忘れられない恋をもう一度
友達とお茶してるときにノリで作っちゃった作品です。
友達には意外と好評でしたので、投稿してみました。
自覚するよりも先に終わったソレは、『恋』と呼べますか―――?
堀川圭子28歳
思い返して見れば、今まで『恋』というものをしたことがない。
これまでにいた恋人は、好意は持っていただろうが、それが『恋』かと聞かれれば首を傾げてしまう。
「じゃあ、圭子さんは今まで一度も恋愛をしたことがないんですか?」
「そういうことになるねぇ」
場所は職場近くの喫茶店。
昼食も兼ねて会社の後輩とお茶をしている。
女同士集まれば自然と話に花が咲く。始めは社内の男前について話していたのに、いつの間にか自分の過去の恋愛についてアレコレと聞かれていた。
まぁ、もう歳なのに、これまで誰とも噂にさえなっていないから気になるんだろう。
「特に恋愛をしたいとも思わないし、別に男がいなくて困ることもないしねぇ」
「えぇ〜、先輩美人なのにもったいないですよ〜」
「はいはい」
ねー先輩ー恋しましょーよー、たのしーですよー、と誘う後輩を軽くながし、運ばれてきた料理に舌鼓をうつ。
「・・・先輩、美人だしスタイルバツグンだしその気になれば直ぐに男つくれますよー」
「そんなことより、パスタ冷めるわよ」
同じクリームパスタを頼んだから、彼女の前にも料理が載った器が置かれている。
「美味しいわよ」
「そうですか、『そんなこと』ですか、先輩にとっての恋愛って」
「えぇ、少なくとも目の前にある食事を優先するほどには『そんなこと』よ」
「むぅ・・・」
フォークを握りしめ、唸る後輩に苦笑しながら告げる。
「私が気に入る男って少ないのよね」
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後輩にはああ言ったが、圭子にも恋人がいた時期があった。否、自分の考えを押し付け合うことしかしなかった関係は、恋人と言うにはあまりにも拙い〔幼稚、頼りない、幼く、覚束ない〕ものだったけれど。
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なんでコイツがここにいるのよ・・・
月初めの朝礼で、海外支店からやってきた人物を見て、圭子は一瞬呆然とした後、顔を見られないように俯いた。
「ボストン支社から異動してきた笹川です。日本に戻ったのは八年振りですので、日本人らしくない振る舞いがあるかもしれませんがよろしくお願いします」
焦る圭子を余所にヤツの自己紹介が行われる。
きゃあきゃあと女性社員がはしゃぐ中、にこやかに挨拶をするヤツは自分が所属する総合課の課長になるそうだ。
(ああもう、今までハゲとか心の中で言っててすみません課長。いくらでも謝りますから行かないでカチョー!!)
ヤツを紹介している頭の薄い課長は地方支社の社長に就任するそうだ。
(出世はオメデドウゴザイマスだけど何もこのタイミングで・・・)
「――堀川さん?」
考えに没頭しそうになった圭子を引き戻したのは元課長の声。
「は、はい」
慌てて返事をした圭子に、元課長はとんでもない爆弾を落とした。
「堀川さんには笹川くんの補佐についてもらうから」
―――私になにか恨みでもあるんですかカチョーーー!!
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