中々偉いだろうなと思っていたが正しかったわけだ。
驚いて、しみじみしているうちに気がついたら、リンガーレイフォンが俺の弟子になる事が決まっていた。
……空気が和んで、気がついたら、そう言う事になっていた。
油断した。