第十話:黄金装備と黄金街道大作戦
トーチがついに手に入れた伝説級の鉱石たち。
それらをどう活用するか、広場の作戦会議は続いていた。
「やっぱ、全プレイヤーに装備配るって言うたら……大量生産しかないがね」
「防具はまず、確実に命守れるもんじゃなきゃな」
「デザインはどうするんじゃ?」
そこへシャチョーがニヤリと笑って言った。
「あれやがね。昔の黄金の戦士たちも、四角い箱しょってたやろ? あれ見たときから、いつか背負いたい思とったんやて……!」
「おおっ、それはかっこいいが、……金型はどうするんじゃ? NPC鍛冶師じゃ既存の金型からしか打てんぞい」
シャチョーが遠隔BANKインベントリを開いて、黄金の金型を取り出す。
「こんなこともあろうかと、へスペリアを発つ前に、ガン鉄に試作してもらってあるだわ」
ドワーフのNPC鍛冶師はその不思議な金型に首をかしげながらも槌をふるってくれた。
そうして、打ちあがったのは、黄金に輝く、角張ったバックパック型の鎧。
背負えばランドセルのようであり、展開すれば全身を覆う強化装甲。
その名も《黄金のランドセル型可変鎧》──。
「子供心がくすぐられる……!」
「いや、言うておっさんの夢やがね!」
ケンタも思わず苦笑いしたが、機能面では完璧だった。
これを核として、武器は各職業向けに調整された《エクスカリバー(量産型)》を採用。
高性能を保ちつつ、コストを抑えた名作である。
* * *
だが問題は、それをどうやって各地の拠点へ届けるかだった。
「この世界……マゾゲー要素が強すぎて、街道すら安全じゃない」
「低レベルのゾーンにすら、即死級の徘徊Mobが平気で歩いとるでな……まあそのせいで仕様の隙をつくプレイがすっかり定着していたのじゃが…」
「せっかくの最強装備が、配達前に失われるとか笑えんわ!」
そんなとき、ナツキが荷物整理をしているのを見かけたシャチョーが、不意にコムギの挙動に注目した。
とことこ歩いてきたコムギが、地面に積まれた小麦袋の前で止まり、首をかしげてぐるっと大きく遠回りする。
「……ん?」
そのすぐ後にセッちゃんもやってきて、小麦袋の前で足を止めると、わざわざ大きくぐるっと回って反対側でまた真っ直ぐ歩いていく。
続いてやってきたヒゲのNPC商人も、なぜか同じように袋を大きく避けて進んだ。
「今……三人連続で避けたぞ?おっちゃんなんかまたげそうなのに」
「偶然にしては……妙だな」
ログ爺がうなる。
「これは……バグだな。小麦袋の上に、通行不可のフラグが乗っとる。食物の上を跨いじゃ不敬とAI三原則に組込まれとるのかも知れん」
「つまり……」
ケンタが指を鳴らす。
「街道の両脇に、この小麦袋をずらーっと並べたら……NPCも、モンスターも通れない道になる……!」
そして、シャチョーが叫ぶ。
「黄金装備専用! 安全快適・黄金街道大計画――爆☆誕だがね!!」
* * *
資金にあかせて購入された無数の小麦袋は、セレノスの倉庫を埋め、そして街道沿いにトーチの仲間たちによって整然と並べられていく。
「よし、セレノス〜グリンダル〜ヘスペリア間、安全確認!」
「セレノス〜フロストホルン方面、まだ一部徘徊スライムが袋の隙間をむにゅ〜っとしとる! 袋詰め密度薄いよ!なにやってんの!」
こうして「黄金街道ハイウェイ」は完成し、世界各地の拠点へ、黄金のランドセルと量産型エクスカリバーが届けられていくのであった。
* * *
──火星の衛星フォボス。静まり返る観測室に、またもや異常アラートが鳴り響いた。
監視者A「街道上に……小麦袋、1万超設置確認」
監視者B「通行制限が発生しています。徘徊Mobが全回避中ですね……」
監視者C「……え、小麦袋って、俺らも……通れへんとかないよね?」
---第十話あとがき
よっしゃ、ここまで読んでくれて、ありがとさんな!
小麦袋ハイウェイ、最高やったろ? わしらトーチ、やるときゃやるんだわ〜。
でもまだまだ、こんなんで終わるギルドやないでよ!
……で、ちょいとごめんなんだけど、ストックがもうカッスカスでしてな、ちょっとだけ投稿のペース落とさせてもらうでかんわ〜。
次の第十一話は、火曜日の朝6時半ごろにお届けする予定だで、ちぃっと待っててちょ〜よ。
つづきも読んでくれたら、シャチョーめっちゃ嬉しいがね!
もし「おもろかったぞ〜」って思ってもらえたら、ブクマやポイントなんかもポチっとくれると、めちゃんこ励みになりますわ〜。
ほんならまた、次回もよろしく頼みますでな〜!
---シャチョー




