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パン屋開業します!え、いつもの食材たちが最強モンスター?なわけないっ(笑)  作者: もがみなち
まっくろパン ~黒トカゲのベーコンサンド~

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あれがドラゴン...?

「それでは、行ってきます!」


ブレッドは朝の準備を終えると、モブたちに店を任せてギルドへと向かった。


「「「いってらっしゃいませッ!」」」


モブたちの声援を背に、ブレッドは軽やかに走り出す。

数分後、冒険者ギルドに到着したブレッドは、受付で名前を告げた。


「あの、ブレッドと申します。ギルド長から呼び出しを受けまして...」


「あ、ブレッドさんですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


受付嬢に案内され、ブレッドは重厚な扉の前に立つ。

コンコンとノックすると、中から低い声が響いた。


「入りたまえ」


◇◇◇


ギルド長室。

応接間のテーブルをはさんで、ブレッドは栗毛のショートカットの髪を揺らしながら椅子に座った。

向かい側には、筋骨隆々とした中年の男性――ハジマーリ王国のギルド長、テラスタ。

その隣には、見覚えのある赤髪の少女が立っていた。


「あ! ステラさん!」


「ブレッドさん!」


ステラが嬉しそうに駆け寄ってくる。


「お久しぶりです! お元気でしたか?」


「はい! あの後、お店は順調ですか?」


「おかげさまで! 毎日たくさんのお客さんが来てくれています」


和やかな雰囲気に、テラスタが咳払いをした。


「コホン。ステラ、まずは本題を」


「あ、ごめんなさい、お父さん」


(お父さん...? そうだったんだ。言われてみれば、雰囲気が似てるかも)


ブレッドは二人を見比べて、小さく頷いた。

ステラが席に戻ると、テラスタは真剣な表情でブレッドを見つめた。


「それでは改めて。ブレッド殿、北の大樹海で何があったのか、詳しく聞かせてもらえないだろうか」


「はい。新作パンの材料を集めに行ったんです」


「材料...?」


「黒オオトカゲさんの卵です。真っ黒で大きくて、まっくろパンにぴったりだと思って」


テラスタは眉をひそめた。


「その黒オオトカゲというのは...どのような姿だったか?」


「えっと、とても大きくて黒くて洞窟に住んでいました」


テラスタの表情が曇る。


「すまん、もう一度説明してくれないだろうか?」


「あ、はい。あの黒オオトカゲさんの卵は私の求める新作パン『まっくろパン』に必要だったんですが、少々暴れてしまいましたので《《駆除》》しました!」


「そ、それは黒龍だぁぁぁ!」


テラスタの声が応接間に響きわたる。

ステラは苦笑いしながら、やっぱりこうなったか、と小さく呟いた。


「え? でも、黒オオトカゲさんでしたよ?」


ブレッドはきょとんとした顔で首を傾げる。

テラスタは深いため息をついた。


「それが黒龍だ。Sランクモンスター、この地域で最も危険な存在の一つだ」


「そ、そうなんですか...?」


「ああ。そして、君はそれを討伐したというのか?」


「はい、急いでいたので...あ、でも少し暴れちゃったので、周りの木が何本か倒れちゃいました。ごめんなさい」


「...」


テラスタは頭を抱えた。


「えっと、何か問題でしたか...?」


「いや...問題というか...」


テラスタは書類を取り出した。


「通常、Sランクモンスターの討伐は国家的な功績として扱われる。報酬も莫大だ」


「報酬...?」


「ああ。黒龍討伐の報酬は...そうだな、白金貨50枚相当だ」


「はくきんか...?」


ブレッドは首を傾げた。

金貨さえあまり見たことがない彼女には、白金貨がどれほどの価値かわからない。


「普通の平民が一生かけても稼げない額だ」


「!?」


ブレッドの目が丸くなった。


「ただし、これには条件がある。冒険者登録をしていること、そして正式な討伐依頼

を受けていることだ」


「私、登録してません!」


「そうだろうと思った」


「それで、だ」


テラスタは立ち上がり、ブレッドの前に立った。


「君ほどの実力者が冒険者登録していないのはギルドとしても問題だ」


「え...?」


「冒険者になってほしい。正式にな」


「でも、私はパン屋さんで...」


「兼業でも構わない。むしろ、君のような人材こそ、我々は求めている」


「でも、お店があるし...新作パンの材料も集めないといけないし...」


ブレッドは少し考え込んだ。


「材料?」


テラスタが尋ねる。


「はい。新しいパンを作るには、いろんな材料が必要なんです。それで、時々ダンジョンに行って...」


「待て」


テラスタが話を割る


「君は、パンの材料を集めるために、ダンジョンに入っているのか?」


「はい。その辺のダンジョンなら、いろいろ落ちてますから」


「...」


テラスタとステラは顔を見合わせた。


「ブレッド殿、知っているか? ダンジョンへの立ち入りは、原則として冒険者のみに許されている」


「そうなんですか?」


「ああ。危険だからな。無許可で入れば罰則もあり得る」


「そっ...それなら、冒険者ギルドに登録します...」


◇◇◇


「それでは、冒険者登録の手続きだが」


テラスタは椅子に座り直した。


「通常通り、実技試験を受けてもらうことになる」


「はい!」


ブレッドは元気よく頷いた。


「黒龍討伐の件は...正直、まだ信じきれていない部分もある」


テラスタは率直に言った。


「この目で君の実力を確認させてもらいたい。それでよろしいか?」


「もちろんです! よろしくお願いします!」


ブレッドは深々と頭を下げた。


「では、実技試験を行う。いつが良いか?」


「お店はお休みにすればよいので、なるべく早めがいいです。」


「では、明後日にしよう。」


テラスタは一枚の紙を取り出した。

少しだけ何かを記入し、それをブレッドに渡す。


「君の実力は確認済みだ。この推薦状を持っていけば、試験官も適切に対応してくれるだろう」


「ありがとうございます!」


◇◇◇


ギルドを出たブレッドは、推薦状を見つめた。

「冒険者、かぁ」


空を見上げる。

青く澄んだ空が広がっていた。


◇◇◇


「ただいま戻りました!」


ブレッドが店に戻ると、モブたちが出迎えた。


「「「お帰りなさいませッ!」」」


「モブさんたち、聞いてください! 私、冒険者の試験を受けることになりました!」


「「「姉御が冒険者に!?」」」


三人は驚いた顔をした。


「はい! これで堂々と材料を集められます!」


「(姉御にとってダンジョンは材料置き場なんだな...)」


モブは心の中で呟いた。


「あ、あと明後日は試験になってしまったのでお店はお休みしますね」


「「「わかりましたッ!姉御も試験頑張ってください!」」」


「ありがとうございます! じゃあ、今日も張り切ってパンを作りましょう!」

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