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惑星ジェミニ物語  作者: 森山 銀杏
第六章『大地』
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独り立ち(16)


3018年 8月2日


化け物は、そりゃもう化け物だった。


甘く見ていた。大きさは昔動物園で見たアフリカゾウくらいだが、造形はまるで違う。


緑色で、丸い。もこもことした毛でおおわれた体はどこかユーモアもある。そこから羽が生える。これまたもこもことした羽だ。それが折りたたまれている時はまるで鶏のようだ。目はくりっとしていて不気味だ。大きな口に生えそろった歯は一部の乱れもない。

手足も短い。まるで人間の赤ん坊みたいに胴体だけがデカイ。


出来損ないのマスコットみたいな外見をしていた。


しかし早い。これが驚く位に早い。


宇宙服を着ていたら、リミッターを九十まで引っ張って、ようやく避けられるレベルだ。


俺はこの星の人間を相手にした印象で、どうやらこの星の生き物全般を舐めていたらしい。


骨格が違えば、構造も違う。軍では人間以外の相手の戦い方は習わなかった。人間以外の動物はだいたい保護対象だからな。


二世紀も前にミュータント兵器は禁止されたし、俺もデータでしか見た事が無い。だからと言ってこちらも百光年先からやってきた科学の子だ。原生生物、自然に生まれた進化の産物に負けるわけにはいかない。


宇宙服のシステムに電源を入れて、ぶん殴ってやった。


宇宙服に内蔵された運動補助機能は並大抵ではない。いわば人型の重機だ。宇宙船には宙間整備用のポッドは準備されてなかったのはこの宇宙服があればこそだ。

そんな訳で殴りあって、勝ちそうだったら、その緑の毛玉が喋ったのだ。いわく『自分は賢者の僕である』とのこと。


名前はラゴウ。森の守護者であるらしい。


ずいぶんと長い時間、この山と一帯の森を守ってきたが、俺の様に強い人間は初めてだと褒められた。


そして要求を聞かれた。


そうして聞かれると、俺は非常に困る。


まさか化け物が喋るなんて思っても見なかった。とりあえず、おまえを倒して名前を売ろうと思ったと説明したら、呆れられた。


「そんな勝手な事情があるものか」と言われれば、ぐうの音も出ない。


しかし俺にも目標がある。じゃあ、お前の主に合わせろと要求すると、ラゴウでは判断しかねるとのことだった。


とりあえず、賢者とかいうラゴウの主人に話を通させることにする。


怪物をやっつけたという目標は達成できずとも、怪物の問題を解決したと言う実績くらいは欲しい。


「今日、話しておくから明日知らせよう」


森の外でキャンプする事も考えたが、村に帰る事にした。アイシャに今日には帰ると伝えてなかったら、森の外でキャンプしても良かったのだが。


「であれば、村まで伝えて行くようにしよう」


ラゴウがそう言ってくれて助かった。

なんだか疲れて、村に帰れたのは夜だった。


明日の朝には緑の賢者に話を通したラゴウが村まで来る手はずになっている。しかし疲れた。


宇宙服の運動補助の効果はやはり高い。だが調子に乗って使ったのはまずかったかもしれない。


電源の消費がやはり多い。元々充電できない状況での使用は考慮されてないからなぁ……。


壊れても修理できるわけも無いし。


まずったかなぁ。

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