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恋文  作者: yukko
6/20

電話

朝から暑い………。

朝8時なのに、エアコンをつける。

独りの生活になってから、家事はいい加減だ。

掃除もしたり、しなかったり………。

特に夫の死から半年ほどは酷かった。

何もしたくなかった。

やっと、夫の遺品を片付け始めた所だった。

それも、押し入れの整理と言って押し入れから始めたのだ。


今日も、たぶん、夫の品を見るだけになってしまいそうだった。

捨てられないのに、整理しているつもりなのだ。

右に置いてあったものを左に置く……その程度のことしか出来なかった昨日。

だから、たぶん今日も無理だろうと思っている。

夫の机からアドレス帳が出て来た。

随分古いアドレス帳だ。

開けて見てみると、どうやら独身の頃のものらしかった。

私の名前もあった。

旧姓の私。

結婚する前の苗字と住所、そして電話番号。

昔は覚えたのだ。電話番号を……。

スマホは無く、電話番号と住所を書いたアドレス帳を手に公衆電話から電話を架けた。

夫の家に電話を架ける時、ドキドキした。

勇気が要った。

そう言えば、夫も言っていた。


「お兄さんが居る子と付き合って、家に電話するの勇気が要るんだ。

 お前はお兄さんが居ないから、その分助かったよ。」

「どうして?」

「だって、お兄さんだぞ。」

「お父さんが出る場合もあるじゃない?」

「お父さんは基本出ないんだよ。電話が架かって来ても……。」

「そうなの?」

「うん。何故だかお母さんか彼女。

 でもなぁ……お兄さんが居ると、お兄さんが出る時があるんだよな。

 その時のドキドキが凄いんだぜ。」

「そうなんだ……。」


想い出して笑ってしまった。

今なら考えられないことだけど、家の電話しかなかった頃の若かった私たちは、電話をしたら話したい友達や恋人が必ず出てくれるわけではなく、家族の誰かが電話に出たのだ。

だから、否が応でも大人との話し方を学んでいたのかもしれない。小学生の頃から………。

それはそれで、良かったのだろう。

今の子は公衆電話を使えないのだろうなぁ……などと、思った。


私はこの年になって、夫に「お兄さんが居る彼女が居たんだ……。」ということに気付いたのだった。

私と付き合う前の彼女。

どんな女性だったのだろうか…?

そんなことを想いながら押し入れの中の物を全てだした。

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