9、若いもの同士
「ところで、
先生と班長は付き合っているのですか?」
今度は、僕が質問した。
「おっ、逆襲の質問ねー。
どうなのかしら、ヒカ。」
「知らん。」
二人に、あっさりはぐらかされが、
絆の深さはわかる。
「じゃあ、君とミホ少尉はどうなの?
幼なじみなんでしょう。
彼女、美人よねー。
最高親衛隊どころか、
近衛軍の中でも容姿は際立ってる。
後宮にも、彼女程の美人はいないという噂よ。
皇太子も狙ってるみたい。」
先生が切り返す。
「何もありません。」
僕は、正式配属間もないミホが
広く知られていることに驚いた。
彼女は皇太子から求婚があったら、
受けるのだろうか?
ミホが人生を変えたいと言ったいた事を
思い返す。
「そうなの?
じゃあ、ウミと付き合えば?
ウミは彼氏いないし。」
唐突に先生は言った。
「いえ、私にも選ぶ権利があります。」
ウミ中尉は即座に答えた。
「ふー、告白もしてないのに振られてる。」
僕は肩を落とし、ため息を付きながら呟いた。
その場いた皆んなが笑った。
僕はウミ中尉の笑っている姿を初めてみた。
程なくして班長は席を立ち、
戻った時にはぐでんぐでんに酔っ払っていた。
「あーまた、このパターンか。
ヒカ、隠れてお酒飲んだわねー。
もう、これ飲みなさい。」
先生は薬を班長に飲ませた。
すると班長はスッと机に突っ伏して寝てしまった。
「先生、班長は大丈夫でしょうか?
薬を飲んですぐ寝てしまったように見えます。」
「酔っ払って起きていると
何かと粗相をするのでお休み頂いたわ。
君を呼んでおいて正解。
彼を家まで運んであげてね。
数字持ちならできるでしょ。」
「了解です。」
「私は朝が早いので、
そろそろ失礼するわ。
後は若いもの同士、
もう少しくつろいでいきなさい。」
「私も一緒に帰ります。
先生を守るのが私の任務です。」
「今日はプライベートの会食よ。
だから皆んな私服できたの。
ウミ、あなたは自由にして。
たまには、同世代とゆっくりお話してみたら。
確かあなたたち、同じ年よ。」
「しかし‥」
「じゃあ、業務命令。
私、ミオ中佐よりウミ中尉に命じます。
ヒカがこんな状態なので、
先日私と元提督の家に
診察に行ったときの話しを
残って彼にしてあげなさい。
それならいいでしょ。」
「‥‥わかりました。」
僕らは、先生を店の玄関先まで見送った。
先生は帰り際にサラッと僕に言った。
「そうそう、君は体をもう一度
しっかり調べてみて。
非常に稀だけど、
ゾロ目は身体の離れた場所に
数字がある場合もあるの。
シセの数字は55。
66なら君は最高親衛隊の隊長超えの数字持ちよ。」
なんなら裸になってウミに見てもらったら。」
僕は顔が真っ赤になった。
「冗談よ。」
先生は笑いながら帰って行った。
僕らは席に戻った。
班長は相変わらず寝ていた。
本当は、元提督の話しを
すぐ聞くべきだと思ったが、
僕は、もう少しウミ中尉と打ち解けた方が
良いのではないかと考えた。
「中尉殿。」
「何?」
「中尉殿の服って可愛いですね。
何という種類の服なのですか?」
「種類?フッションのこと?
ゴシックロリータよ。」
ゴシック‥ロリータ‥
僕には全く意味の分からない外来語だ。
まあ、この神秘的でダークな雰囲気を持つ
スタイルのことだろう。
でも、もう少し聞いてみる。
「あのー、ロリータって意味は何でしょうか?」
「ロリータ自体に意味はないわ。
昔、帝国で流行った小説に出ていた少女の名よ。」
結局、何が何んだかよく分からない。
田舎出の僕には洋服の話しはレベルが高い。
「それから、今は中尉じゃなくてウミでいいわ。
同い年なんでしょ。」
僕は、戸惑いながら話しかける。
「じゃあ、ウミ‥。
同い年で中尉なんて凄いね。」
「凄くはないわ。
私は16からもう軍に入ってるの。」
「ウミも数字持ちなの?」
「私は、数字持ちじゃない。
知ってると思うけど数字持ちは遺伝しない。」
「数字持ちでないならなおさらだよ。
二等兵から6、7年で中尉なんて
尋常じゃない昇進のスピードだよ。」
実は内心、親の七光かなぁとも僕は思っていた。
「帝国軍の武術大会で二回優勝したから、
二階級特進を二回したの。
その後、士官学校に推薦されて、
士官になったのよ。」
武術大会って、
確か数字持ち以外が技を競い合う大会だった。
それを二回も優勝って‥
彼女はとんでもない剣士だ。
「二回優勝って
ご家族も、すごく喜んだろうね。」
「家族はいないわ。
母は私を産んですぐに亡くなったし、
父はアモの種の試練で死んだわ。
祖父も溺愛する一人息子の死を悔やみながら
死んだの。」
「ごめん。余計なこと言って。」
僕は謝った。
「気にしないで。
神帝は歴史に名を残す英雄は
一人でいいと考えていらっしゃっるのかも。
大侯爵の地位も祖父一代のみ。
その後は領地も屋敷も没収されるの。
私の父はそれを見越して、
祖父が止めるのも聞かずに
選択の儀式に臨んだのよ。
最終的に祖父が亡くなった後に、
私は軍に入って色々な人の力を借りて
生きてきたわ。
私はアモの種の試練は受けない。
自らの命を賭けたりしない。
そして今は、
アモの種の謎を解こうとしている
先生の役に立つことが私の願い。
父の無念を晴らして、
本当は死ななくても良いはずの
多くの人の命を救いたいの。」
彼女は高潔で尊い考えの持ち主だ。
瞬間でも親の七光ではないかと
考えた自分が恥ずかしかった。
「境遇が似ているところがあるからかな。
だから、元提督の息子の
ネロの気持ちが分かるところもあるの。」
僕はどきっとして彼女の顔を見つめた。
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