未知との遭遇(8)
3018年 7月7日
突然、茶髪の青年が家に駆け込んできて、決闘だと喚き散らした。
年は二十なるか、ならないかくらいだ。
アンリエードの話では、この村の偉い人の三男坊で、未亡人の彼女に求婚をしているのだとか。
そんな女性に、身元不明の人間が転がり込めば不満にも思うだろう。
「どこの馬の骨とも知れぬ異人の子が、黒髪など汚らしい。恥ずかしくはないのか?」
三男坊がそんな事をほざくのでカチンと来た。
俺が腹を立てたポイントは二つ。黒髪を馬鹿にしたことだ。俺は俺の身体的な特徴をあざ笑う奴が大嫌いだからだ。
まだ髪の色だったから良いがもし身長を馬鹿にされてたら、奥歯を引っこ抜いてやるところだ。
次に俺を子供と認識した上で俺に言ってきた事だ。
俺はフェミニストだから、子供をぞんざいに扱う奴が大嫌いだ。
だから奴が撤回した決闘を受けてやった。むしろ申し込んでやった。
アンリエードはやたら心配してくれていたが、負ける要素はまるでなかった。
人体の構成物質は、地球もジェミニもそう違いはない。
それはナノマシンで調査済みだ。だが、ナノマシンで強化されている俺はどちらかと言えば鉱物に近いくらいに密度が高く、面積は少なくても出力が圧倒的に上だ。
強化されていない人間を乗用車とするなら俺は戦車だ。
多少乗用車が大型になっても、負ける要素は無い。
さらに言えば、俺は軍での格闘訓練ではそれなりの成績を収めていたのだ。
決闘の形式が、使い慣れていない剣になってもそれは一緒だ。
あんまり俺を馬鹿にした顔をしてるから、ぶっとばしてやった。ぐわははははははは。
背が高いからって調子に乗りやがって。
剣をはじいて、顎をぶん殴ってやった。圧勝だった。
でもそのあと喧嘩はいけませんと、アンリエードからひどくしかられた。
まさかこの年で、普通に説教をくらうとは思ってなかった。
反省。