スターダスト
3018年 6月6日
操縦席 ブラックボックス ボイスレコーダー最後の三分間。
『大気圏、突入スタンバイ』
『アカ子聞いたか!? 衝撃に備えろよ!!』
『ご、ご主人さまは戦車に乗らないんですか!? わ、私もそっちに行きます!』
『駄目だ! お前はそこにいろ。良いか。スピードを限界近く落としてから、ハッチを開いて、お前ごと戦車を外に放り出す』
『わ、私一人で放り出されても意味ないです!!』
『最後まで聞け! いいか、お前は俺を探せ。俺は死なん。だが、戦車とお前が積みこんだ装備は必要だ。いいな』
『わ、私一人で星の中からご主人様を探すんですか!? そんなぁ!!』
『無理でもやれ! あきらめてくれるなよ、返事は!』
『大気圏突入。五、四』
『わかりました! やってやります! すぐ見つけますからね!!』
『二、一!!』
『お舟ぇ! 落下限界まで速度を絞れ!! 海に落とせよ!』
『減速処理、行います。キャプテン、今ならまだ戦車に移れますが?』
『良い。操縦席にも緊急用の避難装置は付いてる……だろう?』
『……私に気を使ってくださっても無意味です。私にはもう“価値”がありません。ワームホール計画は失敗です。私は同時に価値を無くしました』
『感傷で付き合ってるわけじゃない。正規じゃない使い方をしないと、減速の処理が間に合わないからだ。俺の承認がいるだろう?』
『ですが、無くとも招くのは地表の被害だけです』
『今からそこに住むんだぞ。馬鹿言ってないで、減速はどうだ?』
『各パーツのパージ許可願います』
『了承する。派手にやれ!!』
『揺れます』
『ひぃいやあぁああ』
『これは、けっっこう、くるな! アカ子、戦車に積み込んだものを含めて全装備の使用許可をだす! ダンスを思い出して、自由に動けよ!』
『はい! ご主人様っも、げん、きで!!』
『減速のため、隔壁ハッチ、開きます。許可を』
『承認する。続けて、戦車を落とせ、タイミングは任せる!』
『了解しました。アカ子、お元気でキャプテンを頼みます』
『任せてください!!』
『隔壁開放、揺れます』
『うぉおお!!』
『ひゃあぁあ!!』
『ロック解除。三、二、一』
『い、いってきま―――』
『射出確認』
『ゆ、ゆれは、おさまらないのか!?』
『パージ許可、願います』
『しょう、にんする!』
『揺れは収まりません。落下速度低下……キャプテン』
『なん、だっ!!』
『キャプテンを射出後、エンジンを臨界崩壊させる許可をいただけますか?』
『んんっなっ! だっめだ! そんなこと、したら、木端微塵だぞ!?』
『そうすれば、地表に傷は付きません。臨界の瞬間に重力シールドを張れば地表への被害は抑えられます。パージ許可を』
『臨界は許可、でき、ない! パージは了承する!!』
『なぜですか? 許可を』
『だめだ!! お前は海に着水できるように、計算しておけ!!』
『私に価値はありません』
『そんなもんは、俺が、決めてやる!』
『……』
『海に落ちるんだ。後で引っ張り上げてやる! わかったか!!』
『了解しました……キャプテンは案外熱い人だったのですね』
『ちゃかすな』
『了解いたしました。先ほどの言葉を支えにしておきます』
『なるべく。いそぐ』
『はい。最終パージを行います。許可を』
『承認する。うぉおおおおお!』
『タイミングを合わせます。脱出を』
『わかった――――! 今の揺れは何だ!!』
『エンジン部に異常が発生……。カウント開始します。十五、十四、十三』
『まずいのか!?』
『十一、十、九』
『お舟! 聞け!!』
『六、五』
『艦首を思いっきり上げろ! それで減速をかけるんだ!!』
『三』
『うまくいきゃ、機体が折れる。そうすりゃ、エンジン部とお前を切り離せる!』
『一』
『命令だ、待ってろよ―――――――』
ビーが―ぶつん――――