帰宅するまでが遠足です
ステラは複雑な表情でその光景を見つめていた。
ドライアドたちへの魔力の受け渡しが終わり、全員が満足そうな表情を浮かべている。
「「「ありがとう、お姉ちゃん!」」」
ドライアドたちが一斉に頭を下げる。
「いえいえ。それで、果物はいただけますか?」
「もちろん! たくさん持っていって!」
ドライアドたちが嬉しそうに果物を集め始める。
ミラクルベリー、シャインフルーツ、シトラ。
それぞれ袋いっぱいに詰め込んでくれた。
「こんなにたくさん、ありがとうございます!」
ブレッドは嬉しそうに笑う。
果物と、先ほど採取した薬草。
これで依頼も完璧だ。
「お姉ちゃん、また来てね!」
「また魔力、分けてね!」
「約束だよ!」
ドライアドたちが名残惜しそうに手を振る。
「はい! また来ますね!」
ブレッドは満面の笑みで手を振り返した。
◇◇◇
隠れ里を後にして。
ステラとブレッドは、森の中を歩いていた。
「あの、ブレッドさん」
「はい?」
「さっきの慣れてましたね」
「はい。いつものことですよ」
ブレッドはあっさりと答えた。
「いつもの?」
「田舎のドライアドさんとも、週に一回くらいやってましたから」
「週に一回!?」
ステラが驚いて声を上げる。
「はい、その代わりに小麦をもらってます」
「小麦を...」
「ドライアドさんが育てた小麦はとても質が良いんですよ」
ブレッドは何でもないことのように言う。
(田舎って、どんな環境なの!?)
「ブレッドさんの田舎って、どこなんですか?」
「サイハーテ村です」
「サイハーテ村...聞いたことないですね」
「そうでよね...小さな村なので」
(どこなんだろう、それ...)
(そんな遠い場所から、よくここまで来たな...)
「それより、ステラさん」
ブレッドが嬉しそうに果物の袋を見せる。
「これで新作パンが作れます! 楽しみです!」
「そ、そうですね...」
「それに依頼も達成できましたし早く帰りましょう!」
ブレッドが元気よく言う。
「はい...」
ステラは疲れたような表情で答えた。
◇◇◇
森の入口まで戻ると。
「それじゃあ、また背中に乗ってくださいね」
ブレッドがしゃがみ込む。
ステラは諦めたように、ブレッドの背中に乗った。
「それじゃあ、出発します!」
次の瞬間。
ブレッドの足が地面を蹴った。
「ひゃああああ!」
ステラの悲鳴が風に消える。
数分後。
「着きましたよ」
ブレッドが足を止める。
目の前には、ハジマーリ王国の門が見えた。
「は、速い...」
ステラはふらふらとブレッドの背中から降りる。
「それじゃあ、依頼の報告をしましょう!」
ブレッドは元気いっぱいに、ギルドへと向かった。
◇◇◇
冒険者ギルドの受付。
「依頼、完了しました」
ブレッドが依頼書とヒールハーブを差し出す。
「確認しますね...はい、確かに。お疲れ様でした」
受付嬢が報酬の銀貨3枚を渡す。
「ありがとうございます!」
ブレッドは嬉しそうに銀貨を受け取った。
「初依頼、成功ですね」
ステラが微笑む。
「はい! おかげさまで、果物も手に入りましたし」
ブレッドは果物の袋を見つめる。
「これで、新作パンを作ります!」
「楽しみにしてますね」
「はい! できたら、ステラさんにも食べてもらいたいです!」
「ぜひ、お願いします」
ステラは笑顔で答えた。
◇◇◇
ギルドを出ると、ブレッドは急いで自分の店へと向かった。
「ただいま」
店は休業日のため静かだ。
ブレッドは果物の袋を調理場に運ぶ。
「わぁ...」
袋を開けると、色とりどりの果物が輝いている。
ミラクルベリーの鮮やかな赤。
シャインフルーツの金色の輝き。
シトラの爽やかな橙色。
「これで、どんなパンができるかな...」




