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恋文  作者: yukko
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菓子箱

酷暑という言葉が相応しいくらい暑い。

私が若い頃は、こんなに暑くなかったように思う。

そろそろ終活をしなければならないと思い、先ずは亡き夫の遺品から片付けようと押し入れを開けて片付け始めたら汗が止まらなくなった。


「暑い! クーラーを入れてても28℃設定では駄目なのかなぁ。

 はぁ~~~っ、仕方ない。下げよう。」


エアコンの設定温度を25℃にして、また片付け始めた。

菓子箱があった。


「何だろう? これ?」


開けてみると、そこには封書が入っていた。


「えっ? これ、何?」


私が貰ったものではなかった。

私が片付けたものではなかった。


「これ、お父さんの?」


亡くなった主人のものではないかと思った。

心臓が止まるのではないかと思うほどの動悸が起こった。


「見たら……駄目かな?

 でも…………見たい。

 お父さん、ごめん。見たい。駄目かな?」


封筒を開けて手紙を読みたいと思った。

でも、その勇気が無かった。

私は、娘に私の代わりに読んで貰いたいと思った。


「恵に頼んでみよう。………それがいいわ。」


一番近くに住んでいる娘に電話した。


「何? お父さんの遺品の中に手紙があったのね。」

「うん。そうよ。」

「で、それを私に読んで貰いたいってこと?」

「うん。」

「お母さんが読めばいいじゃない。」

「……あのね……怖くって………。」

「怖いって………。」

「だって、お父さんの……もしかしたら……私じゃない誰か他の人から貰ったのか

 も……しれないでしょう。それが、怖いのよ。」

「もぉ~~っ。……仕方ない。読んであげるわよ。」

「本当?」

「うん。……ただし、土曜日ね。私の休みの日ね。」

「ありがとう! 嬉しいわ。」

「心配するようなこと無いと思うけど、一応、土曜日に行くからね。

 行って読んであげるから………。」

「ありがとう。待ってるわ。土曜日ね。」

「はいはい。土曜日にね。じゃあ、バイバイ。」

「ありがとう。待ってるね。」


電話を切って、私は一安心して、その菓子箱以外を片付け続けた。

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