辿る記憶に 皇帝の母 妃との思い出
エーメことナクシデイルは幼い息子アフメト皇子と一緒に茶菓子に飲み物を口にする。
ザクロの果実水、チャイ
ひよこ豆、白ゴマなどをペーストに甘くしたホンモス・タヒーネ
中東の伝統バクラヴァ
中庭の噴水 水音に小鳥の声が心地よい響きを立てる。
そうして…
窓辺から中庭の回路に居た者達
「あれは…あの時の…私を連れて来たアルジェリアの総督?」
◇ ◇
アルジェリアの提督が言う
「この献上品の娘は皇帝デュルハミト1世に相応しい素晴らしい贈り物 喜んで頂けるだろう」提督
「‥‥」
「まずは湯浴みか・・それに言葉も覚えてもらわなくては」
「作法に踊りに楽器の演奏、詩吟、
この国の知識も…王の相手として相応しい教養」
「私は‥」エーメ 小さく呟いた後、何も言えなくなる
「最初は低い身分だが 間違いなく皇帝の妻の一人となるだろうさ」
「……」エーメは黙って見つめる
「嘆くことはない オスマン帝国は巨大な世界の輝ける帝国
その主の妻となるのだから」彼はそう言って笑った
◆ ◆ ◆
今はもう、亡くなった妃、エーメの味方だった妃
セレム皇帝の母…バリデ・スルタン
(※皇帝の母という尊称)
ナツメヤシのお茶を口にしながら、ふと思い出す
「優しく強い方だったわ、私はあの方のように
アフメト皇子、セレム陛下を支えられるのかしら?」
◇ ◇ ◇
トプカプ宮殿 後宮の権力者の一人 一人の妃が微笑する
「ああ、いい子ね エーメ 私のナクシディル」
流暢なフランス語でエーメに話しかける妃
「妃さま」
綺麗な声でエーメことナクシディルが はにかみながら笑顔を見せた。
「先程は見事な舞だったわ 楽器の演奏も素敵よ
さあ、こちらにいらしゃい 美味しいお菓子を用意させたわ それに‥」
「え?」「それに仏蘭西のマカロンも」妃
「あ、ありがとうございます 妃さま」ナクシディル(エーメ)
ナクシディル(エーメ)の身体をそっと抱きしめて、フランス語で囁くように
「綺麗な貴方が大好きよ 私のエーメ、ナクシディル」
「私の息子、セレム皇子も貴方を気に入っているわ」
まるで姉か年の離れた親しい友達のようにふるまい
そうして、
妃は時折、悲哀に満ちた目をするのだった。
可愛いフランス生まれの小鳥さん‥後宮で生き残るには
皇帝の子を産むか、権力を握るか‥
何処の時代、何処の場所でも
女はいずれ決められた男と婚姻するのが定めですもの
私が庇護者になってあげるから だから…ね
貴方にも最高の栄誉をあげるのだから‥
昔の法
コンスタンティノープルを奪い取った皇帝が定めた法律
後継者について 次の皇帝の座
閉じ込めるか
殺し合い、残った者を皇帝にすると定めた法律
それは この時代では無効となり
皇子たちは母親が違っても仲良く笑い、あるいは不仲となって距離を置く
スレイマン大帝の場合は 一人息子だったという
さりとて、その法律が無効になったからと言っても
後宮を始め、宮廷内での権力争いが収まる事はない…昔の時代でも、今もなお




