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モイラ編02-13『おかわり・終』

伊織が火車(ロク)から降りるのと門番が動き出したのは同時だった。


「身分証を提示しろ。」


ぶっきらぼうに言い放つがたい(・・・)のいい門番は威圧的だ。

そのほうが面倒が少ないという処世術なのかもしれない。

こちらとしても面倒は少ないに限るので、身分証と一緒に然り気無くアイリスのギルドマスターからの紹介状を添えてみることにした。

見せるだけならば構わんだろう、というのが伊織の言い分だった。


「ギルマスの紹介状か。印も間違いないな。

通ってよし。速やかに入場しろ。」

「わかった。」


質問どころか荷物検査までスルーできるとは思わなかったが、アイリスのギルドマスターには感謝すべきだろう。

一行は3日を経て領都『アルストロメリア』へと踏み入った。


火車(ロク)を西区へ向けて歩かせながら御者台から街並みを眺める。

アイリスの町は平屋が多かったが、アルストロメリアでは半数ほどが二階建てだ。

色や造形こそ不均一ではあるが大振りなレンガを積み上げた無骨な家や、真新しいカジュアルな雰囲気の店もあり、大きな街に来たことを改めて実感できる。

ふと見た店の前に『アイリス』が咲いているのを見たときは少し微妙な気分になったが。


『ここから西区』と書かれた標識の下を潜り、周囲を見渡す。


『情報屋』


薄汚い看板に書かれた流麗な文字が妙に目についた。

看板の側にはフードを目深(まぶか)に被った人影がひっそりと(うずくま)っている。

なんとなく興味を惹かれた伊織は火車(ロク)を脇に寄せて御者台から飛び降りる。


「情報が欲しい。」


端的に言ってまずは様子を見る。


「何が知りたい。」


小さな声は意外にも女のそれだった。


「まず宿だな。ここらで馬車で入れる上級宿をいくつか知りたい。」

「前金、銅貨15枚(150円)。」


静かな声色に従い、伊織は素直に前金を手渡した。


「まいどあり。

この大通りを真っ直ぐ進んで2つ目の交差点を右へ。

突き当たりに高級宿が立ち並んでいる。

好みの宿を探すといい。選り取り見取りだ。」


なるほど。安いのも納得の理由だっだ。


「君は『戦狼団』のメンバーか?」

「違う。これは無料でいい。」


端的ながらも以外と律儀な言葉に伊織は興味を深めた。


「ではスラム入り口にあるという奴らの拠点の位置を教えてくれ。」

「その前にひとつ質問だ。あんたと奴らの関係は?」

「捕食者と被捕食者だ。」

「・・・料金はいらない。だからもう少し詳しく聞きたい。」


意外に思いもしたが、別に隠すことでもない。

伊織はありのままを言うことにした。


「先日やつらの(ねぐら)を2つ掃除(・・)した。次で最後の仕事だ。」

「嘘かどうかはすぐにわかる、か。」

「別に情報料を払ってもいいぞ?」

「いや、この仕事に嘘と前言撤回は許されない。

それにスラムの勢力図が大きく塗り変わるんだ。

貴重な情報を感謝する。」


「そうか。満足いったならいいんだが。」

「大通りを真っ直ぐ進んで4つ目の交差点を左折。

1kmほど先を再度左折。趣味の悪い看板に『戦狼団』とでかでかと書いてあるからすぐわかる。

突き当たりの三叉路を右折。

直進するとスラムへの入り口のひとつに着く。

そこにある木造二階建ての黒塗りのボロ家だ。

付近に二階建ての建物はない。」


「それなりに派手にやってたのか。」

「『戦狼団』の情報は必要か?」

「特に不要だな。()(いぶ)すだけだ。」

「そうか。終わりか?」


返答を予想していたのか、情報屋はあっさりと引き下がった。


「貴族の情報は手に入るか?」

「確実には取れない。相手による。時間がかかる。高い。

よってお勧めはしない。」


「ウォルナット伯爵について手に入る限りの情報だとどうだ?」

「俺が知る一般的な情報なら前金で銀貨2枚(2,000円)。

30日間の調査請け負いなら危険手当て込みで前金で金貨5枚(500,000円)、成功報酬金貨5枚(500,000円)だ。

他にも人を入れるから高くつく。」


伊織は銀貨2枚を手渡した。

まずは銀貨2枚払わせてその情報の出来次第で追加を検討させる。

よく考えられてる、と伊織はその手口を評価しつつ、素直にその思惑に乗ることにした。


「まいどあり。

ところであんた異国の人のようだが、バーンガルド王国(このくに)には詳しいのか?」

「いや、ほとんど知らん。」


「だろうな。サービスで少し補足してやる。」

「助かる。」


「当然だがこの国は王制だ。

王族の下に貴族がいて上から順に『公爵』『侯爵』『辺境伯』『伯爵』『子爵』『男爵』『騎士爵』と続く。

さらに貴族は土地を持つか持たないかで大別される。

一般的に貴族と言われて思い浮かぶのは土地を持つ貴族だろう。

一方で土地を持たない、いわゆる『法衣貴族』というやつもいる。

他の貴族や王城などに詰めて仕事をする連中だ。

ウォルナット伯爵は前者で、ここ『アルストロメリア』の隣領の『ウォルナット』領を治める領主だ。」

「ほう、少し繋がったな。アルストロメリア辺境伯との関係は?」


「境界線近くに新たな鉄鉱山が発見されたんだ。山奥だがな。

当然その領有権で揉めに揉めたが、最終的にアルストロメリア辺境伯『8』、ウォルナット伯爵『2』の取り分で決まった。

費用諸々はアルストロメリア辺境伯が負担するらしいが勝敗は明らかだな。」

「なるほど、恨む動機はある訳だな。」


「これには裏がある。

バーンガルド王国の貴族は大きく分けて三つの派閥がある。

最大派閥は王族・公爵・法衣貴族を中心とした『王族派』だ。

次に大きいのがウォルナット伯爵が所属する『貴族派』だ。

余談だが両派閥の規模はある程度均衡を保っていて割と頻繁に逆転する。

それで最後がアルストロメリア辺境伯が所属する『中立派』だ。

以前は無派閥の寄せ集めという評判だったんだが、近年アルストロメリア辺境伯が力をつけてきたことから求心力が強まっている。

名実ともに御輿として担ぎ上げられている状態だな。

『王族派』と『貴族派』はバチバチの権力闘争に明け暮れている。

『貴族派』の台頭を嫌った『王族派』の支援もあって前述の鉱山の結果となった訳だ。」


「貴族派としてもアルストロメリア辺境伯に思うところがあるのか?」

「さあな、そこは完全に想像の域になる。コメントは控えよう。」


「ともあれ、鉱山で利を得ることと引き換えに余計な面倒を背負子(しょいこ)んだという感はあるな。」

「王族派が中立派を巻き込んだという見方もできるからな。」


「非常に有益な情報だった。感謝する。」

「料金分喋っただけだ。

あんたが伯爵に何をしようとしているのかは聞きたくもないが、察するに名前以上の情報はほぼないんだろう?」

「ないな。

とりあえず依頼は保留する。近日中に依頼をするかもしれんが、ここに居るのか?」


「日が出てる間なら大体は俺か弟がいる。」

「わかった。名前を聞いても?」


「ジェーンドゥだ。」

「・・・弟がジョンドゥなんて落ちはないよな。」


情報屋は勢いよく顔を上げた。

フードの奥から金髪のおさげ(・・・)が飛び出し、伊織を見る瞳は驚愕で見開いている。

想像した以上に色白で美しい顔立ちの人族だった。


「まさか当たりか?」

「お前・・・なんで・・・」

「自分で言っておいてなんだが、俺も驚いている。先に言っておくが敵意はないぞ。『地球』という言葉に聞き覚えは?」

「・・・ばあちゃんの出身だ。もう逝っちまったが。」


「そうか、悪いことを聞いたな。元同郷のよしみで冥福を祈らせてもらおう。」

「同郷・・・」

「髪の色から察するに、国は違っただろうがな。」

「『ステイツ』と言っていた。」


「そうか。俺は『日本』だ。一応、アメリカ、ステイツとは友好関係にあったな。

ああ、そういうことか。

偽名だからそう(・・)つけた訳だな?さすがに本名じゃないよな?」

「そういうことまでわかるんだな。」

「まあ、むこう(・・・)では割と知られている名前?だ。」


身元不明者に便宜上つけるような名前を子孫につけることはないだろう。普通は。

日本で言うところの『名無しの権兵衛』だ。


「しかし、驚いた。

ばあちゃんは同郷人に会ったことがないって言ってたが、あんた以外にも結構居るのか?」

「今は俺だけだろうと思っている。

俺は理由があってここ(モイラ)に呼ばれたんだ。

もし俺のような理由がなく転生なり転移なりすることがあるなら、他にも居るかもしれんが。」


「すまないな、色々と聞かせてもらって。

こちらが金を出さないといけないところだが。」

「構わんよ。俺も思いがけず面白い事実を知れたことを幸運に思う。」


「代金代わりではないがひとつ忠告を。

なるべくその事実は伏せた方がいい。

立場が上の人族は『異世界人』の有用性を知っている者がいる。

面倒ごとに巻き込まれかねないからな。

俺のばあちゃんもそれに嫌気がさして地下に潜ったって言ってたよ。」


「忠告感謝する。

俺は『イオリ・ヤコウ』だ。ここでは『伊織』と名乗っている。

また会うこともあるだろう。そのときは宜しくな。」

「ああ、この出会いに感謝を。」


伊織は思いがけない出会いに驚くと同時に一期一会の素晴らしさを噛み締めていた。

まあ、今後の展開次第では再会することもあるだろうが。

そして伊織の『勘』はそうなる可能性が高いと囁いていた。


伊織は火車(ロク)に目的地を告げ、御者台に乗り込むと先客がいた。


「また、違う、女と、お楽しみ、でした、ね?」

百々目鬼(メメ)、それは違う。俺にはお前だけだ。」

「うふふ、これ、すき。ね?」

「本当に座敷童子(アインたち)は碌でもないことしか教えないよな。」


幼い頃から幾度も繰り返された百々目鬼(メメ)の鉄板ネタだった。

本人が気に入っているなら、と付き合う伊織も伊織だが。


百々目鬼(メメ)と街の景観を楽しんでいると、すぐに宿屋が乱立する区画に到着した。

正直なところ伊織としてはどこでも構わないと思っていたのだが。

なんなら火車(かしゃ)泊でいいとすら。

だが複数のレディがいる以上、そうはいかないこと程度は理解していた。


百々目鬼(メメ)、好きな宿を選んでいいぞ。」

「お詫び?」

「そうだ。なるべく(・・・・)浮気しないと誓う。」

「じゃ、あそこ。」


どうやらごっこ(・・・)遊びはまだ続いていたらしい。


火車(ロク)、向かってくれ。」

「ブルルルゥ。」


ロクは演技派だった。

はたから見ると普通の馬にしか見えないだろう。


「なんであの宿にしたんだ?」

「私と、同じ、色、ね?」

「ああ、百々目鬼(メメ)の髪の色とそっくりだな。」

「一緒。」


薄く柔らかいクリーム色のレンガで造られた、少しポップな感じの建物だった。

庭先は広々としており、外壁代わりに綺麗に整えられたツツジが列をなしている。

所々に植えられた色鮮やか花々が大人しい建物の外観を際立たせているように見えた。

百々目鬼(メメ)も少し飾れば映えそうだな、などと思いながら火車(ロク)を待機させ、伊織は一人(・・)、扉を開いた。

扉に取り付けられたカウベルがカラン、と低く鳴る。


「『虹色の瞳亭』へようこそいらっしゃいました。

何名様でご利用でしょうか?」

「9名だ。」

「お部屋の内訳はいかが致しましょう。」


カウベルが鳴る。

誰が入ってきたかは概ね予想通りだった。


「1つじゃ!みんな仲良く大部屋じゃ!」

「村雨もたまには良いことを言いますが、他のお客様のご迷惑になりますのでお静かに。」

「メメ、主様、一緒、ね?」


鼻の利く連中に嗅ぎ付けられてしまった。

というよりも、伊織の周囲には必ず百々目鬼(メメ)の『目』が張り付いているから全て筒抜けなのだが。


「大部屋で一泊朝食付きとなりますと、お部屋の代金として馬車の保管料込みで銀貨30枚、9名様の朝食代金として銀貨9枚、合計銀貨39枚(39,000円)頂きますがよろしいですか?」

「ああ、とりあえずは一泊で。夕食はつけれるか?」

「夕食はお1人様につき銀貨1枚銅貨2枚ですので、9名様で銀貨10枚と銅貨80枚(10,800円)を別途でお願いしております。」

「それで頼む。」


「朝食は食堂でのバイキング形式です。夕食はお部屋までお持ちすることもできますが、いかが致しますか?」

「では持ってきてくれ。」


騒がしくする奴がいるから、とは口にしなかった。

沈黙は金である。


「連泊するときはまた伝える。」

「承りました。すぐに係の者がご案内致します。」


一行が通されたのは二階で最も大きな部屋だった。


「落ち着いた感じの可愛らしいお部屋ですねー。」

「ナナは気に入ったか?」

「はい。ちょっと庶民風な感じもして落ち着きます。先日の宿も特別感があって素晴らしかったのですが。」

「その感覚には同意できる。俺も畳の部屋が懐かしく思う。」


「たたみ?」

「ノノは見たこともないよな。草を編んで床に敷き詰めたもので、畳の上には素足で乗るんだ。

俺の故郷では自宅は土足禁止なんだよ。」

「へー、見てみたい。」

「いつか再現できたらネネにも見せてやろう。」


伊織の様子を伺っていた(サト)は心のTodoリストに赤ペンで『畳の再現』と大きく書き込んだ。


「では、皆は自由にしてくれ。さすがに初日から迷子にはなるなよ?」

「ならんのじゃ。」

「無論、わかっているとも。」

「なん・・・じゃと。ようやく伊織も妾が方向音痴ではないとわかってくれたか!」


「いや、お前は俺と出掛けるから断じて迷子になどさせん。」

「なんでいちいち落ち(・・)をつけようするんじゃ!」

「もちろん好きだからに決まっているだろう?」

「いじるのが好き、じゃろうが。」


「以心伝心を嬉しく思う。悪いが百々目鬼(メメ)と覚も同行してくれ。最後のおかわり(・・・・)だ。」

「承知しました。」

「うん。」

「一応、新居予定地だからな。下見希望者はついて来ても構わんぞ。

油断する訳ではないが、どうせ戦闘とよべるものにはならんだろうしな。」


結局全員がついて行くことになり、伊織は火車(ロク)を呼び出して乗り込んだ。

馬車の中には『戦狼団』の首領と副首領が仲良く転がされているが、一瞥することもなくスラム入口へと移動した。


程なく『戦狼団』とデカデカと書かれた趣味の悪い看板が見えてきた。


「メメ、索敵が終わったら人数を教えてくれ。

それにしても、盗賊ども(あいつら)はなんでこんなに堂々としてるんだ?」

「私も不思議に思って確認したところ、『戦狼団』は表向きにはスラムと街との繋ぎをつける組織のようです。裏の顔は『洞窟団』という名で活動していたようです。」

「それでも洞窟に根城があると触れて回ってる訳だな。

だがそういうことなら後始末は衛兵に任せるべきか?」

「お察しします。」


「・・・13。子供、別、2人。」

「そうか。纏めて麻痺させてくれ。」

「うん・・・おわった。」


「何度見ても手際が良すぎて恐ろしいのじゃ。」

「同感だ。だが百々目鬼(メメ)に頼りすぎないようにしないとな。」


「お、お姉さん、に、甘えて、ね?」

「6歳児に甘えるのもな。」

「メメ、436、歳、よ?」

「随分都合よく切り替えたな。たまには甘えさせてもらうよ。」


所々に転がる団員たちを尻目に、伊織はどんどん奥に侵入する。

睨み付けてくる者、パニック状態の者、怯える者。

全てを黙殺し、最奥の部屋にたどり着いた。

大体において大切な物は最奥に仕舞い込むものだ。


「えーと、このあたりのはずだが。」

「主様、ふたつ右の額縁の裏です。」

「さすがは(サト)だな。」


風景画らしきものを横にずらす(・・・)と壁にぽっかりと穴が空いており、中には大きな金貨袋と羊皮紙が入っていた。

ざっと目を通すと建物と土地の権利書で間違いないようだった。


「これを商業ギルドで書き換えて貰えばいいんだったな。」

「はい、すぐに向かいますか。」

「そうだな。ここは任せていいか?」


「勿論です。子供も衛兵に引き渡しますか?」

「ふむ、事情だけでも聞いてみるか。」

「御意にございます。」


(サト)自身は全く興味を持っていなかったが、主の言葉に異を唱える必要を認めなかった。

伊織は百々目鬼(メメ)に首から上の麻痺を解かせ、会話を試みる。


「お前達二人は『戦狼団』の構成員か?」

「・・・今日から入団予定だった。」

「そうか。それはこいつらが盗賊の一味と知ってのことか?」

「は?そんな訳がないだろう!『戦狼団』はスラムを救うんだ!」

「なるほど、面倒だ。首領に真実を語らせよう。」


喚く子供たちにさりげなく遮音結界を貼って抱えあげる。

そして無言のまま火車(ロク)のもとに戻って馬車の中へと入った。

子供達は中で転がる首領と副首領に目を丸くするが、伊織はそれを無視して首領に話しかけた。


「『洞窟団』とはなんだ?」

「盗賊団だ。」

「『戦狼団』との関係は?」

「『戦狼団』は表の顔で、『洞窟団』は裏の顔だ。」


伊織はここではじめて子供たちに視線を向ける。


「聞いての通りだ。それでも『戦狼団』に入るか?」


(もっと)も、入ったところですぐに消滅するのだが。

ともあれ、子供達は勢いよく顔を横に振っている。


「い、嫌だ。盗賊になんてなりたくねえ。」

「そうか、なら行っていいぞ。」


伊織の言葉に百々目鬼(メメ)は即座に麻痺を解く。

(サト)百々目鬼(メメ)に出し抜かれたと愕然とした。(一敗)


子供達は不思議そうにしながら手をニギニギしていたが、伊織達の視線で我に返り、転がるようにして逃げていった。


「では俺は首領を連れて商業ギルドで所有者移転の手続きをしてくる。

皆は衛兵を呼んでことの経緯を説明してくれ。ああ、副首領も置いていく。」

「畏まりました、主様。」

「また、ね?」


火車(ロク)が商業ギルドに着くと、そこは人々でごった返していた。

大通りの両脇にズラリと並んだ馬車の列や、背中に大きなバックパックを担いだ行商人による熱量が凄い。

そんな中を首領を伴った伊織が何食わぬ顔で歩いていた。

受付の女性を訪ねて建築物と土地の移転手続きをしたい旨を伝えると、手慣れた様子で手続きを進めてくれた。

想像した以上に簡単な手続きに『それでいいのか?』と訝しみもしたが、伊織はそれには特に触れることもなくギルドを後にした。

手数料の金貨1枚(100,000円)が高いのか安いのかよくわからなかったが。


そうして『戦狼団』のアジトに戻ると、その入口で(サト)と衛兵が何やら遣り取りを交わしているのが見えてくる。


「ことの経緯は以上です。」

「ではあとは首領が・・・あれか?」

「横から失礼する。こいつが『戦狼団』兼『洞窟団』の首領だ。確認してくれるか?」

「間違いないな。このまま引き取っても問題ないか?懸賞金については後日、商業ギルドの口座に振り込んでおく。」

「ああ、問題ない。寛大な処置を頼む。」

「うん?まあ、それを決めるのは俺ではないからな。」

「そうか、ならしょうがないな。」


伊織は「話が違う」と見苦しく喚く首領を気に止めることなく中へと入った。

当然とばかりに(サト)も続く。

首領との約束は果たした。

伊織にとってはその一点のみが重要で、結果には一切関心がなかったのだ。

______

ちゃむだよ? >_(:3」∠)_

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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