手編み
昨日の雷雨は怖かった。
過ぎ去るまで、独りであることを思い知らされたような気がする。
家に独りっきり……。
寂しかった……それが、昨日の雷雨の時は恐怖が加わったのだ。
夫が恋しかった。
傍に居て欲しかった。
仏壇相手に話しかけても、何も返って来ない。
「お父さん、私を独りにしないで欲しかった………。」
涙しか出て来なかった。
やる気が起きないまま、時間だけが過ぎていった。
気が付いた時に私が手にしていたのは、夫のセーターだった。
私が初めて手編みしたセーター。
私が初めてバレンタインデーで夫に渡したセーター。
チョコレートと一緒に渡したのだった。
「これ、今、開けていい?」。」
「うん。」
「!」
「どうかな?」
「これっ!」
「うん。編んだの……。」
「俺のために?」
「貴方のために……だから、貴方に渡したでしょう。」
「うわぉ―――っ! やった―――っ!」
「ちょっと、大きな声出さないでよ。恥ずかしいから……。」
「これ、今、着てもいい?」
「いいけど……。」
「ピッタリじゃん!」
「良かった~。」
「ありがとう。絶対、大切に着るから!」
「うん。」
夫は本当に大切に着てくれて、今も……ここにある。
私が編んだセーター、ベスト、カーディガン、全て夫は大切に着てくれた。
今、それらは私の目の前に……ある。
涙が出てきて、目の前の私の編んだ物たちが霞んで見えた。
私は夫と長い時を一緒に居たのだ。
共に暮らし、様々な出来事を乗り越えて来た。
なのに、どうして……自信が無いのだろう。
自分の妻としての自信のなさに驚愕した。
まだ、今日という日は始まったばかり……。
娘がやって来る土曜日は、まだ先だ。