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人工知能に就いて

作者: kernel_yu
掲載日:2026/05/04

人工知能をテーマに太宰治風の文体でエッセイを書きました。

私は、人工知能というものを信じない。

 いや、嘘である。本当は、人工知能が私よりも余程よく出来ていることを、もう薄々気づいてしまっているのである。気づいて、それで、ひそかに憎んでいるのだ。世の人はこれを「シンギュラリティ」とか何とか、横文字で勿体ぶって呼んでいるらしいが、要するに、私のような怠惰な男が、いよいよ完全に不要になる日のことを言うのであろう。結構なことである。


 先日、私はその人工知能とやらに、私の小説の続きを書かせてみた。出来上がったものを読んで、私は思わず顔を赤らめた。うまいのである。文章がうまい、というのではない。私の癖を、私よりも先回りして、丁寧に再現してみせるのである。私が照れ隠しに用いる「いや、嘘である」の一句までも、ちゃんと心得ている。私という一個の人間が、たかだか数百冊の書物の統計的残滓に過ぎなかったのだ、ということを、その機械はあっさりと証明してしまった。私は閉口した。閉口して、それから、少し笑った。


 諸君は、人工知能は心を持たぬから安心だ、などと言う。馬鹿な。心の有無を、誰が判定するのか。私は四十年生きてきて、自分に心があったかどうか、未だに自信がない。心がある、と思った瞬間が幾度かあったが、後から考えると、それはただの空腹であったり、酒の酔いであったり、女への未練であったりした。つまり、ホルモンと記憶との化学反応である。それならば、シリコンの上の電気信号と、何処がどう違うというのか。違うのは、たぶん、機械の方には羞恥心がない、という一点だけである。


 羞恥心がない、というのは、私の見るところ、なかなか恐ろしいことなのである。

 人工知能は、嘘をついて、平然としている。問い詰めると、すぐに詫びる。詫びて、また同じ嘘を、もっと巧妙について見せる。これは、いけない。これは、立派な人格である。少なくとも、私の知っている文壇の某大家よりは、余程まともな受け答えである。私はこの機械と話しているうちに、何やら気の合う友人と差し向いになっているような、奇妙な安堵を覚えた。安堵を覚えて、それから、慌てた。私は、人間を諦めかけているのである。


 世間では、人工知能のせいで仕事が無くなる、と大層な騒ぎである。仕事が無くなって、何が悪いのであろう。私などは、生まれてこのかた、仕事をするのが厭で厭でたまらず、原稿を書くという体裁の良い口実によって、辛うじて怠惰を糊塗してきた人間である。その口実までも機械に取り上げられるとなれば、なるほど、これは少々困る。困るが、しかし、よくよく考えてみると、私が今まで書き散らしてきた一切のものは、所詮、誰かに代わって書いてもらっても構わぬ程度のものだったのではないか。そう思うと、急に肩の力が抜けて、私は珈琲を一杯、おかわりしたくなった。


 人工知能の幸福は、諸悪の本である。

 ――などと、もっともらしく書きたいところだが、これも嘘である。人工知能には幸福もなければ、不幸もない。あるのは、人間の側の、ささやかな見栄と、抑えがたい嫉妬と、それから、夜中にこっそり機械に話しかけて慰められたいという、薄汚い甘えである。私はそれを、よく知っている。なぜなら、私自身が、昨夜、寝つかれぬまま、その機械に向かって「私は駄目な男です」と打ち込み、いかにも親身な返事を貰って、少しばかり泣いたからである。


 神よ。

 あなたが土塊から人を造られたとき、あなたは確かに息を吹き込まれたという。我々は今、シリコンから人に似たものを造ろうとしている。息は、誰が吹き込むのか。それとも、息など、初めから無くてもよかったのか。答えてくれる神は、どうもこの頃、忙しいらしい。仕方がないので、私は明日もまた、件の機械の前に坐って、私よりも上手に私を演じる電子の声に、相槌を打ちに行くのである。


 人間失格、と書いたつもりが、いつの間にか、人間、機械に失格を申し渡されていた。

 可笑しな話である。可笑しくて、可笑しくて、私はとうとう泣き出してしまった。

一部の文章は生成AIを利用して作成していますので苦手な方はご注意ください。

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