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第四十八話:地中の太陽(前編)

 カエル族の王国『ケロック』。


 その上層は、生きたカエル族たちの住処だ。

 水路と湿った石壁に囲まれた地下の町では、今日も無数のカエル族が暮らしていた。


 だが、下層は違う。

 そこはカエル族のアンデッドが跋扈する地下墳墓。朽ちた死者たちが徘徊する、王国の暗部であった。

 もっとも、その下層のすべてが墳墓というわけではない。

 墓所のさらに奥。外敵が容易には辿り着けぬよう守られた区画がある。


 ――カエル族の王宮エリアである。


 岩を削って築かれた玉座の間には、ひんやりとした空気が満ちていた。

 並ぶ柱には古い紋様が刻まれ、壁際には大臣や貴族たちがずらりと控えている。その最奥、高く据えられた玉座に、カエル族の王『フロッグキング・オーレク』は座していた。


 王の視線の先には、ひとりの騎士がかしずいている。


「月の騎士に遅れをとったそうじゃな……ケロ」


 低く響く声に、騎士は肩をすくめるようにして答えた。


「面目ございませぬ……ケロ……」


 カエル族の聖騎士、ケラウ。

 今はうなだれているその背に、ただ一振り、強い存在感を放つ剣があった。


 『太陽の聖剣(ソルクラウス)』。


 王宮の薄暗がりの中でも、その剣だけは鈍く輝いて見える。太陽神、ソルフレイム・プロムの加護を象徴する、カエル族にとって特別な聖剣であった。


「ソルフレイム・プロム様より授かった聖剣が泣いておるケロ」


 オーレク王が、嘆くようにゆっくり頭を振る。


 その言葉に、ケラウはぎゅっと拳を握った。


「このフロッグナイト・ケラウ、あのような屈辱は決して繰り返しませぬケロ」


 悔しさを噛みしめるように、しかしはっきりと誓う。


「うむ、頼んだケロ」


「ケロッ!」


 短く力強い返答が、石造りの広間に跳ね返った。


 だが、空気は少しも和らがない。

 誓いを立てるケラウを、部屋に立ち並ぶ大臣や貴族たちが、まばたきひとつしない、まん丸な目でじっと見下ろしていた。


* * *


『自由都市ヘスペリア』から南へ下り、灼熱の『プロム砂漠』を越えた先。

 乾いた世界の果てに、唐突に湿った空気の満ちる沼地が広がっていた。


 ぬかるんだ地面のあちこちに浅い水たまりが点在し、背の低い葦と苔が生い茂っている。じっとりとまとわりつく熱気の中、虫の羽音と水音だけが絶えず響いていた。


 その沼地の奥。

 半ば泥に埋もれるように、苔むした石造りの門がぽっかりと口を開けている。


 カエル族の王国『ケロック』の入り口だ。


 門の向こうには、地の底へと下っていく石段が続いていた。薄暗い地下へ吸い込まれるようなその道は、ひんやりとした湿気を吐き出し、地上の熱とは別種の気配を漂わせている。


「準備はいいかい?」


 白いローブ姿のケンタが、後ろを振り向いて問いかけた。


 見た目は完全に子どもである。もっとも本人は、今さらそれを気にする段階をとっくに過ぎていた。


「私たちはいいけど、あなたは生カエルの親密度が落ちてもいいの? 下層への道が通り抜けにくくなるわよ」


 そう答えたのは、ダークエルフのカグラである。

 漆黒の肌に白銀の髪。やや呆れたように肩をすくめるその姿には、いつもの不敵さがあった。


 その後ろでは、エレネがどこか申し訳なさそうに小さくなっていた。


「すいません、私個人のクエストのために、ご面倒をお掛けして……」


 しおらしく頭を下げるエレネに、ケンタはひらひらと手を振る。


「いいんだって、どうせこの前のクエストで親密度最悪のKoSになってて、これ以上は落ちないんだから」


 そう言って、子どもの顔でニカッと笑う。


「私も元からKoSだから気にしないで良いわよ」


 カグラもさらりと言って、エレネの背中を軽く叩いた。


 KoS。

 『Kill on Sight』の頭文字であり、視界に入ると即座に襲ってくるという、最悪の親密度状態を意味する言葉である。


 こうして、『聖騎士(パラディン)』、『聖職者(クレリック)』、『死霊術師(ネクロマンサー)』という妙にバランスの取れたパーティが、パラディン叙事詩クエストのためにケロックへ足を踏み入れるのであった。


――――――――――――――――――――――――

【地中の太陽】【パラディン叙事詩クエストⅡ】

依頼者:シルファン・ド・シルヴァノール

目的地:ケロック下層

依頼内容:カエル族にも聖騎士が存在する。

それは、太陽の聖剣を振るうという。

異なる光と剣を交えよ。

さすれば、其方の剣はさらに輝きを増すであろう。

難易度:★★★★★

報酬:聖剣の魂魄

――――――――――――――――――――――――


* * *


「ケロッ! ケロケロ!」


 生きたカエル族の兵士が、次から次へと襲いかかってくる。


「スマイト!」


 ケンタは攻撃魔法を撃ち込みつつ、手にしたメイスも振るった。白いローブの裾をひるがえし、子どもの身体でちょこまかと動き回りながら、飛びかかってきた兵士の横っ面を殴りつける。


「誤算だったな……俺らナマモノ苦手じゃん……」


 聖騎士も聖職者も、聖属性の剣技や魔法はアンデッドには特効を誇る。だが、生きた相手には今ひとつだ。


 死霊術師も同じだ。死者相手が本職である以上、生カエル相手では殲滅速度が落ちる。


 一匹ごとの戦闘が長引けば、徘徊モンスターのADDを防ぐことはできない。


 一匹増え、二匹増え、気づけばまた奥から新手が跳ねてくる。


 結果、ADDの連続で、なかなか下層への道を進むことができなかった。


「何かいいソリューションはないの?」


 カグラが言う。

 銀髪を跳ねさせながら黄金スケルトンのホネキチを呼び出し、そのまま前衛へ送り出した。ホネキチは無言のまま盾役めいて前に出るが、相手の数が数である。押し返しても押し返しても、ぴょこぴょこと新手が湧いて出た。


「えっと、下層のゾーン境界まで走る……?」


 ケンタは右から飛び込んできたカエルシャーマンをメイスで叩いた。


「呆れたわ……それ、力技って言うのよ」


 カグラも左から来たカエル魔導士の顔面を杖でひっぱたく。


「他にパーティいないし、もうそれでいいわよ!」


 エレネが叫ぶ。

 正面に立ち塞がったカエル兵士と斬り結びながら、その白銀の鎧を泥で汚しつつも、一歩も退かない。


 選択肢は多くなかった。

 倒して進むには効率が悪すぎる。ここで足を止めれば止めるほど、背後にも横にも敵が増えていく。


「よし、決まり!」


 ケンタが叫ぶ。


 その瞬間、三人はほとんど同時に向きを変えた。

 ホネキチが先頭へ飛び出し、その後をケンタ、カグラ、エレネが駆ける。背後からは、怒声めいた鳴き声と水音、跳ねる足音がどっと押し寄せてきた。


 かくして、満員電車のように長大なトレインを引き連れて、三人と骨一体は走った。


 ――下層へ。


* * *


 下層側のゾーン際まで駆け込んだ瞬間、空気が変わった。


 上層に満ちていた湿り気は背後へ遠ざかり、代わって乾いた埃と黴の匂いが鼻をくすぐる。荒い息を整えながら見回せば、そこは石壁に無数の穴が穿たれた地下墳墓であった。壁面の穴には簡素な棺が押し込まれ、その表面には積年の埃がうっすらと積もっている。


 薄暗い空間ではあるが、完全な闇ではない。

 石壁そのものがほのかに発光しており、ヒューマンの目でも周囲の様子は十分に見てとれた。


「この辺の棺は空みたいだな……」


 ケンタが手近の棺の蓋をずらしながら言う。


「やめてよ、そんなの覗くの……」


 エレネが眉をひそめて制止した。だが、ケンタは気にした様子もない。


「いや、でも突然、敵に出てこられても困るしな」


 構わず、辺りの棺をひとつひとつ見て回る。


「入れ物あったら覗くのがゲームの基本だろ?」


 やがて安全を確認すると、手近の棺にぴょんと腰を据えた。


「よし! 安全そうだから、ここで作戦会議だ」


 その様子にカグラは肩をすくめ、空の棺へ腰掛ける。

 対してエレネは座る気にはなれなかったらしく、立ったまま周囲へ視線を巡らせた。


「カエル騎士はどこに出るの?」


 問われたケンタは、ひとつうなずくとホワイトボード窓を呼び出した。空中に開いた白い板へ、慣れた手つきで図を描き始める。


「下層にはボス部屋が二つある」


 左右の端に、それぞれ箱を描く。


「片方が、生カエルのキングの王の間だ」


 左の箱の上に、『キング』と書き込んだ。


「もう片方が、アンデッドカエルのボス、デスロードの部屋……」


 今度は右の箱の上に、『デスロード』と書き込む。


「カエル騎士は生よね? キングの方にいるの?」


 エレネが、左の箱を指して問う。


「最初はそうだが、叙事詩クエストのフラグが立ってると、デスロードの部屋に向かって徘徊を始める」


 ケンタはキングの箱からデスロードの箱へ、一本の矢印を引いた。


「経路は毎回違うので読めないけど……」


 カグラが、デスロードの箱を杖で指して言う。


「ここで待ってれば必ず現れるってことね?」


「なるほど……ではデスロードの部屋に向かいます」


 エレネがそう宣言すると、ケンタとカグラはうなずいて立ち上がった。


 ホネキチもまた、カグラの後ろへ歩み寄る。

 そして顎の骨をケタケタ鳴らしながら、うなずくように頭を揺らした。


* * *


 ケンタたちは、乾いた死者の国を縦断していた。


 湿り気を失った地下墳墓は、どこまでも静かだった。壁に押し込まれた棺の列、埃をかぶった石床、ほのかに光る石壁。時おり現れるアンデッドカエルを退けながら、三人と骨一体は慎重に通路を進んでいく。


 やがて、その先にぽっかりと大きく口を開けた空間が見えてきた。


 デスロードの部屋の前である。


 その入口近く。

 脇へ逸れた枝道に、三人と骨一体は身を潜めていた。


「ここで待つだけでいいの?」


 声を潜めて問うエレネに、ケンタはそっと部屋の方を指さした。


「シナリオじゃ、カエル騎士は部屋に飛び込んでデスロードと戦い始めるんだ」


 その言葉に、エレネは小さくうなずく。


「でも、その前にここで戦うのも悪手だ。徘徊モンスターが次々参戦してくる」


「さっきみたいなのは、勘弁してほしいわね」


 カグラが嫌そうに顔をしかめた。上層で引き連れた長大なトレインを思い出したのだろう。銀髪がわずかに揺れる。


「じゃあどうすればいいの?」


「ひとつだけソリューションがある」


 ケンタは右手の人差し指で天を指し、告げた。


「カエル騎士とデスロードを戦わせて、弱ったところを一網打尽にする!」


「それは、また合理的というかセコいというか……」


 カグラが呆れ半分でつぶやく。


「バグ技とか、やめてよ?」


 エレネが眉をひそめる。だがケンタは、きっぱりと言い切った。


「問題ない、仕様は超えてない」


 それから、潜伏することしばし。


 乾いた岩窟の奥から、湿った足音が近づいてきた。


 ペタ……ペタ……。


* * *


――――――――――――――――――――――――

【PROMPT FOR KERAU】

 あなたはカエル族の聖騎士ケラウです。

 王の叱責を受けたあなたは、汚名返上のため、墳墓に巣食う死者たちを討伐する必要がある。

 死者たちの統率者、フロッグデスロード・ラーケウの部屋に向かいなさい。

 道中、異なる光の聖騎士に出会った場合は、その剣を見極め、進むべき道を示しなさい。

 もし、聖騎士に相応しくない振る舞いがあったら、この墳墓の一員として葬るのです。

――――――――――――――――――――――――


 カエル族の聖騎士――ケラウは、少々焦っていたのかもしれない。


 いつもなら、透明化している冒険者たちも決して見逃さない。だが、聖騎士とて一匹のカエルである。王の叱責は思いのほか深く腹に沈み、名誉を挽回せねばならぬという焦りが、その視野をわずかに狭めていた。


 ゆえに彼は、枝道に潜む三人と骨一体に気づくことなく、デスロードの部屋へと飛び込んだ。


 気づいた護衛が、警戒の声を上げる。


「ゲコッ――」

「ゲコゲコッ――」


 部屋の最奥、玉座の前にはデスロード・ラーケウがいた。


 色褪せたえんじ色の絨毯が、玉座へ向かって真っ直ぐ伸びている。その両脇には、計八体のアンデッド貴族や護衛が控えていた。シャーマン、マギ、グールナイト、それに戦士タイプが五体。


 だがケラウの視線は、迷うことなく最初の獲物を捉えていた。


「まずは、回復役から……ケロ」


 月下の騎士に敗れ、リスポーンしたケラウは学習履歴を失っていた。

 だが、それでもなお基礎領域に焼きついたものがある。


 白いローブの人間の子。

 月下の騎士を支えていたのは、紛れもなくアイツだった。


 ならば、回復役を消す。

 それが最優先である。


 抜き放たれた聖剣が、眩い光を放った。


 聖剣ソルクラウスが宿すのは太陽の光。

 それは死者たちにとって、魂そのものを焼く灼光であった。


「スラッシュ・オブ・ザ・ソルフレイム! ケロッ」


 閃いた一太刀が、シャーマンを真っ二つに断つ。


 返す刃が横薙ぎに走り、続いてマギが沈黙した。


 さらに踏み込み、突き込まれた剣先がグールナイトの胸を貫く。麻痺爪を振るう暇すら与えず、その巨体を崩れ落とさせた。


 残る護衛は、戦士タイプ五体のみ。


 そして、動きが鈍く、回復もない戦士タイプなど、もはやケラウの敵ではなかった。


「ソル・スパイラルエッジ! ケロッ」


 縦に、横に、宙返りするように跳ぶケラウ。

 その剣閃を追う白光が螺旋を描き、亡者の戦士たちを次々と焼き尽くしていく。


 骨が砕け、腐肉が弾け、黒い瘴気が光の尾にかき消される。


 やがて、ピョンと部屋の中央へ着地したケラウは、静かにソルクラウスを掲げた。


 その刀身は、先ほどよりなお激しく輝いていた。


 部屋に残されたのは、聖騎士と亡者の王だけであった。


* * *


「マジかよ、もう護衛が一掃されてる……」


 部屋を覗き込んだケンタが、思わず呻いた。


「へえ、凄いわね、あのカエル」


 カグラが、ケンタの頭の上からひょいと部屋の中を覗き込む。   

 白光をまとったカエル騎士の背が小さく見えた。


「腕が鳴ります」


 カグラの肩越しに、エレネも覗き込む。

 その目には、はっきりと戦意が宿っていた。


「おかしいな、カエル騎士ってあんなに強かったっけ?」


 ケンタが首をひねる。(※ケンタのせいです)


 部屋の奥。

 フロッグ・デスロード・ラーケウが、玉座へ続く(きざはし)をゆっくりと降りてくる。


 頭上には五段のHPゲージが浮かんでいる。

 ボスモンスターの証だ。

 

 その左手には、優美な反りを描く大太刀。

 右手には、それより短い、やはり反りを帯びた脇差し。


 二振りの刃は、古びた室内にあってなお、不気味な艶を放っていた。


「二刀流か……ドロップは当たり確定だな」


 ケンタが小声で呟く。


「どっちの味方すんの?」


 カグラが視線を外さぬまま問う。


「カエル騎士が残るようにしたいんだが、ピンピンしてても困る。少し戦況を見よう」


 ケンタはそう答え、入口の陰に身を寄せたまま、じっと部屋の中を見据えた。


「始まるわよ」


 カグラが顎で示した先で、いよいよ戦いが始まろうとしていた。


 エレネは、食い入るようにカエル騎士の様子を窺う。


 ケラウは、デスロードの放つ黒い瘴気を受け止めるかのように、剣先を目の高さへすっと構え直した。


 光が黒を退ける。

 黒が光を呑み込もうとする。


* * *


 デスロードが、黒い瘴気をまとった大太刀を振り下ろす。


 重く、鈍く、それでいて速い一撃だった。

 だがケラウは紙一重で飛び退き、その斬撃をかわす。


 ――直後。


 まるで最初からそこに置かれていたかのように、脇差しが滑り込んだ。


 反りを帯びた刃が、ケラウの表皮を覆うヌメりを押しのけ、左腕に浅く傷を刻む。


 その瞬間、視界の端に緑色の液体が滴るデバフアイコンが点灯した。


 ――猛毒効果。


「おのれ……いや、亡者に卑怯も正道もないケロか……」


 吐き捨てるように言いながら、ケラウは一時後退する。


「キュア・ポイズン! ケロッ」


 短い祈りと共に、毒のアイコンが掻き消えた。


 だが、その隙をデスロードは見逃さない。


 黒い瘴気をまとった大太刀が、再び真上から振り下ろされる。


 今度は、かわせない。


 縦一閃。

 ケラウの身体は、そのまま両断されたかに見えた。


 だが、そこには白い光があった。


 ソルクラウスの刀身が、振り下ろされた大太刀を真正面から受け止めていたのである。


 鍔迫り合い。


 それは本来、二刀を操るデスロードに有利な展開だった。


 虚ろな亡者の王の貌からは感情が読めない。だが、大太刀でソルクラウスを封じ、空いた脇差しの毒で屠る。そんな勝ち筋を確信しているかのような余裕が、その立ち姿には滲んでいた。


 その、はずだった。


 しかし、左手一本で太陽の聖剣を押し留めるには、無理があった。


「ワレらが守護神、太陽が化身! ソルフレイム・プロム! ケロッ」


 ケラウが祝詞を上げる。


 白光が、爆ぜるように膨れ上がった。


「ワレに浄化の力を貸してケロッ! インパクト・オブ・ザ・プロム! ケロッ」


 押す。

 押し返す。


 浄化の光が、黒い瘴気を一枚ずつ剥ぎ取るように消し去っていく。


 金属と金属が激しくぶつかり合い、耳障りな悲鳴をあげた。


 刃が刃を滑る。


 次の瞬間、ソルクラウスの白光が閃き、デスロードの左手を斬り飛ばした。


 腕ごと飛んだ大太刀は、玉座の背もたれへ深々と突き刺さる。


 ぶうん、と不快な振動音が響き渡った。


 デスロードは、不思議なものでも見るかのように、そちらを振り返る。


 だが、その隙にケラウは踏み込んでいた。


 追撃の一閃。


 しかし、デスロードは残る右手の脇差しでそれを跳ね返すと、ぐにゃりと長く伸びた舌を玉座の方へ走らせた。


 絡め取るように大太刀を引き戻す。


 その刹那。


 戻る大太刀を、失われたはずの左手が掴み取る。

 生者のように、ぬめりを帯びた左腕が生えていた。


 ダメージは、確実に入った。


 しかし――五段あるデスロードのHPゲージは、一段目がようやく消えただけであった。

 

(つづく)


――第四十八話 あとがき


 最後まで読んでくださって感謝するケロ。

 カエル族の聖騎士、ケラウだケロ。


 後編は来週火曜日のお昼頃に投稿予定らしいケロ。

 続きも読んでもらえたら嬉しいケロ。


 もし少しでも楽しんでいただけたなら、ブクマや★で応援してもらえると励みになるケロ。


 ……しかし皮肉なことだケロ。

 前回の敗北が、我を一段強くしたのは認めざるを得ないケロ。

 まことに業腹だケロ。


 だが、だからといって再び負けるわけにはいかぬケロ。

 敗北の水底に二度も沈むなど、聖騎士として笑い話にもならぬケロッ。


 あの月の騎士と、従った白き小さき者……。

 再戦の時まで、我は負けぬ、沈まぬ、ぬめらぬケロッ!


――フロッグナイト・ケラウ


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