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エーメは…?

「おお、我が妃よ ナクシデイル」「皇帝陛下」

「間もなく、出産か 喜ばしい」

年老いた皇帝アドブル・ハミト一世の手がエーメの薔薇色の頬に触れた。


「無理はしないように 何か問題はないか?」大きなエーメのお腹にもそっと触れ

皇帝の問いかけに黒い肌をしたアフリカ系の宦官が軽く笑みを浮かべて答える。

「我々もですが医師の見立てでも、問題なく健康との事です 陛下」


「それはよかった 身体を冷やしたりせぬように」

「はい、アドブル・ハミト一世陛下」

「では、政務があるのでな 今宵は歌でもまた」ご機嫌な様子で皇帝は立ち去った。


「今日は陛下はご機嫌ですね」

「ナクシデイルエーメにお会いする時は政務での大変な事も

ひと時忘れられるようです」

「帝国は広く、それは広大ですから それに時代の波も‥あ、いえ、これは」

「・・・・」

その言葉にエーメことナクシデイルは戸惑った表情を束の間見せた後、そっと

変化を遂げつつある自分のお腹に触れた。


次には中庭から声をかけられる ふくっくらとした子供

「あ、ナクシデイルか」

「これは小さなムスタファ皇子さま ご機嫌はいかがですか?」

「悪くはないぞ、お前はいつも綺麗だ 腹が大きくなった」

「まあ。有難うございます」

「じゃあなナクシデイル 僕の母上が菓子を用意して待っているから

それにひよこ豆、白ゴマなどをペーストに甘くしたホンモス・タヒーネに蜂蜜菓子」

元気よく駆け出すムスタファ皇子 

後宮に入れられた今では地位のある妃の一人が生んだ皇子


「エーメ、ナクシデイル」もう一人、向こう側から声をかけて来たのは‥

「セリム皇子さま」嬉しそうな笑顔を見せる。


「フランスの菓子と本が手に入った 後でまたフランス語の指導を頼みたいが」

「ええ、もちろんです」

「私の母上もナツメヤシ茶に菓子のロサム、薔薇水を用意して待っているそうだ」


そんな様子を遠くから見ている者達 後宮ハーレムの女たちに‥。



時折、吹いてくる時代の激しい荒波に

後宮の暗い爪はまだ襲うかかる気配はない、まだ今は穏やかな時が流れている。




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