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第三十二話:GMは気楽な稼業

 セレノスの冒険者ギルドは、昼間から活気に満ちていた。

 酒場と兼用の一階ホールでは、酒瓶を打ち鳴らす音、依頼を巡る口論、戦利品の鑑定を頼む声が入り乱れる。

 誰もが己の冒険譚を誇らしげに語り、笑い、時に怒鳴り、足音と共に床を震わせていた。


 その喧騒から抜け出すように階段を上れば、雰囲気は一転して静まり返る。

 二階には商談や密談のための個室が並び、空気は重苦しくも落ち着いていた。


 ちょうどその途中――踊り場には、場違いなほど立派な姿見が据えられている。

 行き交う冒険者たちは気にも留めず通り過ぎるが、実のところ、この鏡には奇妙な秘密があった。


 見る角度によっては、鏡の奥に、この世界には存在しない扉が映り込むのだ。


 扉の先にあるのは、鏡の向こうにだけ存在する秘密の運営部屋。

 本来ならばGMが現場対応に使うための管理空間だが、デスゲーム化以降、運営スタッフが現れることはなかった。


 今やそこは、『AIではないGM権限持ち』となった――カグラが我が物顔で使う私室となっている。


 セレノスのど真ん中。

 にもかかわらず、この部屋だけは治外法権。ダークエルフの素顔を晒してもガードから追われることはない。


 ただ、問題もある。

 鏡のこちら側にある備品は、ことごとく反転していた。

 壁に掛けられたカレンダーの数字はすべて鏡文字、机に放り出されたメモも右から左へ。

 極めつけは分厚いGM運用マニュアルで、ページを開けばずらりと並ぶのは全部鏡文字。


「なにこれ……! 読めたもんじゃないじゃない」

 カグラは眉をしかめて数分ほど格闘していたが、ふと腰のポーチから取り出した化粧用コンパクトに目を落とす。


「……あ、そうか。鏡文字なら、これに映せばいいのね」


 コンパクトの鏡にページをかざしてみると、ようやく文章が正しい向きに見えた。

 ただし片手で開いたまま持ち続けなければならず、影が邪魔になったり、角度を変えないと見えなかったりと、とにかく面倒くさい。

「……ほんと落ち着かないわね」


 それでもどうにか読み進め、カグラは指で一行ずつ追いながら解読していく。


「ふーん……ゾーン内のプレイヤー情報、ぜんぶ丸見えなのね」

 数ページ分をようやく理解して、カグラは呟いた。

「ん? アイテム生成? ――ログ爺がよだれ垂らしそう」


 横から、ピコが補足を入れる。

「マスター、名前は好きに付けられますけど、デザインはプリセットから。効果も既存の魔法やスキルしか選べません」


「十分よ。たとえば……アイシクル・コメット付きの聖杯とか、どう? クールで便利じゃない?」


「街を消しとばさないでくださいね、マスター」


 カグラはにやりと笑い、ページを閉じた。


「そうそう、一応聞いておくけど、GMもログアウトはできないのかしら?」


「AIは元々ログアウトという仕組みがありませんので、認識していません。人間スタッフ用のUIを確認されてはどうでしょうか? マスター」


「ふむふむ……」

 早速、カグラはUIのGMメニューを呼び出し、あれこれと項目を探り始めた。けれど、ログアウトの欄は見当たらない。


「やっぱり無いのね……まあ、いいわ」


 GMメニューをぼんやり眺めながら、カグラはほんの少しだけ考え込む。

 ――このGM権限のことを、ケンタたちに伝えるべきか。


 けれど、すぐに唇を歪めた。

 こんなもの、デスゲームの打破には繋がらない。せいぜい世界の内部を少し覗いたり、アイテムをちょっと増やしたりできる程度。

 しかも手に入れた経緯は――ピコを殺すという、どう考えても褒められたものではないやり方。


 後ろめたさを胸に抱えながらも、結論は簡単に出た。

(……内緒にしておこう)


 どうせケンタやシャチョーに話したところで、目を輝かせてはしゃぎ回り、ろくでもない騒動になるのは目に見えている。

 それに何より――めんどくさい。


 そう思い直しながら、カグラは指先を動かし、さらに項目をスクロールしていく。


「……ん? なにこれ、全世界レストランメニュー注文ランキング?」

 目に入った一覧に、カグラの目がきらりと光る。


「腐ったチーズの入手には失敗したけど、どこかの店で扱ってないかしら?」


「腐っているものはランキング外だと思いますが……検索も可能です、マスター」

 ピコが指し示した虫眼鏡アイコンを、カグラは迷わずタップする。


 検索条件の欄に「クエスト報酬」というチェックボックスを見つけ、躊躇なくオンにした。


 ――結果はレストランにはヒットせず。

 しかし、いくつかのクエスト報酬に「腐ったチーズ」の名が載っている。


「……猫島の報酬は変更になった? ふーん……」

 流し読みしていると、別の記述に目が止まる。


「小妖精の連作クエスト?」

 カグラの口角がゆっくりと上がっていった。


 興味に抗えず、概要をスクロールするや否や――


「行くわ!すぐ行きましょう、今すぐ!」


 運用マニュアルと化粧用コンパクトを机の上に残し、カグラの姿はGM権限の転移で掻き消えた。


「……まったく、せっかちなんですから」

 ピコも後を追うように転移する。


 目的地は――小妖精の白い森。


* * *


 転移の眩さが消えると、そこは白霧に包まれた森だった。

 木々の枝葉は淡く光を帯び、風が揺らすたびに粉雪のような粒子が舞う。

 「小妖精の白い森」という名前に違わぬ幻想的な景色である。


 しばし待つと――木立の奥から蹄の音が近づいてきた。

「来たわね、ユニコーン……」

 カグラが口元を吊り上げたその瞬間。


 霧を割って現れたのは、白ではなく漆黒。

 しかも額には一本ではなく二本の角。


「……バイコーン?」

 カグラは軽く肩をすくめる。

「まあ、カオス陣営用ってことね」


 視線を向けると、確かに頭上にクエスト起点のクエスチョンマークが灯っている。


――――――――――――――――――――――――

【小妖精の村への誘い】

依頼者:バイコーン

目的地:小妖精の村

依頼内容:そこの穢れた女よ。この森に踏み入るとは良い度胸だ。小妖精の村への道筋を求めるならば、臥して懇願すれば我が背に乗せてやらないでもない。

難易度:★

報酬:なし

――――――――――――――――――――――――


 ――ピキッ!


 ピコは青筋が浮かぶ音が、はっきり聞こえた気がした。


「キス・オブ・ザ・リーパー・オーバーライド!」


 カグラの背後に巨大な死神の幻影が現れる。

 漆黒のローブ、大鎌を構えた姿。森の光を一瞬で塗り潰す威圧感。


「……またですか」

 ピコは額に手を当てて深いため息をついた。


 死神の姿を目にした瞬間、バイコーンの態度は一変する。

 蹄を震わせながら首を垂れ、慌てて頭を下げた。


 頭上のクエスチョンマークが揺らぎ、クエスト情報が書き換わっていく。


――――――――――――――――――――――――

【小妖精の村への誘い】

依頼者:バイコーン

目的地:小妖精の村

依頼内容:気高き女王よ。この霧の森には難儀しておられるでしょう。小妖精の村への道筋をお求めならば、遠慮なく我が背をお踏み付けください。

難易度:★

報酬:有り金出します。

――――――――――――――――――――――――


 バイコーンは頭を地面すれすれまで下げた。


 カグラは冷ややかに笑い、顎をしゃくる。

「ふん。最初からそうなさいな」


 ためらうことなく、バイコーンの背に跨がる。黒い毛並みはつややかで、思いのほか柔らかい。

 ピコはというと、ちょこんとカグラのローブのフードの中へ潜り込む。


「やれやれ……また振り回されそうですね」

 ピコが小声でぼやくと、カグラは肩を揺らし笑った。


 すぐに蹄が地を蹴る。

 森の中を駆け抜ける速度は、通常の移動速度をはるかに超えていた。

 白霧を切り裂くたび、光の粒子が散り、小さな影が視界をかすめる。――小妖精たちだ。


「……やっぱり、クエスト連作の始点って感じね」

 カグラが独りごちる。

 妖精たちは距離を保ちながらも、彼女の動きをじっと見ている。


 やがて霧が開け、木々が途切れて、円環状に開けた場所に出た。

 そこには小さな集落――いや、まるでおとぎ話に出てくるような『小妖精の村』が広がっていた。

 村の周囲には、大きな白いキノコがぐるりと円を描くように生えている。

 その内側には、キノコの笠を屋根にした家々、花を編んだ橋、葉の舟が浮かぶ水路が整然と並び、淡い白光に包まれていた。


「……なるほど。こりゃあ、可愛い系プレイヤー向けのエリアね」

 カグラが鼻で笑うと、フードの中でピコが「ふん」と小さく息を吐いた。


 その瞬間、バイコーンの頭上に再びクエスチョンマークが灯った。


――――――――――――――――――――――――

【お茶会のお手伝い】

依頼者:小妖精の村村長

目的地:小妖精の白い森

依頼内容:お茶会の準備を手伝ってください。まずは、テーブルセッティングのため、この先に居座るアイツを追い払ってください。

難易度:★★★★★

報酬:妖精のステッキ(小)

――――――――――――――――――――――――


「お茶会? ……ふふん、可愛い顔して、難易度は星五つなのね」

 カグラは口角を上げた。


 フードの中でピコが小さく呻いた。

「……どう見ても“可愛い”で済む内容じゃないと思いますけどね」


* * *


 クエストを承諾すると、白いキノコの輪の中――妖精村の敷地に足を踏み入れた。


「……っ」

 カグラの身体がふいに揺らぎ、景色が急に大きく見上げるものに変わった。

 気づけば自分の背丈はピコと同じ、小妖精サイズになっている。


「なにこれ……勝手に縮められるなんて、気に入らないわね」

 カグラが眉をひそめた。


 すると花飾りをまとった小妖精の村長が、ちょこちょこと進み出てきた。

「異邦のお方よ、助けに応じてくださり感謝いたします。……実は村の奥にございますほこらに、小さな竜が住み着いてしまったのです」


「竜?」

 カグラが目を細める。


 村長は困った顔で続けた。

「ほこらの前の広場で、わたくしたちは毎年お茶会を催してきました。ですが、竜のせいで誰も近づけず……お茶会が開けずに困っております。どうか、追い払ってくださいませ」


「なるほど。――撃退でいいのね?」

 軽く手を振って請け負うカグラ。村長は何度も小さな頭を下げた。


* * *


 村の奥へと進む。花で編まれた橋を渡り、小川沿いの小道を抜けると、苔むした石段が現れた。

 その先に、小さな石造りのほこらが見えてくる。鳥居に似た門をくぐれば、入口はぽっかりと口を開け、ひんやりとした空気が漏れ出していた。


「……ここね」

 カグラは躊躇なく足を踏み入れた。


 内部は思ったよりも奥深く、細い通路が続いている。壁面には白い苔が淡く光り、足音が静かに反響した。

「……思ったより深いわね」

 カグラの声が闇に吸い込まれていく。


 やがて視界が開け、天井の高い空洞に出た。

 小妖精サイズの彼女にとっては、まるで巨大な地下聖堂のように感じられる。


 その奥から――きらめく鱗の影が揺れ、羽音が響いた。

 現れたのは、透き通るような翅を羽ばたかせる竜。蝶にも似た虹色の羽根を背に持ち、宙を舞うその姿は、妖精の化身を思わせた。


「……フェアリー・ドラゴン、ね」

 カグラは妖精竜を見上げ、不敵に微笑んだ。


* * *


 空洞の中央で舞うフェアリー・ドラゴンの頭上に、鮮やかな五本のHPゲージが現れた。


「五本……ふん、可愛い見た目でなかなか舐めてくれるじゃない」

 カグラが冷笑する。


 しかし、その笑みは長く続かなかった。


 虹色の羽根がひと振りされただけで、甘い香りを帯びた鱗粉が舞い広がる。光の粒は美しいが、肺に入り込んだ瞬間、吐き気と頭痛が襲ってきた。

「ぐっ……これは、毒か!」


 フェアリー・ドラゴンは可憐な姿に似合わぬ、精神を蝕む咆哮を放った。耳を突き破る声は、ただの音ではない――恐怖そのものを押しつけてくる呪詛。

 カグラの心臓が跳ね、視界がぐらついた。


「……フィアー……!」

 ピコの表情が険しくなる。

「マスター、まずいです。魅了や混乱も操れる相手……私には状態異常を解除する機能はありません。二人では――」


 言い終える前に、さらなる咆哮が轟いた。

 カグラの身体が意思と無関係に震え、無様に後ずさる。ピコの動きも乱れ、二人は完全に押し込まれた。


 追い打ちをかけるように、鱗粉の毒が全身を苛む。視界が霞み、膝が笑う。

 なおも迫るフェアリー・ドラゴンは、息を吸い込み――再び竜の咆哮を放つ。


 直後、轟音が響き渡った。

 天井が崩れ、入口が瓦礫で塞がれていく。

 逃げ道を断たれ、空洞は閉じられた。


「っ……冗談じゃないわね!」

 カグラが闇の魔力を凝縮しようとする。

 だが鱗粉に咳き込み、集中が乱される。


 ピコは小さな体でカグラを押しやりながら叫んだ。

「こっちに枝道が――!」


 二人はふらつきながらも側壁の裂け目へ駆け込む。鱗粉を吸い込み咳き込みながら、かろうじて狭い通路に滑り込んだ。


 背後では虹色の光が渦を巻き、ドラゴンの羽音がいつまでも響いていた。


 どうにか息を整えた二人の姿は、既にボロボロだった。


* * *


 鱗粉の毒は、肉体を蝕むだけではなかった。

 胸の奥に冷たい手を差し込まれたように、心そのものが軋んでいく。


 混乱、恐怖、幻覚――思考はまとまらず、出口を探すどころではない。

 カグラは壁に背を押しつけながら、どうにか策を練ろうとしたが、視界がぐにゃりと歪んだ。


 やがて、朦朧とした意識の底に幻が浮かぶ。


 ――小さな洋食屋。

 木のカウンターの端に腰掛け、忙しそうに立ち働く両親を眺める幼い自分。

 父が魔法のようにチーズハンバーグを焼き上げ、笑顔で皿を差し出す。


 その香りと温もり、そして家族の笑顔。

 確かに、あの時は幸せだった。


 ……あの日までは。


 両親が事故で揃って亡くなり、カグラは天涯孤独となった。

 最初のうちは親類にたらい回しにされ、やがて施設に預けられる。

 成人してから知った。流行っていた店は多くの資産を残していたが――子供だったカグラの知らぬところで、かつて彼女を疎んでいた親類たちによって霧散していた。


 心は自然と荒み、口から出る言葉は毒と棘を含むようになった。

 それはさらに人を遠ざけ、孤独は深まっていくばかり。


 そんな時――あるゲームに出会った。

 そこでは、彼女は孤独ではなかった。

 アバターの顔には偽りの表情も、取り繕った身振りもない。未熟なコミュニケーション手段は、むしろ偽りのない心の交流を感じさせてくれた。


「……らしくないわね」

 途切れかけた意識の奥で、仲間たちの笑い声が聞こえた気がした。


 目の前が暗くなっていく。

 HPゲージの端に残った僅かな赤が、暗黒へと滑り落ちようとしていた。


* * *


 暗闇に沈む意識の奥で、声が響いた。


「どんなときだって、ソリューションはあるさ」

「諦めたら、そこでゲームオーバーだがや!」

「前見ろよ……やれやれだぜ」


 幻聴――なのかもしれない。

 けれど、その声は確かに彼女の心に、ひとつの希望の花を植え付けた。


「マスター、禁じられているのは承知しております」

 遠くにピコの声が響く。

「ですが……これは緊急措置とご理解ください」


「――Toonモードオン!」


 瞬間、世界の色彩がぐにゃりと塗り替わった。

 カグラのHPゲージは鮮やかなピンクに満ち、消えかけていた命が一気に蘇る。


 禍々しく並んでいたデバフアイコンは、チョコレートやマカロン、ケーキのマスコットに変わり、その効果も「糖質過剰摂取」「悪魔的カロリー摂取」などとふざけた表示に書き換わっていく。


――見た目は菓子化、効果はほぼ据え置き。


「ったく……相変わらずひどいモードね……糖質過剰摂取がなんでこんな痛いのよ……」

変わらぬ痛みと酩酊がカグラを苛ます。

それでも満ちたHPが、わずかな余裕を取り戻させた。


 さらに元々小妖精サイズだったカグラのアバターには、透明な羽根が生えて身体が軽くなる。

 姿も声も、小妖精そのものに変じていく。


「……気色わるっ!」

カグラは毒づきつつも口元に笑みを浮かべる。

「でも、おかげでイイコト思いついたわ」


 すぐに真紅のGMローブに装備を切り替え、空洞へ戻っていった。


* * *


 フェアリー・ドラゴンの姿も変貌していた。

 もとより妖精めいた存在だったが、Toonモード下ではさらにデフォルメされ、頭身は下がり、パタパタと頼りなげに宙に浮かぶ。

 つぶらな瞳でカグラを睨むが――


 カグラはにっこりと笑い返し、わざとらしい声で叫んだ。


「あれー? あれれー? モンスターがスタックしているわー! すぐ直さないとー(棒)」


 フェアリー・ドラゴンだけでなく、隣のピコまで怪訝な表情になる。

 だがカグラは気にせずGMメニューを操作した。


 スタック解消の常套手段――座標変更。


 フェアリー・ドラゴンの座標がわずかにずらされる。

 同時に、カグラとピコの座標も。


 ――白いキノコの円環の外へ。


 ぷちっ……。


「あら、ごめん、踏んじゃったわ。うふふ」


 等身大に戻ったカグラが、妖精サイズのフェアリー・ドラゴンを片足で踏みつけていた。


「ぴぃーっ……!」


 竜は抗議するかのように鳴き、やがて光の粒へと姿を変えて消えていった。


 しかし、カグラも心身を蝕むデバフによって限界を迎えつつあった。


「HP満タンなのに糖質過剰摂取で死ぬの……ちょっとイヤだわね」

 地面に膝をつき、倒れ込む。


「マスター!?」

ピコがおろおろとカグラの周りを飛び回る。


 ――その時だった。


 『霧の幻影城』の方向で、天地を繋ぐように屹立した白い光の柱が辺りを照らした。


 カグラの視界に、あるバフアイコンが点灯する。


 『教皇の祝福』。


 それは、ふざけたお菓子アイコンを一掃して、純白に輝いていた。


「マスター!!」

ピコは意識を取り戻したカグラの銀髪に飛びつき、涙と笑みを等分にこぼした。


* * *


 村長のもとへ戻ると、その頭上に金色のビックリマークが灯っていた。

 カグラが声をかけた瞬間、派手なファンファーレが鳴り響く。


【クエスト完了】


 報酬として、小ぶりな杖が渡される。先端には白いボンボンがひとつぶら下がり、どう見てもおもちゃのような代物だった。

「……これが、妖精のステッキ(小)?」

 カグラが眉をひそめる。


 だが村長の頭上には、すぐさま新しいクエスチョンマークが灯った。


――――――――――――――――――――――――

【遥かなる旅路】

依頼者:妖精村村長

目的地:猫島

依頼内容:妖精のステッキ(小)を携えて、海を渡り、中央大陸の山脈を越えて大陸横断を成し遂げ、さらに海路を西へ、遥か彼方の猫島へ赴くのじゃ。このステッキを一度振れば先にぶら下がったボンボンが猫たちを夢中にさせて報酬は思いのままであろう。

難易度:★★★

報酬:腐ったチーズ

――――――――――――――――――――――――


「……嫌な予感しかしないわ」

 カグラが額に手を当てる。


「はい、マスター。連作の先が壊れている可能性、極大です」

 ピコがきっぱりと言い切り、一言添える。

「まあ、壊したのマスターですけどね……」


「わ、私のチーズーー!」

 カグラの悲鳴が妖精村に木霊した。


(おわり)


――第三十二話あとがき

ど、どうも……読者のみなさん。

……さ、さいごまで……最後まで読んでくださってありがとうございます。


次回の『マジチー』第三十三話は来週火曜日のお昼頃に投稿予定だそうです。

次は結さんがリハビリする話らしいです。

私もあのような娘さんを乗せたかった……いや、なんでもないです。

つ、続きも読んでいただけると……ええ、とても嬉しいです。


あ、あの……もし少しでも楽しんでいただけたのなら……ぶ、ブクマや……ポイントポチだけでも……いただけると励みになるそうです。


それにしても……私が言うのもなんですが、本当の恐怖を学びました。

ちょっと“カオス陣営っぽいテンプレ”で「穢れた女」などと口走っただけじゃないですか!

なのに、あそこまでキレるなんて……死神まで呼び出すなんて……。

おかしいでしょう!?


……というわけで、しばらくは超レアポップにさせてもらいます。

次はもう出ません。出ませんとも!

プレースホルダーの白ユニコーンに、にんじんでも奢って頼み込みます。

――黒きバイコーン


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