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モイラ編幕間03-02『マイマイと三つ首』『スライムクッキング』『バティムの冒険』

『マイマイと三つ首』 side マイマイ


これは舞首(マイマイ)が主様に招聘されるよりちょっと前のお話だよ。

マイマイが主人公なんだからね?






幻妖界にて。


マイマイは彩葉(いろは)様から呼び出しを受けたんだ。

主様の件って言うからスキップしながら向かったんだけど、酷い事に詐欺だったよ。

オッサン詐欺ってやつ。


彩葉(いろは)様の隣には落武者みたいな髭面のオッサン立ってたんだけどね。


「やほー、彩葉(いろは)様。なにこのオッサン、新手の妖?」

「マイマイは相変わらずね。こちらは将門公よ。」

「我は将門じゃ。」

「マイマイだよ。」


「こちらの将門公から依頼があってね。

内容は『モイラ』で活動する事なんだけど、マイマイが伊織から招聘される時に一緒に連れて行って欲しいのよ。」

「え?自殺志願者なの?」


マイマイは首を亜空間に保管して使役するオンリーワンな妖なんだよ。

逆に言えば首でしか保管できないんだけどね。


「そこは心配いらないわ。将門公の首と契約してくれればいいのよ。」


そう言いながら、彩葉(いろは)は古臭い首桶を取り出したんだけど、これがまあ酷いんだ。


「うわ、すんごい瘴気なんだけど。

そゆこと。この首が髭のオッサンの本体ね。」

「そりゃあ三大怨霊と呼ばれた方ですもの。」

「話はわかったけどお断りだよ。何が悲しくてオッサンと契約しないといけないのよ。

どうせマイマイにセクハラしたいんでしょ?」

「・・・本当にこの頭の緩い女しか居らんのか?」


「残念ながら。」

「マイマイ頭が緩いなんて、首の分際で失礼しちゃうわね。

マイマイは首の女王様なんだからね。敬わないと支配しちゃうんだから。」

「そうね、支配しちゃおう。」


「では、共に我々も連れて行って貰おう。」


なんかまたオッサンが沸いたんですけど。

しかもなんで仲良く首桶を持ってんのよ。

マイマイ嫌な予感しかしないんですけど。


「俺は道真だ。」

「ほほほ、讃岐院でおじゃる。」

「まさかの三大怨霊揃い踏みですか。」

「お相撲さんじゃないんだから、もう少しこう、おどろおどろしくしたらどうなの?」


「そちらのほうが好みであったか。どれ、少々本気で呪ってやろう。」

「お戯れを。」


「結局、お前らも来たのか。」

「結局我らは同じ穴の狢よ。もう飽いた。未知を体験したいのだ。」

「ほほほ、仲良くして欲しいでおじゃる。」


「・・・という事らしいわ。悪いけどまとめて引き取って?」

「おことわ・・・うん?ちょっと待って。

マイマイ、ドラゴンの首が欲しい。

手伝ってくれるならいいよ。」


「いいだろう。(頭の緩い女などどうとでもなるわい)」

「構わんよ。(どうとでも言いくるめてくれよう)」

「よきよき。(なし崩しになんとかなるでおじゃろ)」


「ねえ、オッサン達ほんとに戦えるん?」

「無論、闘争こそが我が望みよ。」

「妖術と魔法を少々。」

「麿は妖術と呪術であるな。」


「じゃー、向こうでかわいい首と契約するまでこき使ってやるんだから。」

「お礼に麿から祝福を授けよう。ほれ、お二方もお礼ぐらいすべきであろ?」

「麿はいいオッサンなんだね。髭は怖いオッサン。イケオジは胡散臭いオッサン。」


なんかよくわかんマイけど、マイマイは貰えるものは貰う主義ですから。


「散々な言われようだな。」

「ふふ。明け透けでよい。」

「ほほほ、いかにもいかにも。麿は良いオッサンであるぞ。」


「そいじゃちょっと、何ができるか実際に見せてよ。

彩葉(いろは)様、大蝦蟇沼(おおがまぬま)行ってくんね。」

「はいはい。絶対に干上がらせちゃ駄目だからね。」

「いやいや、そんな大層なもんじゃないっしょ。

あ、首桶担ぐの重いし、ここで契約しちゃお。いいよね?」


「まっこと(せわ)しい女子(おなご)じゃな。」

「無論、構わんよ。」

「楽しみじゃな。」


こんな感じでマイマイと三つ首の冒険はゆるーく始まったよ。

までも割と愉快な三人組だからね。退屈はしマイかな。

オッサンだけど。


そんじゃ、あっち(モイラ)でもマイマイの活躍にご注目だよ?






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

『スライムクッキング』side 村雨


妾は妖刀村雨。断じて幼刀ではないのじゃ。

あれは迷宮に初めて潜った日の事であったな。


妾はスライムを見た瞬間、びびっと来たのじゃ。

これは美味い違いないと。

だってゼリーじゃろ?不味い訳がないのじゃ。


「という訳でうまく調理するのじゃ。」

「こりゃまた無茶言ってくれるぜ。」


このお洒落なコック帽を被った髭面は妾にいつもお菓子をくれる良い奴じゃ。


「ゼリーなんじゃから美味いじゃろ?」

「まー、試してもいいがよ。臭みが取れるとは思えねーがな。」

「左様か。プロが言うんじゃからそうなんじゃろうな。

まあよい。試してみるのじゃ。」


そうこうして出来たのは色鮮やかなゼリーだったのじゃ。

かつて『倉』で伊織達と一緒に食べたのが懐かしいの。

確かあれも緑色じゃったな。目の前のやつと同じような色なのじゃ。

きっとメロン味に違いないのじゃ。

どれ一口いってみようではないか。

ぱくり。


「まーっ!不味いのじゃ!ぺっぺっ。

うぬー。飲み込んでしもうたのじゃ。」

「だから言っただろう?どうやっても青臭いのが取れねーんだよな。」


「うーむ、こんなに綺麗なのにの。実に惜しいのじゃ。

あ、そうじゃ!伊織に食わすのじゃ。

妾だけが酷い目に遭うなぞ納得ゆかぬ。」

「おいおい、また尻を叩かれて泣かされるんじゃねーのか?」


「今度こそ逃げ切って見せるのじゃ!」

「俺は止めたからな?知らねーぞ?」

「にゃはは。同胞(とも)を売るような真似はせぬ。安心せよ。」

「まあ、せめて上手く逃げれるよう祈ってやるよ。」






10分後。

尻が割れるほど叩かれたのじゃ。あのサディストめ。

いつも逃げ切れたと思った瞬間、よくわからんままに捕獲されてしまうんじゃよな。

まあよい、次は何を食わせてやろうかの。




ーーーーー

ーーー




side おしゃれ帽のコックさん


「んで、あんたが来たってことは嬢ちゃんは取っ捕まった訳か。

あ?俺も連帯責任だから食えって?おいおい、そりゃねーぜ。」


まさかとばっちりに巻き込まれるとは思ってなかったぜ。

こんな事になるならちゃんと止めとくんだったな。


「まあ、毒じゃねーんだ。腹を壊さなきゃどーってこたあねえ。」


んで差し出されたスライムゼリーを口に入れたんだがよ。


「うおっ!臭くねえ!」


全く(・・)味がしねーんだ。

当然、全く生臭い匂いもしねえ。


「ど、どうなってんだこれは!」


菓子業界に革命が起きるとピンと来たね。

いや、菓子に限らんな。

一般的な料理にでもいくらでも使い道が思い付くってもんだ。


「消臭結界の応用?

よくわからんが量産できるのか?

絶体売れるぞこれ。」


どうやら無属性魔法の適性が必要らしい。

そして幸運な事に俺は適性がある。

というか無属性にしか適正がないんだがな。

料理人には火か水に適正があればひっぱりだこなんだがよ。

まさか持ち腐れしてた無属性が役に立つ日が来るとは、わからねーもんだ。


「ほう。あの嬢ちゃんに習得させんのか。そりゃあいい。」


坊主が言うには嬢ちゃんに覚えさせるからそれを習えってよ。

ついでに色々とレシピを教えてくれたぜ。

特許を取る前に特別にだってよ。

坊主は失礼だな。坊っちゃんでいいか?


ついでに余ったスライムも一瞬で加工してくれたんだよ。

だったやるしかねぇだろう。

腐らせる訳にはいかねぇ。

俺は夜を徹して坊っちゃんがくれたレシピ再現し続けたぜ。


砂糖を大量に使うのが難点ではあるが、この大発見の前には些事だ。

オーナーにちょっと泣いて貰えばいいだけの話よ。

・・・砂糖はクソ高けぇからな。






数年後。

この日の伊織の気紛れは後に料理業界に革命を(もたら)す。

そして使い道が一切無かったスライムゼリーが寒天のように使われる事で需要と供給の増加スパイラルが発生し、アリストロメリアの街が特需に沸くこととなる。

領主は左団扇を仰ぎ、エレオノーレ(ギルマス)は首を捻り、伊織は懐が潤う。

だが最も大きな名声を手にしたのは無名のコックさんだったという。






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

『バティムの冒険』side バティム


私はソロモン72柱序列第18位上級悪魔(グレーターデーモン)バティムです。

千年以上この肩書きを使ってきましたが、今後は主様の(しもべ)を名乗るべきですかね?

まぁ、我が主はそのような些事については気にも留めないでしょうが。


さて、私が主様より賜ったのはとある老婆とその孫の護衛です。

そして二人に害をなす者達の全滅(・・)

逃がす事は許されません。

よって今は護衛しつつ対象の人数を絞り混んでいる所でしたが。


「ふむ、233名ですか。思ったよりも随分と多いですね。」


配下(デーモン)の報告によると『チゴエ商会』なる奴隷商が関わっているようです。

内訳は『チゴエ商会47名』と『闇ギルド183名』と『繋ぎ3名』ですね。

全員かこの件に関わっている訳ではないのでしょうが私には関係のない話です。

箱の中のリンゴが腐っていたなら箱ごと捨てるのが道理でありましょう?


「まずは護衛を除く全戦力で『闇ギルド』とやらを急襲します。

『マーキング』は済ませているのでこの時点での取り零しは許されますが、後々面倒なので極力削りなさい。」


私は対象に『烙印』を付ける異能を所有しています。

すでに対象の全てに対して設定してあるので、私が死なない限りは何処に逃げようとも奴らの全滅は確定しています。

いや、魔法が発達した世界ならば『烙印』を解除する方法があってもおかしくありませんね。

油断による失敗など断じて許されません。


「やはり一匹たりとも逃がしてはなりません。

地獄の焔に永劫焼かれたくなければ完遂しなさい。」


私はデーモン達に恐れられているという自覚があります。

ですが違うのですよ。

わたしは()れられてはいないのです。

私が心の底から畏怖する主様とは根本から違うのです。


そうして襲撃は始まりました。

残念ながらその場で全滅とはいきませんでしたが、粛々と追撃を続けて数日後には全滅させました。

闇ギルドとやらが蓄えていた財貨と財宝は全て主様に献上するとしましょう。

ほんの僅かでも心証が良くなるに越した事はありませんから。


次は『繋ぎ』と『チゴエ商会』を襲撃しました。

「金は全てくれてやるから命だけは助けてくれ。」

などと噴飯ものの戯れ言を言っていましたね。

命も財貨も全て奪うに決まっているでしょう。

少し考えればわかりそうなものですが。人間とは不思議なものですね。

おっと、ここでは人間ではなく人族というのでしたか、これは失敬。


ともあれこちらの商会からも根こそぎ回収しましたが、襲撃よりも回収に苦労するとは思いませんでした。

命を失えば財貨を伴うことなどできません。

なぜ一生分で使える分以上に溜め込むのでしょうね。

本当に人族は欲深いものだとしみじみ感じます。


「さて、『チゴエ商会』、『闇ギルド』、『繋ぎ』の全てが全滅しました。

貴方方中級悪魔(デーモン)100体、下級悪魔(レッサーデーモン)200体の活躍は主様にも報告しておきましょう。

誇りなさい。」


配下達を送還して護衛対象の元に出向いての交渉を済ませました。

主様のお望み通りに老婆と、おまけにその孫も引き入れることに成功し、ようやく終わったと私は安堵しました。


おっと、まだ終わっていませんね。

二人を主様の元へと届けるまでが任務です。

全部送還してしまいましたが、念のため護衛を再召還するとしましょう。

今からアリストロメリアに向かうとなると、到着する頃には主様の居城が完成しているでしょう。

入手した財宝はそのお祝品として認められればよいのですが。

領主の屋敷でも襲撃して追加すべきでしょうか。

まあ、しばらく時間はあります。もう少し考えるとしましょう。




ーーーーー

ーーー




side 伊織


新たな拠点でバティムからの報告を受けた伊織は彼を労い、褒美を与えた。

自由に部下を増やしていいという褒美がよほど嬉しかったらしく、バティムは嬉々として送還されていった。


「しかし、やはり悪魔の価値観は人の価値観は相容れんものだと痛感したよ。」

「イエス、マイマスター。今回の件では特に浮き彫りになりましたね。」

「人間の欲望が悪魔に理解されないのはシュールすぎて逆に笑えたがな。」

「チゴエ商会は少々特殊ではありますが。」


「まあそれも人の一面であると認めざるを得ないがな。

しかし、平然と領主を襲撃しようと画策するのには困ったものだな。」

「・・・主人に似たのかもしれませんよ?」

「これは手厳しい。」


「仮にバティムが領主を襲撃したとして、マスターはバティムを処分しますか?」

「・・・いや、せんだろうな。」

「マスターが天を仰いで嘆く姿は想像できますが、バティム処断する姿は想像できません。」

「俺は甘いか?レミィ。」


「甘いということは全くありません。むしろ自他ともに対して非常にストイックであると思います。

マスターはバティムの思考を理解できるのではありませんか?」

「なるほど。そうかもしれんな。だから似ていると言ったのか。」

「僭越ではありますが。」


「いや、モイラ降りてからというもの、自己の変容については正直なところ把握しきれていない。

レミィの客観的な評価は非常に参考になるよ。」

「どうか私だけでなく皆様のお言葉にも耳を傾けて下さい。」

「忠言、痛み入る。よく言ってくれた。」






そうして伊織は本人の意図する所ではなく、アリストロメリアの街の大きな闇を二つ消し去った。

それが光に変わるのか、それとも新たな闇へと繋がるのかは伊織にはわからないし、興味もない。

このあたりがレミィから悪魔に通ずると指摘されたのかもしれない。


ともあれ伊織にとってはコリンナ師とその孫を迎え入れる事が叶った事実こそが重要だった。

今後、コリンナ師は魔法の指導員として続々と呼び寄せられる妖達にその叡智を授ける事となる。

そしてその孫娘もまたコリンナ師を善く支えたという。

______

ちゃむだよ? >_(:3」∠)_

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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