No.1 家
基本不思議な人が出て、喫茶店なのに食べ物が可愛そうなお話しです。
更新は不定期です。
夏の日差しが差し込む商店街裏通り。
そこに一人の少女、"浅木鈴菜"が歩いていた。
鈴菜はギターケースを肩にかけており、少し色素の薄い髪を耳の下で一つに束ねている。
帽子は深くかぶり表情は見えにくくなっていた。
『逃げるのか?』
鈴菜の脳裏にある言葉がよぎる。
(まさか、私が逃げるわけ無いでしょう?)
"逃げる"その言葉は鈴菜にとってはとても大きな意味があり、
そしてそれは誰にも譲れない事でもあった。
鈴菜はある建物の前で足を止めると、看板に目をやった。
「"空"・・・ねぇ、何故この名前」
鈴菜の目に映るのはとある喫茶店の名前。そして、準備中の文字。
鈴菜はある青年、店長をやっている自分の兄に会うために歩いてきた。
ドアに手を掛けゆっくりと開くとカラン、コロンとウィンドウチャイムが響く。
店内はカントリー系の家具で統一されており、どこか落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
鈴奈はわざと音を立て店内に入ると当たりを見回した。
「たっく、まだ準備中ですのであらためて来ていただけませんか?」
奥からめんどくさそうに一人の青年が出てきた。
青年は頭を掻きながら欠伸をしているところを見るとどうも寝ていたようにしか見えない。
「本当に準備してたんですか?兄さん」
鈴菜の声に、言葉に驚いて青年、鈴菜の兄の"秋"は目を開けると鈴菜をガン見しだした。
さすがに鈴菜も引いたのか身じろぐと引きつった笑みを浮かべた。
「何、ですか?」
「嫌、お前本当にオレの妹?」
「・・・何年もあってないので分からないでしょうけど」
そっか、と言って秋は笑うと鈴菜の両手をつかみ上下に思いっきり振り出した。
「よく来たな!!待ってたぜ?」
「そうですか、まぁ、これからよろしくお願いします」
鈴菜は手を振り払うと帽子を深くかぶり直した。
その様子に、敬語という他人行儀に秋はムッとするとそっぽを向いた。
「んだよ、随分可愛くねー挨拶だな」
鈴菜は秋の呟きなど気にせずに手ごろな椅子にギターケースをおろすと、秋を睨み付けた。
そしてそばに歩み寄ると、乾いた音と共に秋の左頬が紅葉色に染まった。
「いって・・・何すんだよ」
頬に手を当て鈴菜を睨む秋から漂う殺気に後ずさりしそうになるのを堪え、鈴菜も睨み返す。
今までに向けられた事の無い殺気に心臓が五月蝿く鳴る。
暑さとは別の意味で流れる汗に笑いそうになるのを堪えると、落ち着くためにゆっくりと瞳を閉じた。
(どれだけ短気なのよ)
少し呆れながらも落ち着いてきたのを感じると少し息を吐いた。
「これは私の中のケジメ。散々心配たんだからね?」
「・・・やっぱ可愛くねー」
そう呟くと腫れた頬を冷やすため氷を取りに奥へと引っ込んだ。
そして物を漁る音が聞こえた後、氷袋を当てながら秋は戻ってきた。
「客に妹にぶたれたって言わねーと」
「何それ?というか何のために私を呼んだの?」
秋は待ってましたといわんばかりの笑顔で奥へ引っ込むと、エプロンを持ってやって来た。
何となく嫌な予想が頭をよぎるのを鈴菜は頭を振って否定した。
「・・・何やってんだ、お前」
「それはいいから。所でそれ何?」
「あぁ、これはな?」
一瞬出鼻を挫かれた様な顔をしていた秋だが、手に持っていたエプロンを鈴菜に突き出した。
「今日からここで働いてもらう」
「はぁ?」
「夏休みだけだって。親父ともそう言う約束だろ?」
「ちょっと待て!聞いてないんだけど!?」
キョトンとした顔の秋を思いっきり殴りたくなるのを堪え、エプロンをぶんどった。
「やってやろうじゃないの。今日からここが私の家なんだから」
「おぅ!家のルールには従ってもらわねーとな」
満足そうに笑う自分の兄を横目で眺めながら鈴菜は手早くエプロンを身につけた。
「仕事はなるべく速く覚えたいから、今教えてもらっていい?」
「了解」
台所へと案内すると秋は、ふと足を止めた。
「?」
「いや、そう言えば言ってなかったなーって思ってよ」
何を言ってないのか?何か大事な事でも在っただろうか?
首をかしげて考える鈴菜の頭を、グシャグシャと秋は撫でた。
「ちょっと、何すんの!!」
「安心しろってこと」
乱れた髪に関して怒りつつ見上げた鈴奈の目には真剣な顔をした秋が居た。
「今日からココが鈴菜の居場所だ。誰も何も言わねぇし、お前を傷つける奴もいない」
「・・・」
「だから、安心しろ。ココに来んのは皆変わった奴だから」
その顔は、以前どこかで見た優しい顔をしていた。
少しだけ照れくさいと顔を伏せた鈴菜は最後の言葉に引っかかり顔を上げた。
(皆変わった人ってどういう事??)
「何口パクパクしてんの?金魚みてぇ」
その一言に鈴菜は足を渾身の力をこめて踏み、その日は喫茶店周辺に悲鳴が轟いたとゆう。
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