懐かしい記憶とアフメト皇子
エーメことナクシデイルは
幼い息子のアフメト皇子を膝に乗せ、二人で食事を楽しんでいた。
「早く、セリム様、皇帝陛下が戻られると良いのに」
皿に並べられた厶ール貝の一つを手に取り、貝を開け
中のピラフを幼い息子に、それから次は自分の口にと…。
「厶ール貝に詰めた一口サイズのピラフ、始めて食べた時は…海賊達に拐われ、此処に連れて来られる屋敷だったかな、それとも海賊船だったかしらね?」
「寄宿学校から故郷の西インド諸島に帰る船が海賊に襲われて…」
「でも、美味しいわ、サバの魚をバケットに挟んだものも…」
「オリーブの葉に包んだドルマ、美味しい?私のアフメト皇子様」
「はい、うふふ」
「鶏肉入りの一口サイズ、イチリ・ギョフテに、それから…ひよこ豆のスープ、フムス」
「ヨーグルトを和えたものの、焼きナスのディップはビタパンで」
「ザクロの果実水に塩味のヨーグルトの飲み物アイラン」
「今日はね、仏蘭西の食事も用意出来たのよ」
「ジャガイモのガレットにビアンドパン(ミートローフ)、パテド・カンパーニュにバケットのチキンとゆで卵にチーズ、野菜入りサンド
キッシュ、キッシュは、ほうれん草とチーズ、玉ねぎ、ベーコン入りのもの」
「ガレットにマカロン」
「故郷の南の島から本国の修道院の中にあった寄宿学校、食事で出されたものだわ」
「それから、西インド諸島の果実」
「バケットのチキン…マカロン、ガレットは友達達と昼休みに庭で食べたわ、それに島にいた時は従姉妹のジョゼフィーヌとも」
エーメ・デュビュク・ド・リヴェリ
仏蘭西領の西インド諸島で生まれ、後に海賊に拐われ、今はこうしてトプカプ宮殿の後宮で暮らしている。




