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恋文  作者: yukko
4/20

手編み

昨日の雷雨は怖かった。

過ぎ去るまで、独りであることを思い知らされたような気がする。

家に独りっきり……。

寂しかった……それが、昨日の雷雨の時は恐怖が加わったのだ。

夫が恋しかった。

傍に居て欲しかった。

仏壇相手に話しかけても、何も返って来ない。


「お父さん、私を独りにしないで欲しかった………。」


涙しか出て来なかった。

やる気が起きないまま、時間だけが過ぎていった。

気が付いた時に私が手にしていたのは、夫のセーターだった。

私が初めて手編みしたセーター。

私が初めてバレンタインデーで夫に渡したセーター。

チョコレートと一緒に渡したのだった。


「これ、今、開けていい?」。」

「うん。」

「!」

「どうかな?」

「これっ!」

「うん。編んだの……。」

「俺のために?」

「貴方のために……だから、貴方に渡したでしょう。」

「うわぉ―――っ! やった―――っ!」

「ちょっと、大きな声出さないでよ。恥ずかしいから……。」

「これ、今、着てもいい?」

「いいけど……。」

「ピッタリじゃん!」

「良かった~。」

「ありがとう。絶対、大切に着るから!」

「うん。」


夫は本当に大切に着てくれて、今も……ここにある。

私が編んだセーター、ベスト、カーディガン、全て夫は大切に着てくれた。

今、それらは私の目の前に……ある。

涙が出てきて、目の前の私の編んだ物たちが霞んで見えた。

私は夫と長い時を一緒に居たのだ。

共に暮らし、様々な出来事を乗り越えて来た。

なのに、どうして……自信が無いのだろう。

自分の妻としての自信のなさに驚愕した。

まだ、今日という日は始まったばかり……。

娘がやって来る土曜日は、まだ先だ。

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