あとがき
恋文は、前に見たNHKのドキュメンタリーを思い出して書いた物です。
ちょうど、広島、長崎、そしてもうすぐ終戦記念日です。
太平洋戦争も入れました。
NHKのドキュメンタリーを見て、当時の夫が妻に送った手紙に「愛する妻へ」とか「最愛の妻へ」とかの言葉で書きだされていました。
全ての手紙が「愛する妻」「最愛の妻」という言葉を使っていたわけではないと思いますが、その放送ではその言葉が繰り返し出てきました。
お一人は当時として珍しい大恋愛の末の結婚ですから、「愛する妻」「可愛い妻」など「どんなに大切に思っているか」を直接的な言葉で書かれていました。
しかし、その多くの結婚が親によって決められた結婚だった当時に、親が決めた相手との結婚でも、戦地の夫が妻に送った手紙に「最愛の妻」と書かれていました。
当時の男性が妻に「愛する妻」とか「最愛の妻」とか決して言っていないであろう言葉、書くことが無いと思っていた言葉が綴られていました。
そのことに驚きました。
その後、その手紙を書いた夫たちは全て戦死したそうです。
中には特攻攻撃をして戦死した人も居ました。
「愛する妻へ」「最愛の妻」と書いた夫たちの言葉は、今の平和な時代の私たちが使う「好きだ。」「愛している。」よりも重い言葉に私は感じました。
その夫たちが命を懸けて残した手紙だからです。
また、戦地へ行くことになる「赤紙」を書いていた女性の話もNHKのドキュメンタリーで見た内容を少し変えて書きました。
その女性は未婚でした。
生涯結婚されていないのです。
名簿に記されていた人を「赤紙」にその人の名前を書き込む仕事だっただけなのに、その女性は「自分の罪」と思い詰めたまま年を重ねられていました。
哀しい青春の恋だったのだと私は思いました。
もう二度と戦争が無い国であることを祈りつつも、それでも、この地球で今も戦闘行為が行われていることが哀しいと思います。
主人公が夫が残した直筆の手紙、恋文を読む時に、その文字を指でなぞります。
直筆であればこその行為です。
全ての手紙が直筆だった頃、恋文を貰った人は、想う人から貰った恋文を胸に抱いたり、その文字を指でなぞったりしたのではないかと思います。
素敵な恋をしてください。
輝く日々を過ごしてください。
そして、この平和が続きますように……祈りながら、この物語を終えます。
読んでくださった方々に心からの感謝を……ありがとうございました。




