未知との遭遇(2)
3018年 7月1日
どうやら彼女はいい人であったらしい。食事を無償で提供してくれる。
いくらでも入りそうだ。絶食生活で、満腹中枢が壊れたのかもしれない。
幸いにして俺も馬鹿ではなかったらしく、女性が緊急セットの入ったバックを俺に差し出してくれた。
どうやら、救命バルーンの中から一緒に持ち出していたらしい。
倒れていた近くに置いていたから、拾ってくれたのだろう。
良かった。これが無かったら大変だった。
栄養が補給された事で体が動くようになった。
違和感はあるがゆっくりと動く分には問題ない。
夜中にベッドを抜け出し、家の中の周囲を探る。
生活道具を見るに、彼女は一人暮らし。
周辺に民家は無し。何か特殊な事情でもあるのだろうか?
そのまま闇に紛れて女性の部屋に忍び込み、その額にナノマシンアンプルを打ち込む。
ナノマシンを打ち込めば特殊な加工のされていない生命体ならば、操り人形にすることもできる。
ナノマシンで記憶をつかさどる部分を意図的に書き換えてしまえるからだ。
だが今回はそんなことはしない。彼女は命の恩人だからだ。
あの絶食生活を思い出す。そこから救ってくれた彼女は本当に恩人だ。
さりとて情報は必要だ。
申し訳ないと思うが彼女から言語を読み取り、それを自分の脳に送り込む。
ナノマシンの情報ではDNAの配列も似ている奇跡だ。
そのほか、役に立ちそうなデータを読み取って、端末から検索できるようにしておく。
あまり多くの情報を直接脳に書きこむのは人格が書き変わる恐れがある。
多用しないで、学習していく方が安全だ。知的生命体が居て、言語ができれば何とか生きていけるだろう。