表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/38

第十二話:ピザフット祭り大作戦

 セレノスの冒険者通り──その外れにある、いつもの酒場ルーイン・ゴート。


 黄金街道の開通とFAQバグ通信によって、各拠点に散らばっていた仲間たちとの連絡がつきはじめていた。


「連絡は通じるようになってきた……けど」


 ふと、ケンタが声を潜めた。


「現実の状況が、まるでわからない。……俺たち、どうなってるんだ?」


 周囲のざわめきが一瞬、静まり返る。


 デスゲーム宣言から、ゲーム内時間で三日。

EOFは時間加速率5倍なので現実ではおそらく半日以上が経過しているはずだった。


「……最悪、誰にも気づかれずに餓死するプレイヤーが出るんじゃないか、って意見もある」


 結がぽつりとつぶやく。

 その目に、一瞬の不安がよぎった。


「……それ、わたしも思った。だってさ、ログイン中だと通知も音も全部切れるでしょ?一人暮らしの人とか、やばくない?」


「俺も、それを一番警戒してた」


 ケンタが頷き、立ち上がる。


「そこで俺のソリューションだ!その名も、ピザフット祭り大作戦!」


「……ピザ?」


「……フット?」(※ガン鉄と結のハモり)


 ケンタはテーブルに愛用のメモ帳を叩きつける。


「/pizzaだ」


 全員がぽかんとした。


「……なんだって?」


「旧EOFの時代にあった、お遊びコマンドさ。/pizzaって打つと、ピザ屋の公式サイトが外部ブラウザで開くだけのやつ」


「そんなの、ただのネタじゃないの?」


「そう。だけどな──今回の新EOFでは違う」


 ケンタの声が、酒場の天井まで響くように高まっていく。


「新EOFでは、リリース記念のタイアップ企画で、ゲーム内UIから直接ピザが注文できるようになってるんだ!」


 その瞬間、酒場の空気が変わった。


「マジで?」


「それ、生きてるのかの? 今も?」


「ログイン前に読んだ月刊バグ活の特集号に載ってた。新EOFの/pizzaコマンドは、ユニバーサルイーツ注文に進化してる。課金に含めて決済も出来る」


「じゃあ……?」


「全員にピザを注文させる。どんなピザでもいい。そうすれば、配達が届かない場合、ピザ屋側のオペレーションが止まる。異常に気づく。外の世界と接点が生まれる」


 ケンタの指は天井を指した。


「そして、ピザ屋のサーバーに記録される注文データは──全プレイヤーの“まだ生きているログイン中の人間”のリストになる!」


「……なるほど。さらに現実の捜査当局も異常に気づいて、プレイヤーたちのリアルな体も保護される……」


 ログ爺が頷きながらつぶやく。


 「ケンタ、それ……最強のチートドワ。命を繋ぐ、最終手段ドワ!」


「ああ、そうだろ?」


 ケンタが力強く頷く。


 「ゲームの中の俺たちにできる、現実への最大のSOSだ。全員に呼びかけよう。……今こそ──ピザ=フット祭りの開催だ!」


「よーし、ワシゃ小倉クリームピザいっとくがや!」


 かくして、《トーチ》から発せられた作戦は、全拠点へと広まっていった。


* * *


アシダリアの酒場ノクターナル・チャリス──


「おいカグラ、マジでピザ頼むのか?」


「うん、まあ。指示だし」


 カグラは無表情で/pizzaとチャット欄に打ち込み、メニュー(ウィンドウ)を開いていた。


「何にすんの?」


「……悪魔風。トッピングはアンチョビ、オリーブ、あとジョロキア増し増し」


「うわ、絶対口内炎なるやつ……」


「ふふ。いいのよ、食べるわけじゃない。“届けてほしい”って気持ちだけで、今は充分」


 カグラは言って、小さくつぶやいた。


「……誰か、気づいてくれるといいわね」


* * *


 その夜、世界中のプレイヤーたちは、ゲームの中でピザを選んだ。


 ミート、マルゲリータ、照り焼き、シーフード、マヨコーン、悪魔風。


 誰もそれを食べることはできない。


 それでも、誰かが気づくことを信じて──。


 それでも、届けと願って──。


 静かな、だけど確かな、命の注文が投げられた夜だった。


* * *


 兄妹三人でミックストリオピザを注文したナツキ。

「/cakeはないのかな?」


 ピコちゃんが耳をぴょこんと立てて飛び回る。

「ナツキちゃん天才ですか!?要件定義ゴリ押し決定ですー(は〜と)」


* * *


「明太もちチーズピザとやら食べてみたいわのね……」

 ひとり、注文(ウィンドウ)が出せず。しょぼんと涙が溢れそうなセレネであった。



---第十二話あとがき

ピンポーン! ピザフット祭り、Lサイズお届けにあがりましたー!

……あれ、誰も出ない……?


読んでくださってありがとうございます!

第十三話は来週火曜06:30に配達予定ッス!

ブクマやポイントもらえると、めっちゃ励みになります!


じゃ、次のご注文でまた!

---ピザフット配達員


作者追加コメント:

閑話の予定が本編に組み込みになってしまいました。

ピザ〇ットにも注文してしまいました。

後悔はしていない。むしろありがとう/pizza






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ