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パン屋開業します!え、いつもの食材たちが最強モンスター?なわけないっ(笑)  作者: もがみなち
まっくろパン ~黒トカゲのベーコンサンド~

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3/14

なんかお店が繁盛してる

ブレッドが店の近くまで戻ってきた時、遠目に見えたのは――。


「...え?」


店の前に、人だかりができている。

いや、人だかりどころではない。長蛇の列だ。

背中に卵を担いだまま、ブレッドは呆然と立ち尽くした。

出発してから数時間。

その間に、一体何が起きたというのだろう。


「姉御ッ!」


店内からモブがブレッドを見つけて駆け寄ってくる。その顔には汗が滲んでいた。


「姉御、お帰りなさいませッ!」


「な、何これ...?」


「開店してしばらくしてから急にお客さんが押し寄せてきまして...!」


モブが興奮気味に報告する。


「最初は通りかかった人が数人来る程度だったんですけど、その人たちが食べて『美味い!』って叫んで...」


「それから口コミが広がって、気づいたらこの有様ですッ!」


ブレッドは呆然と列を眺めた。

開店して一週間、毎日閑古鳥が鳴いていた店が。

たった一時間で大繁盛している。


「そ、そんなに美味しかったんですか...?」


「はい! お客さんたち、『今まで食べたパンの中で一番美味い』って言ってましたね」


ブレッドは首を傾げた。

いつもと同じ生地で、いつもと同じ焼き方。

何が違うというのだろう。


「とにかく、お店手伝わないと!」


ブレッドは卵を片付けると、エプロンを締め直して店に出た。


◇◇◇


「長パン二つください!」

「丸パンは残ってる? 五個欲しいんだけど」

「あ、私も長パン!」


店内は大混雑だった。

モブが焼き上げたパンが次々と売れていく。


「あ、モブさん!」


一人の少年が店に駆け込んできた。


「いつもありがと!モブさん今日もパンくれるの? あれ、今日はすごい人だね」


「あ、ああ...坊主...」


モブが冷や汗を流す。


「ねえねえ、いつものまず――」


「「「ちょっと外で話そうかッ!!!」」」


モブたち三人が光速で少年の口を塞ぎ、そのまま店の外へ運び出す。

「え? ちょ、何...?」


他のお客たちも目を丸くしたが、モブたちはすでに少年を外に連れ出していた。


店の外。


「坊主、今日は特別なパンなんだ!」


「いつもとは違うんだ!」


「だから、いつもの話はしちゃダメだ!」


モブたちが必死に説明する。


「えー、でも僕、あのパン好きだよ? いつもモブさんたちが孤児院に持ってきてくれるし」


モブは冷や汗を流した。

実は、ブレッドが作ったパンは毎日売れ残っていた。

それを見かねたモブたちが買い占め、孤児院や食べ物に困っている人々に配っていたのだ。

味は正直、良いとは言えない。

でも、子供たちは文句を言わずに食べてくれていた。


「とにかくッ! 今日は特別だから、いつもの話は内緒だッ!」


「うん、わかった!」


少年は元気に頷いた。

モブたちは店内に戻ると、素早く丸パンを袋に詰めた。


「坊主、今日のパンは特別美味いぞッ! 後で孤児院に持っていくからなッ!」


「ありがとう、モブさん! お姉ちゃんも、またね!」


少年は元気に手を振って店を出ていった。


一方でブレッドは接客をこなしながら、不思議でならなかった。


(いつもと変わらないのに...なんで今日はこんなに人気なの...?)


◇◇◇

昼過ぎ、ようやく客足が落ち着いた。

店内に残っていたパンは完売。驚異的な売り上げだった。


「「「はぁ...疲れましたッ...」」」


モブたちが椅子に座り込む。


「モブさん、本当にありがとうございました!」


ブレッドは満面の笑みでモブに感謝した。


「いえいえ、こちらこそ...それより姉御、あの卵は...?」


「あ、そうでした! 新作のパンを作らないと!」


ブレッドは黒龍の卵を抱えて戻ってきた。


「さっそく作ってみますね」


調理場で、ブレッドは卵を割る。

中から現れたのは、漆黒の黄身と、同じく漆黒の白身。

魔力が溢れ出し、周囲の空気が震える。


「わぁ、きれい...」


ブレッドは感動しながら、パン生地に卵を混ぜ込んでいく。

こね、発酵させ、成型し、窯で焼く。

しばらくして。


「できました! まっくろパン!」


ブレッドが取り出したのは、真っ黒で丸い、見た目は普通のパンだった。


「モブさん、味見してもらえますか?」


「え、あ、はい...」


モブは緊張しながらパンをちぎって口に運ぶ。

そして。


「!!!」


モブの表情が固まった。


「ど、どうですか?」


「これはすごいです...!」


実際のところ、味は微妙だった。

ブレッドのパン作りの腕前は、お世辞にも上手いとは言えない。

焼き加減も甘く、生地のバランスも悪い。


しかし、使われているのは黒龍の卵だ。

Sランクモンスターの卵には、膨大な魔力と栄養が詰まっている。

そのおかげで、食べると体中に力がみなぎる。

疲労が一瞬で回復した。


「姉御...これ、本当にパンですかッ...?」


「え? まっくろパンですよ?」


ブレッドはきょとんとしている。


「いえ、その、味はともかく...」


「味? 美味しかったですか?」


「あ、はい...美味しかったです」


モブは苦笑いした。

本当のことは言えなかった。


「よかった! じゃあ明日から『まっくろパン』も販売しましょう!」


ブレッドは嬉しそうに笑った。


「これで看板メニューができましたね!」


「その...これだけだと、ただの黒い丸パンなので...何か、こう...具材を挟むとか、工夫が必要なんじゃないかと...」


「あ!」


ブレッドは目を輝かせた。


「確かに! まっくろパンだけじゃ寂しいですよね!」


「では、皆さんでアイディアを出しましょう!」


(姉御の作業工程を見るチャンスだ...)

モブは心の中で呟いた。


なぜ、同じ材料でここまで差がついたのか。

その謎を解く手がかりが、ついに掴めるかもしれない。

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