第一話 ツクヨミ
『貴方は、我が使徒として、この世へ降り立ちました。』
僕の名前は諏訪神楽。
僕は、その言葉を聞いた次の瞬間、親の元に生まれた。幼稚園の頃は、神社の運営している幼稚園で、日本神話について聞かされて育ってきた。
「カグラくん、君は、ツクヨミ様っていうすごい神様に祝福されたすごい子なのよ。」
つくよみ、とかいう神様に祝福されたからか、なぜかものすごくひいきされ、大事にされて過ごしていた。
「カグラくん、ずるいよ。」
「なんでお前にだけ先生めっちゃ優しいんだよ。」
そうしてひいきされるからか、いつもこうやって妬まれ、友達と仲良くはできなかった。別に選んでこうなったわけじゃないのに。
この力を使う練習を毎晩していて、その過程でお父さんにいくつか聞いた。
一つ、この力はツクヨミ様の力を借りていること。
一つ、新月の日には力は使えず、満月に近づくほど力は強くなること。
一つ、神はいつも、僕のことを見ていること。
ある日、父に近所のお祭りに連れていかれた。いわゆるツクヨミ様をまつる大きな祭事だそうだ。
そこには自分以外のツクヨミ様の祝福を受けた人がたくさんいて、その力を使ってパフォーマンスをしていた。月の光を手に集め、花火のようなきらびやかなものだった。
それを見て、自分にも同じことができるのか、とやってみたくなった。ヒーローものにはまっていた僕は、どうしても戦闘のイメージしかできなかった。次の瞬間、目の前は炎の海だった。
ーーー数秒前ーーー
「はぁぁぁ、、。」
先ほど見たパフォーマンスを見よう見まねでやってみた。そうすると、ぼくは手から光線を撃っていた。
目の前に広がる光景を見て、僕は立ち尽くすことしかできなかった。
「お父さん、?」
「もういい、お前は、もうその力を使うな。祝福なんてどうでもいい。」
誰より僕を大事に、誰より祝福のことを喜んでいた父がこんなことを言うなんて。5歳にもならない自分でも、父の言うことを聞いて、事の重大さを理解した。その瞬間、膝から崩れ落ちて意識を失った。
目が覚めると、いつもの天井。家のベッドだった。
お母さんが僕をだきしめている。
「大丈夫よ、大丈夫。」
優しさの中にある、あのことについては触れるなと言わんばかりのオーラを幼いながらに感じ取った僕は、ただ抱きしめられていることしかできなかった。
それからは普通の幼稚園に転入し、一般の幼稚園児として過ごしていた。
「カグラ君鬼ね!」
「待て待てー!」
こうして友達と普通に遊べる楽しさを、とても幸せに感じていた。今までの生活を後悔すると同時に、この先の未来にとても希望を抱いていた。
僕には好きな子がいた。この気持ちが、この幼稚園の頃の気持ちが、恋愛感情だったのかは今はわからない。ただ、この大きな気持ちが、僕の幸福の終焉の引き金となったのだ。
今日はお泊り会。
「みんな!おやすみの時間ですよ!」
先生の合図で布団を敷き、みんなでパジャマに着替える時。
「ねぇ!やめて!」
「なんだよー。パジャマ忘れたんだよお前の貸せよ!」
「ママに作ってもらったの!私の宝物なの!」
そこそこ自分勝手な子が、僕の好きな子のパジャマを取っていた。先生は生憎、ほかの子のトラブルで直接手を出せない。
「こら!けんた君やめなさい!」
先生の注意なんて横流しに、逃げ回っているそいつを見て、すぐに向かってしまった。
「ねえ、ららちゃんが嫌がってる。やめろ。」
「なんだよいいじゃんかよー。」
聞く耳を持たないけんたに対し、ららちゃんも言い返す。
「返してよ!!」
「もう、うるさいな!」
けんたは、ららちゃんを突き飛ばした。ららちゃんは泣いていた。僕はとてつもない怒りと共に手のひらをけんたに向けた。
その日は、満月だった。
『我が使徒の幸せを滅する者、天罰に値する。』
その瞬間、けんたはくろこげになっていた。死んだのだ、目の前で、同級の友達が。
「え、、?」
周りの子は全員泣いていた。先生は僕からみんなを守るように立っていた。ららちゃんは、泣き続け、僕のことを見もしないで先生の胸の元へ行ってしまった。
僕は、人を殺した。
流石の出来事に、誰も擁護できなかった。あの火事の時は、消防隊が祭りに参加していたことで、重傷者も死者も出なかった。だが今回は、死人が出たのだ。
目が覚めると、知らない天井。病院のベッドだった。父親がいた。僕は車に乗せられ、どこかへ連れていかれてしまった。
母親はこの件で精神を病み自殺した。父は代わりに刑務所に行った。僕は、山に捨てられた。
死刑にでもならなかったのが奇跡だろう。どうしてこんなにも不幸な仕打ちに合わなければいけないのだ。僕はただ、普通に過ごしたかっただけなのに。
「どうして祝福なんかしたの、ツクヨミ様。こんなの、呪いじゃん。」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
良いと思ったらブックマークお願いします!




