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花めく為に散る、  作者: 苫田 そう
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7. 失恋相談

 ダイニングには窓がないため、どのくらいの時を過ごしたかがわからなくなる。


 全員で酒を飲み、思い出話に花を咲かせ、時には夢を語らい、とても充実した時間を過ごすことができた。

 現在は解散して、一人で部屋に戻ったり、複数人でいたりと自由な時間を過ごしている。


 正確にはわからないが、体感ではもう日は周っているのではないかと感じる。


 俺はそのままダイニングに残り、クルトと会話をしていた。


 「水、持ってきたぞ」

 「ああ、ありがとう」


 キッチンの方でコップに水を注いでくれたクルトがダイニングへ運んできてくれる。


 水を飲んで酔いを少し覚ました後、本題に入る。


 「オマエ、ミロとのことどうすんだ」

 「どうするって言われてもねぇ……」

 「事情を知らない面々も含め、ロキウ以外全員多分オマエとミロに何かあったってことに気づいてるよ。幼馴染のオマエらの様子はここ最近ずっとおかしくて、さらにこの島に来てからも一、二言程度しか話してないだろ」


 俺が魔王と戦う前にミロに伝えたことはパーティメンバー全員が知っているわけじゃない。

 当事者であるミロ、それに俺からの相談を受けてるクルト、後は多分フレアも間違いなく知っているだろう。ミロから相談受けてそうだしな。


 クルトには俺がその事前事後に相談をしていた。


 「しかし、約二十年来の幼馴染に告白とはな。すごい勇気だ」

 「ぐっ……あんまり傷を抉らないでくれ」

 「ああ悪い、そんなつもりじゃなかったんだけどな」


 俺は魔王と戦う前にミロに告白、つまり幼馴染から恋仲になることを望んだ。


 「振られた人間は繊細なんだよ……」 


 ぐすん、と大袈裟に、やや本気で鼻を啜る。


 「いやいや、振られたわけじゃないだろ?だって『ごめーーーーーん!!!!』って言われて走って逃げられただけだろ?」

 「どう考えても振られてるんだが」


 今でもその時の光景を鮮明に思い出せる。

 勇気を振り絞って体を折りミロに手を差し伸べ、地面と睨み合いっこした十数秒間。そのドキドキを拭き飛ばす勢いでその場から駆け出して行ったミロ。辛すぎるぜ。


 「でもなんていうか、ずっと一緒に冒険してきたボクからすると、結構いい感じに見えたんだけどなオマエら。いつも二人だけ別世界って感じしてたし。それにミロの性格的に恋愛がよくわからなくて、慌てて駆け出しちゃったとかそんなんだと思うけどな」


 「いやいや、ただ逃げ出しただけじゃなくて、はっきり『ごめーーーーーん!!!!』って言われたんだぜ?断られてるんだよ」


 「そうとも限らない。『(なんか色々)ごめーーーーーん!!!!』とかそういう意味合いだと思うぞ」


 うんうんとクルトは腕を組んで勝手に一人で納得している。


 そう云う意味合いってどういう意味合いだよ……

 いやどういう意味合いでもごめんはごめんだろ……


 「まぁレオが今モヤモヤしてるのは振られたってところに関してだけじゃないだろ?」


 「そうなんだよな……あれからマトモに話せてないってのがな……他のみんなにも迷惑かけちゃうし」


 クルトは俺が問題意識していた点に気づいていたようだ。


 パーティを組んでいる以上、必要最低限の会話は必要だし、特に俺らなんかはこんな風に遠出までする仲だ。パーティ内で必要最低限以上の会話をしていた幼馴染の男女二人が急によそよそしくなっていたら、そりゃみんな心配するだろうし、やりづらいだろう。


 「ロサクなんかは勘が良いからさっき聞いてきたぞ。あの二人なんかあったんだよね、って。一応何があったかは伏せておいてたけどな」


 「ああ、助かる」


 「しかし、好きな女の子にかっこいいところ見せたいからってボクのとこに弟子入りしてきたのになぁレオ」


 「それは恥ずかしいからみんなの前では言うなよ」


 「わかったわかった」


 そう、最初の動機はそれだった。好きな子にかっこいいところを見せたい。ただそれだけで俺は勇者システムに……


 それでだんだん強くなって、クルトにも引けを取らない、胸を張って『勇者』だと言えるくらいにまで成長した。


 「最初はボクふざけんなよって思ったんだよな。そんな動機で強くなろうとするなってな」 


 笑いながらクルトが言う。 


 「でもだんだん、レオの持つ熱さや向こうみずな勇気に惹かれていったんだ」


 「本当に、クルトがいなきゃ俺は何回死んでたことか。魔王も倒したしどっかでデッカいお礼しなきゃな」


 「いいよ、ボクの親父のこととか相談できたのはレオだけだったし、本当の意味で乗り越えられたのもレオの言葉があったからだ。もう十分お礼は貰ってる」


 「そう言ってもらえると嬉しいな」


 クルトの親父さんはクルトが小さい頃に亡くなったらしい。クルトは母親とはあんまり仲が良くなくて、親父さんとは仲が良かったらしい。忙しい中、時間を作って遊んでくれたらしい。そんな親父さんが亡くなって以来、クルトは塞ぎ込んでしまったのだ。けれど、親父さんの気持ちを継いで勇者システムには入っていた。そこから誰よりも強くなるよう日々努力し続けていた。それも一人で。


 そんな時、俺とクルトは出会った。当時クルトは友達がおらず、どんな相手にも実力と態度で突っぱねてしまっていたそうだ。確かに俺と最初に会った時もそんな感じだった。


 けれど、俺と出会ってクルトは徐々に変わっていって、今では笑顔を見せることが多くなった。


 今は仲間もたくさんできっとクルトも楽しいのだろう。

 正直、俺のどこが良かったのかは自分ではイマイチわかっていないけどな。

 クルトには散々お世話になりっぱなしで、特にミロとパーティを組むようになってからはより一層負担をかけていたと思うし。


 「レオはボクとレオの関係を『師弟』だと思ってるかもしれないけど、ボクからしたら『相棒』とかそこら辺だよ」


 俺が一方的に頼ることが多いが、クルトは俺のことを相棒のような存在だと思ってくれていたらしい。


 「ありがとう」


 嬉しい時ってうまく言葉が出ないもんだな、シンプルな言葉しか出ない。


 クルトが俺のことをそんな風に思ってくれていて、酒が入っているせいもあってか俺はちょっと泣きそうになる。


 「まあ、その相棒からの願いで、早くミロとの関係をなんとかして欲しいんだけどな」


 「く……わかってるよ。この島にいるうちに絶対になんとかするって……!」


 「言ったな、約束だぞ」


 「ああ」


 とコツンと拳を交わす。相棒みたいでなんか良いなこれ。酒がなきゃ絶対にできない。

 俺とクルトはその後しばらく談笑して、二階に上がって、各々の部屋に戻った。


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