独り立ち(21)
3018年 8月6日
夕方には二番隊の基地にたどりついた。行きと違って予定通りだ。
とりあえず、荷物を返して、ドーレスに下働きを辞めることを話した。
「無理せず、ここでの下働きを続けたらどうだ? 便宜は図るぞ」などとは言ってくれたが、こんな居心地の悪いところで働けるか。
イジメに耐えられるほど、人が出来てないんだ。俺は。
さらに話を聞くところ、傭兵と言う稼業があるらしい。
資本は体一つ。実にお手軽だ。
しかし戦争もないのに、傭兵なんてと思ったが、仕事自体は少なくないらしい。
まず馬車などの護衛、これは山賊などから荷物を守る。偉い人の護衛や、緊急時の人手などにも借りだされるそうだ。
よく考えてみればアンリエードの家から、この基地に来るまでにも山賊に襲われている。
すっかり傭兵と言うのは戦争に駆り出されると思っていたが、なるほどそう言う事もあるだろう。
荒事専門の人材派遣業みたいなもんだな。
交通網、情報網、工作機械などが発達している地球とは違うのだ。感覚のズレが、発想を貧弱にしている。
「しかし、稼ぎは大きいかも知れんが、後ろ盾もなく、怪我をすれば終いだぞ? 軍に入れば、休みもあるし、保障もある。今のうちからきちんと学べば異人であるとはいえ、偉くなれるかも知れんぞ」
そう話すドーレスはもともと傭兵から軍人になったらしい。などと言われても、これ以上俺の身長は大きくはならないのだ。
それに思ったよりも異人であるハンデが大きくある。どだい無理だ。と言うわけで傭兵をやることにした。
こっちは正規雇用ではないので、年齢も、容姿も気にしなくていい。
腕っ節だけで十分だ。俺はそういう単純なのが良いんだ。
さらに王冠を売りに出したいと相談したら、目を見開いて驚かれた。
リューマ山から拾って来たと言ったら、ますます驚かれた。
とりあえず、そう言う事はクラウンが詳しいのでそちらに聞いておくとのこと。
相場なども解らないから、完全に任せておいた方がいいだろう。
お金は後で送ってもらうか、取りに来ればいい。とりあえず傭兵のなり方を聞く。
ドーレス曰く、大きな町の方が仕事があるらしい。
この辺で大きな町と言うと、ヨッサムという町の一つしか無いらしい。
ドーレスにもう一回お金を借りた。金は無利子で貸してくれると言うし、王冠が売れた代金で返せば良い。最悪持ち逃げの形になっても王冠を質にいれたようなもんだ。あまり気にならない様子だった。
今日のうちに、乗合馬車にのって町に出発する。この際だ。片言キャラはやめよう。実に面倒だったからだ。