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第十一話:金の笑顔と鉄の誇り

 セレノスの広場には、整然と並ぶ《黄金のランドセル型可変鎧》。

炊き出しのように、装備配布が行われていた。


「はい次の方ー! サイズはMでいい? よし、ばっちり!」


 結が笑顔で黄金鎧を手渡すと、受け取ったプレイヤーが感激したように深々と頭を下げる。


 そのとき、列の端でごそごそと様子をうかがう二人組がいた。

どこか見覚えがある顔──あの、デスゲーム化前に無駄に絡んできた男たちだった。


「……えっと、あのときは、すまなかった。悪ノリだったんだ……」

「よかったら……その……装備、まだあるかなって……」


 結はぱっと笑った。


「いいよ! あのときのことなんて、全然気にしてないし!」


 バシンと二人の背中を叩きながら、黄金鎧を手渡す。

眩しい笑顔に、二人は文字通り撃ち抜かれた。


「やべぇ……これ、好きになるやつだ……」

「むしろ惚れた。マジで惚れた」


 かくして、結ファンクラブ第一号・第二号が誕生した。


     * * *


 一方、遥か東。

妖精島──ドワーフの迷宮都市ノクタリムにも黄金街道(ハイウェイ)が到達していた。


 その坑道の奥で、ひときわ濃いヒゲのドワーフが叫ぶ。


「おおお……こりゃまた、えらいモン持ち込んだもんドワ……!」


 彼の名はガン鉄。

トーチ随一の生産職にして、ノクタリムでも名の知れた職人。


 積まれた《黄金のランドセル型可変鎧》を一目見て、ガン鉄はドワドワと唸った。


「まっすぐで四角くて、実に勇ましいが……もうちっと子供にも優しいフォルムにしたいドワな。

それと問題がひとつ……素材がぜんぶ聖属性よりなんで、混沌サイドの連中には、ちと毒ドワな」


 その場で即座に取り出す金槌、火花を散らし、数刻のうちに新モデルが完成する。


 軽量で丸みを帯びた《キッズ・モデル黄金ランドセル》。

モデルに選ばれたのはセッちゃんだった。


「……どう? 似合ってる?」


 セッちゃんは姿勢を正しながら、そっと頬を染め、心の中でつぶやく。


(な、なんか……ちょっと恥ずかしいけど、でも……かっこいい、かも……)


「似合っとるドワ! キミが歩くたび、ランドセルの金がきらりと光るドワ!」


 さらにガン鉄は、シャチョーのために優美な曲線の脇差ムラマサを打ち上げる。


「これぞ……忍の魂宿る刃ドワ!」


「か、かっこええがや……!」


 そして、ログ爺には細工用ハンマーを渡す。

「あんたなら、きっと使いこなせるドワ」


 無言でそれを受け取ったログ爺は、しばしの沈黙の後、静かにうなずく。


そのハンマーにはミスリル銀とマナ鋼で精緻な彫金加工が施されており超伝導並みに魔力が流れそうであった。


「本職には、敵わんのう……細工スキルも上げとるのか?」


「へへへ、そんなに褒められると、テレるんドワ」


「しかし、ムラマサとか隠しレシピにもなかったはずじゃが?」

ログ爺の目が光る。


ガン鉄は目線を逸らして、ヒゲをさすった。

「か、金型にCalm掛けて素材扱いにして細工スキルで魔改造……なんてしてないドワん(オドオド)」


黄金の火花が、またひとつ灯った瞬間だった。


(…したんじゃな)


(…しとるがや)


(…しちゃったわのね)


     * * *


 ──火星の衛星・フォボス、観測室。


観測者A「ノクタリムにて装備改造。キッズモデルに脇差、細工ハンマー……予測外の進展だ」

観測者B「ユーザー生成装備の品質、完全に運営超えてます。特に《ムラマサ》、やばいです」

観測者C「ガン鉄おっちゃん、絶対プロやん! セッちゃんモデルでキラキラしとるし、バズるやつやで」

観測者D「あの、ケンタさんの装備は……?」


 (沈黙)


観測者A「……未登録。会議参加は確認されているが、発言も装備ログも無し」

観測者C「うっそやん……主役なのに地味すぎてログに残らんの?」

観測者B「静かに支えてるタイプですから」

観測者D「……ぼく、ちょっと応援したくなりました」


 そして、フォボスの光球が、そっとひとつだけ明るくなった──。


---第十一話あとがき

ここまで読んでくれて、ありがとなのドワ。

ワシの鍛冶魂も唸る展開じゃったな!


この先も、熱くて硬くて分厚い話が続くんドワ。

すまんが、炉の火を整えるために、これから週刊ペースでいくドワ。

第十二話は、来週火曜の朝6時半に打ち上げる予定ドワん。


もし楽しんでくれたなら、ブクマやポイントで応援してくれると、嬉しいドワ!

鉄と違って、心は心でしか熱くならんのドワ!


また次回、炉の前で会うドワん!

---ガン鉄

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