金角湾での船遊び
東西を結ぶ交易の海路 イスタンブールを流れるボスポラス海峡
海風が心地よく吹き、それは眩しい日差しが行き交う人々の船を照らし出す
時折、響き渡り、聞こえる祈りの聖句…。
「ああ、海が綺麗‥」豪奢な船の中でナクシデイルことエーメが呟く
まだ、ロシアとの戦争の余波は続きアーヤーン(地方豪族、権力者)に
イエニッチエリ兵士達が起こす騒ぎ
イエニッチエリ…
昔と違って高い俸給だけを狙い、多くの金目当ての者達が入り込み
デウレシメ制度も廃れて、装備も古く腐敗してゆき 時に地方の豪族たちと結びつき
肥大化するだけで 軍団としての意味をなさなくなった軍
そんな中での事 皇帝セレム二世のひと時のたわいもない遊戯‥
「ああ、海風が気持ちよい」「母さま 船の上での食事も美味しいよ」
「うふふ 揺れているけど大丈夫 美味しいのね 良かったわ」
前皇帝の子供であるアフメト皇子が無邪気に笑う
「海が綺麗です皇帝陛下 兄上」
「そうかい、アフメト 菓子のロクサムもどうだね
甘いザクロの飲み物にナツメヤシ(デーツ)の茶もある」
「ナクシデイル 蜂蜜入りの薔薇水は?それともミントテイ チャイもいいか」
「まあ、有難うございます陛下 陛下もお飲み物をどうぞ お食事もありますわ」
後宮、ハーレムの者達を引き連れてのひと時の船遊び
屋根付きの豪奢な幾つもの船に皇帝をはじめ、ナクシデイル(エーメ)に彼女の息子アフメト皇子 それにムスタファ皇子
‥ムスタファ皇子の方は別の船に乗っている
皇帝と共にいるナクシデイル(エーメ)とアフメト皇子
船の中でちょっとした食事を楽しみながらの
都イスタンブール(コンスタンテインノーブル)の中央にあるボスポラス海峡、
金角湾でのささやかな遊戯
商人をはじめ多くの者達の船が行き交う海峡の海を
皇帝の豪奢な船が渡ってゆく。
「気分転換にどうかと思ったけど ナクシデイルも楽しいかい?
ああ、その青いサファイヤの首飾りが今日の装いには似合うよ」
「はい、セレム陛下 嬉しいです
前に陛下から頂いた宝石ですわ とてもきれいでお気に入りなのです」
「そうだったね 青い瞳に良く似合う」
「陛下、少しお疲れが残っているようですけど」
「ああ、大丈夫だ いつもの事だよ 地方のイエニッチエリ達の騒ぎも」
「エジプト、シリアなどの地方の豪族達のアーヤーン達の陳情に時に暴動も」
「ギリシャの方面も騒がしいか ロシアも介入してきて‥」
「‥‥改革に反対する者達もね」
「‥陛下」
「大丈夫だ、私の誰より綺麗なナクシデイル エーメ」
「今はナクシデイル、貴方やアフメト皇子と過ごすひと時を楽しみたい」
アフメトがじっとセレム二世を心配そうに見ている
「帰ったら 夕食前の祈りの後で本を読んであげようアフメト皇子」
「はい 嬉しいです」




