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パン屋開業します!え、いつもの食材たちが最強モンスター?なわけないっ(笑)  作者: もがみなち
きらきらパン 

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9/14

A級冒険者、ガトスさん

「それでは、行ってきます!」


ブレッドは店を出ると、冒険者ギルドへと向かった。

今日は冒険者登録の実技試験。

昨日テラスタから受け取った推薦状を握りしめ、少し緊張した面持ちで歩く。


「初めての試験...どんな感じなんだろう」


開店以来、毎日パン作りに追われていたブレッド。

冒険者試験なんて受けたことがない。


「でも、これで堂々と材料を集められる!」


ブレッドは前向きに考えた。

ダンジョンへの立ち入りは冒険者のみ許可されている。

つまり、冒険者になれば「その辺のダンジョン」で材料を集め放題だ。


◇◇◇


冒険者ギルドの訓練場。

広々とした石造りの空間に、一人の男が立っていた。


「...遅いな」


筋骨隆々とした体格。

テラスタと同じくらいの筋肉量。

左手には巨大な盾を抱えている。

A級冒険者、ガトス。

大盾使いのタンクとして名を馳せる男だ。


「本当なら、今頃黒龍の調査に向かっているはずだったのに」


ガトスは不機嫌そうに呟いた。

数日前、大樹海の最深部で黒龍が討伐されたという報告があった。

真偽を確かめるため、上級冒険者たちが調査隊を結成。

ガトスもその一員として参加する予定だった。

ところが。


「ギルド長の頼みとあっちゃ、断れないか」


テラスタから直々に頼まれたのだ。

「今日の試験官を務めてほしい」と。


「黒龍を討伐しただと? そんな娘がいるわけがない」


ガトスは推薦状の内容を思い出す。

栗毛のショートカットの少女。

テラスタから聞いた話では、この娘が黒龍を討伐したという。


「馬鹿げている」


調査隊はまだ黒龍の住処にすら辿り着いていない。

どう考えても誇張か、別人の功績だろう。

ギルド長が何を考えているのかわからないが、とにかく試験を終わらせて調査隊に合流したい。

その時、訓練場の扉が開いた。


「あ、すみません! 遅くなりました!」


栗毛のショートカットの少女が駆け込んでくる。

息を切らせながら、ぺこりと頭を下げた。


「ブレッドです。今日はよろしくお願いします!」


「...ガトスだ」


ガトスは短く答えた。

目の前の少女を見る。

確かに推薦状の特徴と一致している。


(こんな小娘が黒龍を...?)


どう見ても普通の娘だ。

筋肉もない。剣も持っていない。

ただ、腰の辺りに小さな双剣が装備されているのが見える。


「ガトスさん、よろしくお願いします!」


ブレッドは満面の笑みで手を差し出した。

ガトスはその手を無視して、訓練場の観客席に目を向ける。

そこには、テラスタと四人の女性冒険者が座っていた。


「ブレッドさん、頑張ってください!」


赤髪の少女、ステラが声援を送る。

隣には銀髪のリリア、黒髪のノエル、茶髪のアリアが並んでいた。


「星空会か」


ガトスは呟いた。

Cランクのパーティだが、最近頭角を現している若手たちだ。


「なぜあいつらが...」


「ブレッドさんの試験、見たくて!」


ステラが答える。

ガトスは眉をひそめた。


(このパン屋に、何か特別なところがあるのか?)


ガトスは再びブレッドを見る。

少女は緊張した様子で、きょろきょろと周囲を見回していた。


「それでは、始めるぞ」


ガトスは大盾を構えた。


「試験内容は一対一の対戦。どちらかが降参するか、戦闘不能になるまで続ける」


「は、はい!」


「手加減はしない。本気で来い」


ガトスの声には力がこもっていた。

これは脅しではない。

本当に手加減するつもりはない。

もし、この娘が本当に黒龍を倒したのなら。

それは試験中に証明されるはずだ。


「わかりました!」


ブレッドは拳を握った。

素手で戦うつもりらしい。


(やはり、ただの素人か)


ガトスは内心で溜息をついた。


「準備はいいか?」


「はい!」


「では――」


ガトスは大盾を正面に構える。

訓練場に緊張が走った。

観客席のステラたちが固唾を飲んで見守る。

テラスタは腕を組み、真剣な表情でブレッドを見つめていた。


「――始め!」


ガトスの声が、訓練場に響き渡った。

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