独り立ち(23)
3018年 8月8日
ヨッサムの町と言うのは思ったよりもかなり大きかった。
地面も石畳に舗装されていた。下水などの設備もありそうだ。感心する。
建物は平屋がほとんどないし、実に入り組んでいる。ありていに言えば都会である。
町の周囲を城壁が囲み、守りも堅そうだ。ぶらぶらと町を見て回ると、商店も多い。顔だちも多種多様だ。
割と白人系の顔しか見なかったほかの村とは違って、肌の色が露骨に違うのも何人かいた。数はやはり少ないが。
ここなら、うまく働けそうだ。ドーレスの話だと、仕事を斡旋してくれる「紹介屋」と言うところで、仕事を貰うらしい。
その多くは酒場にいて、酒場のマスターはそれを把握していると教えてくれた。
要は仕事を斡旋してくれる人だ。ハローワークみたいなもんだ。と言うわけで、晩御飯には夜が更けてから酒場にむかった。
酒場は数があったが、目安として宿屋から近くて賑やかなところを選んだ。
なぜかと言えば、その方がアウトローぽいからだ。カウンターがあって、机といすが並んでいる。
雰囲気としては西部の酒場と言う感じである。まず俺が入った時の反応は特になかった。
カウンターに座って、果実酒を頼んだ時にようやく反応があった。「ここは子供のくる所じゃないぞ」と酒場のマスター。
実にモラルがある発言じゃないか。だが俺にも作戦があった。
「いや、実は大人なんだ」と俺。怪訝な顔をするマスターに俺は嘘八百を並べ立てる。
俺がした説明は魔女に魔法で子供の姿にされた。その魔女を探して旅をしているというものだ。マスターは完全に信用してない様子だった。都合のいい事に客の一人が絡んできたので、腕相撲を挑む。勝も勝ったり、八連勝。
酒場にいたのは荒くれ者だと思うが、酒場のマスターも目を丸くしていた。
紹介屋の居場所を聞くと、昼間にしかいないそうだ。
うーむ、残念。
まあ、デモンストレーションがなければ、話は聞けなかっただろうから、無駄ではあるまい。
ちなみに果物酒は酸っぱかった。俺は甘いのが好きだ。