リュース 本選に進む-3
薄まった薄荷水を飲み干して、涼を取るカイタの頭を撫でる。
カイタは本当に召喚獣向きだと思う。たまたま、ビルの間でまだ生まれたての幼獣だったカイタを拾った時はまさかここまで賢い獣だとは思わなかった。
師匠に見せたら、「召喚獣になる。このカシノミを賭けてもいい」と言われたときは、本当にそうかと疑っていたけど、やっぱり経験の違いなんだろうな。
「さ、行こう、カイタまる」
カイタは身震いし、スッとあたまを歩く先へ向けた。
カイタは、若いのにメリハリの付け方が上手い。力を抜いていい場面をきちんと判断している。もう5、6歳、人間で言うと中年くらいにならないとこういう落ち着きや判断が普通なのに、カイタは若いのにいい意味で肩に力が入りすぎていない。
瑞獣の召喚獣にありがちな血統書はないけれど、カイタは十分召喚獣としてやっていけると思う。
折角、助かったカイタの命を次の世代にも繋げたいし、このまま召喚獣としてやっていければ、まだ先の話だけど、いい種付けもさせてあげたい。
そのためには、この本選を超えて、経験を積んで、少しでもいい条件にありつける召喚士となりたい。
カイタと私のために、本選は少しでもいい形で終えたい。
カイタと同じ方向を見て私は歩き出した。