モイラ編幕間03-05『レミィの冒険』『マリーとキヌ』『アシュリーとメメ』
『レミィの冒険』side レミィ
私はレミィ。
座敷童子の代理として主様の冒険をサポートする者です。
現在は『大隊長』に任命され、天界からの遠隔ではありますが探索部隊の指揮を執っています。
まず、戦術単位をS級悪魔将軍1体、A級高位悪魔2体でスリーマンセルとします。
これを3つと小隊長のSS級悪魔君主1体の計10体で1小隊です。
それら全てがA+級のグリフォンに騎乗しています。
これら全10小隊が私の指揮下にあります。
当然ながら一本だたらによって兵装と擬装は完璧に整えられています。
特に突撃槍は稀少級で揃えられており、見た目も圧巻です。
宝箱を開けまくって余裕が出来たら随時アダマンタイト製に置き換えると言うから恐ろしいものです。
アダマンタイトは硬度だけならオリハルコンを凌ぎます。
鉄のフルプレートアーマー程度ならひと突きで大穴を開けることでしょう。
私の評価ではありますが、1小隊だけでアリストロメリアの街を陥落せしめることが可能だと思います。
もちろん夜行の皆が防衛に参加しないことが条件ですが。
そんな過剰戦力を率いて各地の秘境や無人島を探索します。
そしてマスターの支配下にある100を越えるダンジョンは相互に転移可能です。
これを利用して距離に関わらず効率的に探索を進めています。
「デモンズワンより大隊長へ。
規模3,000から3,500のゴブリンの集落を発見。」
殲滅は可能でしょうが取り零しそうですね。
「大隊長よりデモンズワンへ。
デモンズツーと合流してこれを殲滅せよ。
極力取り零さないよう、特にジェネラル級以上は確実に始末せよ。」
「デモンズワン了解。至急デモンズツーと合流します。」
正直、ゴブリン程度が何千いたところでレベル70に至ったマスター達には満足いく経験値ではありません。
ですがコツコツと稼ぐのが我々の役目でしょう。
「デモンズエイトより大隊長へ。
手付かずと思われる古代文明の遺跡とおぼしきものを発見。」
「大隊長よりデモンズエイトへ。
危険の度合いを調査せよ。」
「遺物探索の必要はありませんか?」
「状況維持に努めよ。」
「デモンズエイト了解。状況を維持しつつ調査します。」
手付かずの遺跡をデモンズ達に探索をさせるなんてとんでもない。
ここは是非ともマイマスター直々に調査していただくべきでしょう。
「デモンズセブンより大隊長へ。
龍の巣を発見しました。」
竜種ならば場合によっては殲滅させてもよかったのですが、龍種ならば話は変わります。
こちらもマスター案件ですね。今日は豊作です。
「大隊長よりデモンズセブンへ。
龍の種別は判別可能ですか?」
「100mを越える白銀色の蛇のような姿です。現在は眠っているように見受けられます。」
『銀龍』の特徴と一致しますね。
今のマスターでは命懸けになることは間違いないでしょう。
「直ちに待避せよ。」
「デモンズセブン了解。直ちに待避します。」
しばらくは塩漬けにすべき案件でしょうね。
百々目鬼様のレベルが100に至ればあるいは・・・
「デモンズナインより大隊長へ。
規模1,000程のドワーフの集落を発見しました。殲滅しますか?」
「大隊長よりデモンズナインへ。交戦は許可しない。
詳細な位置と配置を地図に記入して離脱せよ。」
「デモンズナイン了解。調査後に離脱します。」
人族との交戦は許可しないと伝えているにも関わらず、この連中は隙あらば戦おうとします。
デーモンの性なのでしょうか。
各地の探索は順調ですが、最優先目標はマスターが腰を下ろすに相応しい土地を見つけることです。
アリストロメリアはマスターが永住するには小さすぎます。
転移が可能となった今ではダンジョンが近くにあれば動線を気にする必要がないので、秘境と呼ばれるような奥地でも構いません。
いえ、むしろ人族の国と隣接しないほうが都合がいいでしょう。
そうなるとやはり、ある程度の大きさの島があればいいのですが・・・それだとダンジョンがありませんか。
いや、悪魔に転移陣を設置させる?一応、可能ですね。
マスター向けのイベントは用意できましたし、海の探索に重点を置きましょう。
「大隊長よりデモンズツー、デモンズスリー、デモンズフォー、デモンズファイブへ。
探索区域を変更する。東西南北に別れて島を捜索せよ。」
「デモンズツーより大隊長へ。東へ向かいます。」
「デモンズスリーより大隊長へ。南へ向かいます。」
「デモンズフォーより大隊長へ。西へ向かいます。」
「デモンズファイブより大隊長へ。北へ向かいます。」
北と南が寒冷地だったらまた修正しましょう。
『モイラ』の衛星にアクセスできれば簡単な話だったのですが、思いの外に防御が固くて未だに突破できていません。
私の目もマスターを中心にしか届きませんし、なかなか思うようにはいかないものです。
せめてデーモンの視界を共有できればよいのですが。
無い物ねだりをしても仕方ありませんね。
粛々とできることを進めましょう。
おや、マイマスターがお目覚めになったようです。
最近は妖精達がマスターの寝室に押し掛けているようですが、安眠を妨げないよう一度喚起すべきですかね。
座敷童子とマスターが仲良く眠る姿を想像しつつ、通常任務に戻りましょう。
それでは今回はこのあたりで失礼いたします。
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『マリーとキヌ』side マリー
私はマリー。
妖精郷の元第一王女よ。
ま、今は反逆者としての裁きを受けているところですけれど。
私は妖精郷の未来を憂いて愛する女王からその地位を奪おうとしたましたの。
母が主神にエーテルを捧げるよう強要されていたと知って驚愕すると同時に
私は愚かだったのだと今では思いますわ。
きっと私が頼りないばかりに、母は私に真実を教えてくれなかったのでしょうから。
もしも私が女王の右腕として務めることができていたなら。
私は正式にアリちゃむに協力を要請していたかしら。
いえ、私は迷宮妖精からエーテルを得ることを当たり前のことだと思っていましたわ。
やはり結果は変わらなかったかもしれませんわね。
一体私はどうやったらこの現実を回避できたのかしら。
どうやったらこんなポンコツな相棒と組まされずに済んだのかしら。
「ねえ、一反木綿。
上からの不意打ちでも失敗したのに何故正面からいけると思ったのかしら。」
「妖精によそ見ばしよーごと見えたとよ。したらつい、いくるて思うてしもうたんよね。」
私の相棒にはある課題を出されていますの。
それはどのような形でもいいから軍曹殿に一発当てること。
「貴女は異能で他者の衣服を操ることができるのでしょう?
それを使ったらよいのではなくて?」
「いやー、何もせんでんいくるて思うてしもうたんよね。」
私には一反木綿の思考が全く理解できませんの。
それは恐らく一反木綿も同じで、私の考えることを理解できないのではないかしら。
これではバディを組む意味がないのでは?
「おまえ達は本当に腕立てが好きだな?今日はこれで何回だ?」
「200であります!」
「160だ阿呆。希望通り40回追加してやろう。腕立てよーい!」
「なして!?」
「ところでエリー。」
「イエス、マム!」
「お前はわかっていたのではないか?」
「イエス、マム!」
「返事だけは元気一杯だな?
なるほど、やはり腕立てが好きだから何も言わなかったんだな。」
「ノー、マム!」
「はっはっは。そう遠慮するな。20回追加だ。嬉しいだろう?」
「イ、イエス、マム!」
ここでノーと言えばこの鬼軍曹は絶対に追加しますわ。
「小賢いんだよな、お前は。別に悪いことじゃないぞ?
何故その小賢しさを上手く使わんのだ。
まあ、貴様らのような組み合わせはよく陥るんだが、もう一度互いを見つめ直してみろ。」
「「イエス、マム!」」
ーーーーー
ーーー
ー
腕がもげそうですの。
こんなことなら以前から運動しておくべきだったと心底悔やまれますわ。
そんなことより軍曹殿は明確なヒントをくれました。
小賢しさを有効に利用しろ。
お互いを見つめ直せ。
どういうことかしら?
先ほど一反木綿が今日やった腕立ての回数を訪ねられた時、私が答えるべきだった?
いや、それだとまた難癖つけられて結局・・・
一反木綿を誘導すればよかったのではないかしら?
でもどうやって?そんな時間はなかったわ。
「あ。」
根本が間違っていたのかもしれないわね。
私がやるべき事は一反木綿に同じ過ちを繰り返させないことではなくて?
あの鬼軍曹は明日も同じ罠を仕掛けてくるはずよ。
なるほど、私の小賢しさを一反木綿にも共有しろと言うことですのね。
でもそれだけだと詰まらないですわ。
どうせなら軍曹殿に一発入れるよう誘導できないかしら。
あのアホの子に難しいことはできないでしょうから、シンプルかつ高精度な作戦が好ましいのですけど・・・
ーーーーー
ーーー
ー
翌日。
一反木綿に作戦の概要を伝えましたの。
「よかばい。やっちゃろう。一緒に一泡吹かしちゃるけんね!」
こうしてみると根は素直でいい子ですのよ。
怒りっぽいけど、いつもポジティブだし、異能が搦め手一杯なのに性格がド直球ですし。
一反木綿の性格を考察していると軍曹殿の後ろ姿が見えましたの。
軍曹殿は恐らく直感系の異能をお持ちなのでしょう。
単純な不意打ち通用しませんの。
かといって難しいことは一反木綿には難しいですわ。
それなら私がそこをフォローすればいいのです。
「こいでも食らわんね!布縛術!」
不意打ちをする時は掛け声を掛けないように、とあとで注意するとして。
軍曹殿は衣服が支配されているにも関わらず、それがどうしたとばかりに強引に振り向きます。
「そん筋肉はどげんなっとっとね!布縛結界!」
一反木綿は手を緩めず、次々に布を召喚して軍曹殿を捕らえようとします。
数多の布を縦横無尽に操る器用さと集中力は大したものだと思います。
これまで一反木綿は幾度も軍曹殿を襲撃をしましたが、一度としてかすることすらできずに一方的に無力化されています。
このまま何もしなければ二の舞でしょうね。
これまでの襲撃で私は一度も手出しをしていません。
ですがそこはさすが軍曹殿と言うべきでしょう。
一反木綿の布を紙一重で回避し、ときに斬り伏せながらも私への意識は外しません。
ですが、一瞬だけならどうでしょう。
「キャアアアアアア!」
軍曹殿肩にしがみついていたエリーが叫びました。
軍曹殿の意識がエリーに向くと同時に『フェアリーサークル』でエリーの元に転移し、軍曹殿の目を見つめながら、二人がかりで全力で『催眠』を掛けます。
すると軍曹殿の目の焦点がずれ、ふらりと体を傾けました。
「今ですわ!一反木綿!」
「まかせんしゃい!雷撃!」
「あ、この馬k」
一反木綿を止める間も無く軍曹殿に雷撃が直撃しました。
そしてそれは。
「「あばっばばばばば。」」
「あわわ、マリー!今助けるけんね!」
もれなく私とエリーまで感電させるというお粗末な結果に終わりました。
さすがに加減はしてあったものの、妖精のひ弱さを侮って貰っては困りますわ。
「一反木綿、腕立て伏せ用意ですわ。」
「なして!?」
「なして、ではありませんの。危うく私もエリーも巻き添えで『一回休み』するところでしたわ。」
「ごめんしゃい。」
まあ、わざとではなく犠牲も無かったということで20回で勘弁して差し上げましたが。
そんなことより軍曹殿の治療、と思ったのですが何事もなかったかのようにむくりと起き上がりました。
「見事にしてやられたわ。まさかエリーを買収してくるとは。完全に慮外だった。」
「おかしいですわね。『催眠』の効果が切れるのが早すぎませんの?」
「我には状態異常の効果を短縮する異能がある。それだろうな。」
「なるほど、念のためエリーに手伝って貰って正解でしたの。」
「うむ。一反木綿とマリーの試験は合格とする。」
「私の試験ですの?」
「その通りだ。もう理解しているだろう?
理解しているならなぜ貴様には伏せられていたかがわかるはずだ。」
「一反木綿と協力、というか誘導することができるかでしょうか?」
「協力でも導くでも操るでもなんでもよい。
評価内容は『バディの実力を十全に発揮できる環境を作ること』だ。」
「なるほど、納得しましたわ。」
「おまえ達妖精は搦め手は多岐に渡るものの、決め手に欠ける。
よってバディを上手く使う術を身に付けろ。」
「イエス、マム!」
「そして一反木綿。」
「イエス、マム!」
「貴様は頭が足りんが、その素直さは美徳だ。
バディの言葉に耳を傾け、お前なりに何度も噛み砕いて理解しろ。」
「イエス、マム!」
「復唱せよ!」
「噛み砕いちゃるばい!」
「この阿呆が。腕立て伏せよーい!」
「なして!?」
こうしてマリーと一反木綿はなんとか中間試験を終えました。
軍曹殿は『バディの実力を十全に発揮できる環境を作ること』と仰いました。
もしも私がお母様を相手に・・・今さら詮ないことですわね。
ですが、次があれば私はきっとうまくやれますわ。
そして正直なところ不安しかありませんが、この憎めない相方と最後までやりきって見せます。
そして主様にクーデターの件をお許しいただけたのなら、残りの命を妖精郷のために捧げたいと思っていますの。
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『アシュリーとメメ』
私はアシュリー。B級冒険者だ。
今はシェリーと共に『教育』部門で鈴鹿御前の部下として働きながら妖達の知識を学んでいる。
冒険者時代には難しいことは全部シェリー投げっぱなしだったからな。
苦労してるぜ。
そういえばこれまで話す機会もなかったが、私は長剣使いだ。
初歩的な魔法も使えるので一応は魔法剣士とも言えるが、正直恥ずかしいレベルなので普段はソードマンで通っている。
「それで、私に話というのは?」
今日は珍しく主様に呼び出されたんだ。それが倉庫というのがよくわからんが。
「アシュリーか。新しい武具を用意した。獲物は長剣だけか?」
「基本は長剣と盾だな。」
「ついてきてくれ。」
「おう。」
倉庫の中には様々な装備品で溢れ返っていた。
「長剣は人気らしいからな。無くなる前に呼んだんだ。」
「気を遣って貰って悪いね。換え時だと思っていたから丁度いい。」
「そうか。いいタイミング・・・メメ?」
「よっ、メメ。」
通路を歩いているとメメが地面に座り込んで何やらやっていたんだが、ほんとに何だろうな?
「メメ、だよ?びっくり、した?」
「ああ。こんな所で何をしていたんだ?」
「うん、アシュリーの、装備、選んでた、よ?」
「何?メメには武具の目利きができるのか?」
「できない、よ?かっこいいの、なら、わかる、よ?」
「あはは。なら一緒に選んでくれよ。」
「うん、任せて、ね?」
「主様、構わないか?」
「ああ、好きなものを持っていってくれ。俺はシェリーを探してくる。
彼女にも用意せねばならんからな。」
「わかった。ありがたくそうさせてもらうよ。」
「また、ね?」
「ああ、またな。」
主様は踵を返して戻っていった。
「さて、長剣は10本か。」
正直言って剣の良し悪しは余りよくわからん。
長剣使いがそれでいいのかという言葉は甘んじて受け入れる。
私には結局、使い勝手がよければそれでいいんだよ。
「うわ、これ鉄じゃないよな?何でてきてるんだ?」
「綺麗、ね?」
「ほんとな。メメの顔が綺麗に映ってるよ。」
「うふふ、アシュリーの、顔も、ね?」
「そうだな。」
こんなほんわかした娘が戦場では死神のように猛威を振るうというから見た目はあてにならんもんだよな。
「軽っ!これなんて素手と変わらんよ。」
「こっちは、重い、よ?」
「どれどれ。・・・おお、ずっしり来るな。来すぎるな?
これ、まさかアダマンタイトじゃないよな。」
「あ、これ、魔力、感じる、ね?」
「え、まさか魔剣?」
剣の中には極稀に何らかの魔力を帯びている物があるんだ。
魔力を通すだけで剣に炎や雷が宿ったり、珍しいものでは自己修復する物まであるらしい。
もちろん実物を見たことはないよ。
魔剣というだけで最低でも英雄級なんだ。
英雄級なんてB級冒険者如きで持てる代物じゃないからな。
思わず唾を飲み込んで鞘に触れる。
抜かなくても、私にでも、わかる。こいつはやべー剣だ。
見たことのないような細かい鱗状の材質の鞘は銀色の糸で細かく細工されている。
それだけで美術品のようだった。
思いきって柄を握ると滑らかな赤子の柔肌に触れたかのように手のひらに吸い付く。
「抜いて、抜いて。」
「お、おう。」
メメは無邪気に言ってくれるが、正直なところ滅茶苦茶緊張してるよ。
ゆっくりと鞘から引き抜くと薄いクリーム色の刀身が姿を表した。
正直に言ってこいつが金属なのかどうかすらわからん。
見る目がない私を笑ってくれ。
「はは、メメの髪の色とそっくりだな?」
「名前、メメの剣に、しよう、ね?」
「そいつはいいな。だが私が持つにはその、腕が伴わんな。」
「メメの剣、アシュリーに、使って、欲しい、ね?」
「うーん、そう言ってくれるのは嬉しいんだが。」
「はい。アシュリーの、メメの剣、ね?」
メメはアシュリーに『メメの剣』をぐいぐい押し付けている。
「わ、わかった、わかった。
『メメの剣』に認めて貰えるように腕を上げればいいだけの話だな!」
「うん、うん。」
「じゃあ、あとは盾だが・・・」
メメは倉庫内に『目』を展開しているのだろう。
アシュリーの手を取り、メメは迷いない足取りで歩き出した。
しばらくそのまま付いていくと、メメはとある丸盾の前でアシュリーの手を離した。
そしてその盾をアシュリーに手渡す。
「なるほど、そういうことか。剣の色とそっくりだな?」
どうやら丸盾の材質も『メメの剣』同様の物らしい。
そのクリーム色は全く同じように見受けられた。
「『メメの盾』、ね。」
「よく見つけたなあ。重さも大きさも丁度いいな。うん、これにしよう。
『メメの剣』と『メメの盾』の『メメセット』だな?」
「うふふ。強そう、よ?」
「はは、剣と盾に負けないよう鍛え直さないとな。」
正直なところもて余すこと間違いなしだが、せいぜい腕を磨くとしようか。
鈴鹿御前の訓練に参加すべきかな・・・
いやでも色々と大切なものを失いそうだしな・・・
「よし、それじゃ戻ってクラに鑑定してもらおう。」
「うん。」
帰りはアシュリーがメメの手を取って戻った。
メメは嬉しそうに笑っていた。
「で、詳細を教えてほしいんだが。」
「そういうことなら私も一緒についていったほうがよかったんじゃない?」
「確かにそうだがもう決めてしまったよ。『メメの剣』と『メメの盾』だ。」
そう言ってクラの前に剣と盾を置くと、クラの目が大きく広がる。
「え、嘘でしょ。」
「うん?何か問題が?」
「いや、ちょっと待ってね。なんかおかしい。詳しく見てみるよ。」
「お、おう。」
クラは剣と盾を手に取り真剣な表情で鑑定している。
メメは何か愉快なことが起こりそうな予感がして目を輝かせている。
アシュリーはメメの期待どおりにならないといいなあと思った。
「えーっと、これ、正式名称が『メメの剣』と『メメの盾』になっちゃった。」
「は?そんなことがあるのか?」
「やったー!」
メメは珍しく大きな声を出してぴょんぴょんしている。
「うーん、わかんない。メメが名前をつけたんだよね?」
「ああ、間違いない。」
「じゃあ、当然その前には名前がなかったはずなんだ。」
「そりゃそうだよな。」
「でもそんなアイテム見たことないんだよね。そして聞いたこともないね。」
「私もないな。」
「レミィ、いるかな?」
「イエス、倉ぼっこ様。こちらでも調査しましたが該当ありません。
やはり等級は唯一級でしょうか?」
「そうだね。しかも鑑定内容に『セット装備』って書いてあるんだけど、これはわかる?」
「セット装備の効果がある装備を同時に着用することで、互いに共鳴して効果が上がります。
伝説級以上の装備で稀にあるようですね。」
「一度整理しよう。剣の名称は『メメの剣』等級は『唯一級』だね。
刃の材質は竜喰らいの龍だね。効果は竜特効で、魔力を込めると生命力と魔力を吸収できるみたい。」
「ぶふぉっ。龍て。」
アシュリーは吹き出した。
メメはそんなアシュリーを見て目をキラキラと輝かせている。
「そして盾も材質までは同じ。効果は所有者への竜の攻撃を激減させて、魔力を込めると息吹を無効化する結界を張るみたい。」
「・・・」
「ちなみに激減というのは75%を無効化します。」
「フォローありがと、レミィ。これにセット効果が乗ったらどうなるんだろうね?」
「全ての効果が上がります。」
「あれ?メメはどこ行った?」
「あ、戻ってきたよ。」
メメはキラキラと目を輝かせながら手を広げた。
メメの手のひらにあるネックレスの色を見てアシュリーの口許は痙攣した。
「クラ、これも、ね?」
「ちょっと待ってね。えーと・・・うん、『メメの首飾り』だね。
やっぱり等級は『唯一級』で材質は竜喰らいの龍だよ。
効果は・・・うへぇ、敵対する竜に状態異常『恐怖』を確定で与えて全能力を中程度減少させるんだって。で、魔力を込めると一体だけ竜を隷属させることができるね。クールタイムは一年だよ。
おめでと、今日からドラゴンスレイヤーとドラゴンライダーだね。」
アシュリーはこのままでは竜と戦さわれかねないことに震えた。
「待て!ちょっと落ち着くべきだ!まだ慌てる時間じゃない。」
「うん。アシュリー以外、落ち着いてるから大丈夫だよ。」
「えっと、一旦この装備は返却すべきではないか?」
「・・・」
メメはアシュリー袖を引き、悲しそうな瞳で見つめた。
「ぐっ・・・では、そうだ!主様には内緒n」
「主様、伝言、きた、よ?
迷宮に、来い、すぐ、ね?」
メメの根回しは早かった。
「いーやーだー!竜なんて戦うものじゃないから!
戦うって発想そのものがおかしいから!」
至極まっとうな現地人の叫びは黙殺され、業を煮やした当主代行が直々に連行してしまった。
それ以来、彼女は地下の倉庫に行くことを怖がったという。
後日、王国にドラゴンスレイヤーとドラゴンライダーの称号を持つS級冒険者が誕生する。
彼女はその剣と盾と同様のクリーム色の美しい竜に騎乗し、主のために東奔西走した。
冒険者ギルドからの竜に関する依頼達成率は生涯100%であり、やがてSS級にまで到達したという。
そしてアシュリーの相棒は明日は我が身かもしれないと震えた。
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しばらく更新を停止します >_(:3」∠)_
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