独り立ち(1)
3018年 7月19日
アンリエードに別れを告げて家を出た。いつか恩返しに必ず戻ろう。
村の方で準備されていた馬車に乗る。でかくて立派だ。さぞや高いに違いない。
車輪というのもすごい。木材をどうやって丸くするのだろうか? と思ってしげしげ眺めると一枚板ではなかった。
複数のパーツから組み立てられてるとは……感心だ。確かに木材は溶かして固める事が出来ない。
少しずつ曲げるのだろうか?
ウーム、わからん。
馬と言っても、四本足であること以外に馬には見えない。どちらかと言うとカバに近いが脚が太長いので気持ちが悪い。
でも足はそこそこ速い。大体二日もすれば、クラウンの領地にはたどり着くらしい。
そして揺れ始めると同時にクラウンとドーレスの二人から質問攻めにされる。
漂流して、記憶喪失で、見た目は子供でおまけに強いと成れば相当怪しいだろうから当然だ。
だが、記憶喪失である事で何とか話を通しきった。
しらん、わからん。存ぜぬ、不明。わからない。と言い続けた。片言にしかしゃべれない設定も誤魔化す時には役に立つ。
俺はこの星の基礎知識が無いのだから、変にボロを出すわけにはいかない。
俺はドーレスの所属する二番隊にそのまま見習いとして配属されることになるらしい。
知り合いがいるのは心強い。
今日は野営だ。飯がまずい。しょんぼりだ。