9. 思い出の1ページ
ミロと出会った時のことは覚えていない。
お互いの両親は俺たちが生まれる前から仲良しだったらしく、気づいた時にはすでにミロは隣にいた。
ミロは昔から綺麗な髪、瞳をしていて俺は父親から「将来はとんでもない美人になるから大事にしろよ」なんて揶揄われてた。今思えば、幼児の容姿を見て将来を想像する親父は少し気持ちが悪かったな。
ミロは昔から少し抜けてるところのある少女だった。
本人は自信満々に暮らしているようだったが、俺としては何度も首を傾げる場面があった。
例えば自信満々に蝶々を森の中まで追いかけていって、帰り道を覚えていると言ったのに迷ってしまったり。先生をお母さんと呼んでしまったり、と上げ出したらキリがないくらいだ。
確かにミロは抜けてるところが多いけれど、昔から裏表が無く男女問わず人気だった。
特に町のおじさんたちはミロにメロメロだった覚えがある。
そんなミロでも、いや、そんなミロだからこそ何度か友達と揉めたことがある。
あれは十歳頃だっただろうか。
学校で目立たない女の子と目立つ女の子がトラブってしまって、一時期目立たない女の子が可哀想な目に遭っていたのだ。
何で揉めていたのかは覚えていないが、あれは俺の記憶では目立たない子の方が正しかった記憶だ。
ミロは明るい子だったからどちらかというと目立つ子とよく一緒にいることが多かった。
だから目立つ子もミロは当然自分の味方をするだろうと思って、みんなの前でミロに意見を求めた。
けど、ミロは当時幼かったということもあり、空気を読まずに目立たない子の擁護をするような発言をしてしまった。当然のことのように何も悪びれる様子もなく。
俺の考えでも当然正しい方の味方をするべきだと思う。
けれど、女子社会はそんなに甘くなかった。
ミロはしばらくした後、目立つ女子とその取り巻きに囲まれてしまったのだ。
オドオドしたミロを見つけた俺はとにかく助けなきゃと思って、すぐさま「オラー!」と駆け出し、流石に暴力は振るわなかったが女子達を散々捲し立てた。
そうしたら目立つ女子が泣いてしまって、とてつもない雰囲気になってしまった。
そうしたら目立つ女子のボーイフレンドらしき大柄な男が俺の前に現れてきて──
色々遭ってその事件は解決したのだった。
ミロは正直な感性を持った人間である。
けれど、正直であることはそれゆえトラブルに巻き込まれることもある。
俺は隣でずっとミロの優しさに真っ直ぐさに触れていたい。
彼女が真っ直ぐでいられるように。