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THE BLUE LOVE STORY -PROTOTYPE-  作者: 星河竜樹


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1/9

1 、エピローグ ムーンナイト 

この物語をルセの国のクラに捧げる。

この世界では、

一発逆転の人生を選択できる。

ただし、その対価は自らの命。

アモの種を食べると、10人に9人は死ぬ。

しかし生き延びたものには

体のどこかに数字が現れ、

その倍数分だけ身体能力が上昇する。

こうして神に選ばれし者のみが

帝国近衛師団に入団を許される。


さらに数字が10以上であれば、

特権階級の最高親衛隊に入隊となり、

非常にまれなゾロ目ならば、

騎士の称号を与えられ帝国軍の象徴となる。


僕らは、草木をかじり

泥水をすすりながら、

ここまで旅を続けてきた。


「‥私、自分の人生を変えたいの。」

ミホが静かにつぶやた。

彼女は美しい。

泥にまみれた顔であっても、

その美しさは突き抜けてくる。


ミホは僕の初恋の人だ。

僕が勇気を出して告白してたら、

付き合えただろうか?


‥ああ、本当に残念だけど、

僕は一度も女性と付き合うことがないまま、

死んでしまう可能性が高い。


「‥でもさ、

本当に命を賭ける価値ってあるのかなぁ?」

僕はつい言ってしまった。


「マサ、いまさら何だよ。

俺たち4人は、覚悟を決めてここまで来たんだろ。

嫌なら帰れよ。

俺は、ゾロ目を出して騎士になる。

そうだろ、テツ。」


「ああ、トシの言う通りだ。

あの村には、もう戻らない。

疫病で腐りながら死ぬか、

飢え死にするくらいなら、

俺は自らの意思で

自らの運命を切り開く道を選ぶ。」


今晩、僕らは帝国軍養成所の宿舎に泊まる。

他にも1000人ほどの志願者がいた。

明日が年に一度、

僕らにとっては一生に一度の選択の日となる。


「明日生き残ったら、

暖かい食事と風呂が用意されるってよ。

明日は、必ず4人全員で乾杯しようぜ!」

トシの明るさに僕らは救われた。


就寝時間が近づき、

僕らはそれぞれ

自分の割り当てられた部屋に戻った。

僕の泊まる棟では、

志願者の中で一人だけ、

僕だけが一階の部屋を割り当てられた。

それは宿舎の出入り口のすぐ横の部屋だった。


部屋はまるで狭い牢獄のようで、

窓の外には鉄格子がはめ込まれ、

部屋の入口の鉄の扉は、

内側ではなく外側から鍵をかけるように

なっていた。


死が間近に迫るほど、

僕は生きたいと強く願っていた。

そうだ、まだ少しだけ時間はある。

逃げはしない。

せめて最後に遮るものの無い夜空を見ようと、

そっと抜け出し外に出た。


‥先客がいた。

そこにはタバコをふかして佇んでいる

一人の幼なげな少女がいた。


今夜は満月、スーパームーン。

月の強い光の中、

僕は少女がとても綺麗な顔立ちをしているのに

気づいた。 


きっとこの幼なげな志願者の少女も、

無理して大人ぶって、

迫る死の恐怖を紛らわしているんだろう。


ちらっと目が合った瞬間、

僕は自然と微笑んでいた。


‥それから僕は部屋に戻り、

‥鉄格子からもう一度月を眺めた。

‥そして振り向くと、

‥さっきの少女が

‥そこにいた。


少女はこの狭い部屋の中、近づいてくる。

僕は突然のこの状態にひどく混乱した。


「なに‥?」


「あなた、さっき私の事見て笑ったでしょう?

バカにしてるの?」


「えっ?」


「大人ぶってるって思ったでしょう。

私は、もう19よ。あなたはいくつ?」


「僕は22だよ。ごめん。

嫌な思いをさせてしまったなら謝るよ。」


「いいわ、別に怒ってる訳じゃない。」

そう言うと、

彼女は断りもなく僕のベッドに腰掛け、

生まれ故郷はどことか、

そんなたわいのない話を始めた。


「横に座ったら」

彼女は言った。


童顔だが美しい彼女を前に、

僕は自分の胸の鼓動が

限界に近づいているのがわかる。


「いや、ちょともう

自分の部屋にもどりなよ。

就寝時間も過ぎてると思うし‥

さすがに僕も男だし、

君を襲っちゃうかも知れないよ。」


「いいわよ」


「いいって‥?」

僕は戸惑い動揺した。


「僕らは今、会ったばかりだし、

僕は何日も水浴びしてないし、

ひどく汚れているし‥」


「変に思わないで。

私、汗の匂いとか結構好きかも」

彼女はすっとベッドに横になった。


窓からあふれた月光に彼女は包まれている。

朝露を弾く紫陽花のような彼女の肌は、

信じられないくらいとても美しかった。


「恥ずかしいから、窓閉めて‥」


彼女の言葉に、僕は静かにそっと窓を閉めた。


お読みいただきありがとうございます。

今後の励みになりますので、

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していただけると嬉しいです。


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