伝言板
今日は久し振りに友人に会いに行く。
もう長い間、都心に出なかった。
久し振りに出たら、迷子になった。
待ち合わせの場所へ辿り着くのに駅員さんに聞かねばならなかった。
駅には想い出があった。
この駅ではないけれども、夫とデートの時に待ち合わせたのが駅だったから……。
駅には「伝言板」という名称だったかな?
「伝言板」があって、そこに日時と要件を書いて置く。
すると、待ち合わせの時間に遅れた人が、その伝言を見て現地へ直行!なぁ~んてのもあった。
時間がゆっくり流れていたように今は思う。
そういえば……シティハンターの依頼は駅の「伝言板」に書くのだったのではないだろうか?
もう、スマホで全てが事足りるから、「伝言板」は無くなった。
「駅の伝言板の所が待ち合わせ場所だったわね。」
ちょっと寂しいような気がしていると、友人がやって来た。
「待ったぁ~?」
「ううん。今来たところ……。」
「良かったぁ~。 ねぇ、どこかに入ってお昼ご飯食べようね。」
「うん。でも、私、分からないわ。もう迷い大人なの。」
「そうよね。家でご主人様を待つ妻だもんね。」
「だったのよ。」
「あれから、どう? 身体……。」
「うん。元気よ。」
「本当かなぁ~。ご主人様が亡くなられてから、貴女、痩せたよ。」
「そう?」
「そうよ。だから、食べよう! いっぱい!」
「うん。」
お昼ご飯は、友人が予約してくれていたレストランで頂いた。
雑談をしているうちに、あの菓子箱の手紙のことを話した。
「でっ、貴女はご主人様の浮気を疑ってるのね。」
「………うん。」
「可能性はあるよね。」
「やっぱり、そう思う?」
「可能性、があるだけよ。今の所、読まないと分からないわ。」
「そうよね。」
「恵ちゃんが来てくれるんでしょう。」
「うん。」
「それまでは、分からないままでいいんじゃないの。」
「……そう、よね。」
「私は違うと思うけど……。」
「どうして?」
「違った方が貴女が元気になるからよ。違って欲しいの。」
「そんなに、落ち込んでる?」
「うん。」
「そうなんだ………。」
「ご主人様の急逝が辛かったでしょう。その上に……は私でも嫌だもの。」
「そうよね。」
「違うことを祈ってるわ。」
「……うん。」
「兎に角、食べようよ。美味しいよ。」
「うん。」
友人と別れ際に話したことは、「昭和は遠くなりにけり」だった。
いつの間にか、時が過ぎて行って、以前はあった物がなくなっていて、街の景色が変わって……。
そんな想いを、私たちが若い頃のおじいさんやおばあさんは、同じような想いをしていたのだろう。
駅の変貌は時の流れを感じさせた。