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花めく為に散る、  作者: 苫田 そう
14/27

14. 暖簾に腕押し

「それじゃあ、推理を再開しようか」


 あっという間に訪れた夕食の時間にロサクが推理の再開を告げる。

 武器庫を後にしてからしばらくすると、カサミラが夕飯の用意ができたと教えてくれたので、みんなでダイニングに集まった。


 相変わらず机に並べてある料理は豪華そのものであるが、今は空気が美味しくなく、せっかくの料理を台無しにしてしまっている。

 それはもちろん仲間の死が関係しているのは云うまでもない。


 「おい待て、一人いねぇぞ」


 偉そうに足を組んで椅子に座っているエイダンが待ったをかける。

 今机を囲っているのは七人である。三席空いている。


 「申し訳ない、ノレナは欠席とさせてくれないかな。彼女、今相当参ってるみたいで……ここにも顔を出したくないらしいんだ……」


 ノレナはどうやらロキウの死にひどく落ち込んでいるらしい。


 ずっと苦楽を共にしてきた幼馴染が突如理不尽な死を迎えたらそうなってしまうのも無理はない。無理やりこの場に引き連れても機能するとは思えない。


 「この状況で一人にさせておいて平気だったのか?あんなことが起きたばっかりだったのに」


 クルトがロサクにそう訊く。


 「うん、大丈夫。ここにくる直前までノレナの所には僕がいた。この中にいる犯人がロキウの時と同じ手を使うなら直前にノレナの姿を見た僕が犯人ってことになるしね。もし、僕が犯人ならノレナが今死ぬような真似はしないと思うよ。確定しちゃうからね。それにもし僕たち以外の『誰か』がいるとしても、その『誰か』も今危険を冒すようなことはしないと思う。今ノレナが死んだら僕とその『誰か』の二択になってしまうからね」


 さすがはロサク。しっかりと考えた上でノレナの意志を通しているようだ。


 「んで、まずは何から話す。一人一人の昨夜から昼に掛けてのアリバイ調査か?」


 「ああ、その前に──」


 「僕から──」


 と俺とロサクが同時に何かを言いかけて顔を見合わせる。


 ロサクに譲ろうとすると……


 「レオ君、先どうぞ」


 「ああ、ありがとう、じゃあ俺から」


 俺の方が譲られてしまった。さすがジェントルメンだ。


 ここで譲り合いをしても時間の無駄なので俺は素直に話し始める。

 ただでさえ自殺他殺、内部外部で考えることが多いんだからな。


 「俺は昼にみんなで話し合った後、地下室に行ったんだ。それで最初は書庫にいて、その後は牢屋に行った」


 「レオ、お前一人であの牢屋に行ったのか……」


 「ああ、確認したいことがあったからな」


 クルトは若干引いているようだった。


 俺だってあんな気味の悪い場所に一人でずっといたら気が狂ってしまう。


 「それで、確認したいことって?」


 「それはロキウの頭に被せられていた馬の被り物のことだ。結論から言うと、あれは牢屋の人形から剥ぎ取ったものだった。牢屋の人形の一体の被り物が剥がれていた」


 「なるほど、やっぱりそうだったんだね。とすると犯人は昨日、僕たちが館内の探検を終えた後に一度地下室に忍び込んだって言うことになるね」


 「そう、それがまず一つ目」


 「一つ目ってことは二つ目があるんだな」


 「ああ、二つ目は犯行に使われたと思われる凶器が武器庫で見つかった」


 「やっぱり武器庫にあったんだね」


 これもすでに何人かも予測していたのか、驚きは少ないようだった。


 俺もある程度は予想した上で武器庫を漁っていたが、流石に実際に血がついているのを見て驚いてしまった。


 「それで、犯行にはなにが使われていたんですか……?」

 「ハンマーだ。壁に掛かっていた武器の【神級武器 ウルカヌス】に血が付着していた」

 「ウルカヌスの槌か、確かにあのハンマーなら背後からロキウを殺すことは容易かっただろうね……」


 親友の最後を想像してしまったのか、爽やかな顔を歪めながらロサクは得心する。


 「今、ウルカヌスの槌はどこに?」


 「指一本も触れずに武器庫の壁に掛けたままだ。後で見に行こう。ちなみに俺が指一本も触れていないのと、凶器をそこに戻しに武器庫に入ったわけじゃないってことは一緒にいたフレアが証明できる」


 後でエイダンなんかが突っ掛かってきたら面倒だからな。先手を打っておく。


 「フレアも一緒に武器庫に行ったの?」


 とミロがフレアに問う。


 「いや、一緒に行ったわけじゃないよ。私は気晴らしに服のコーナーを見ていただけ。そしたらレオが入ってきた。確かにその時、レオは何も持っていなかったよ」


 「そっか」


 ミロはホッと胸を撫で下ろす。


 「てことはテメエが怪しくなるなぁ、自堕落女」


 「自堕落女って私?なんて失礼な……」


 フレアが怒るべきはそこじゃない。自分が怪しまれているということに怒るべきだ。自堕落女っていうエイダンの評価は間違ってないしな。


 「朝飯の時に最後に部屋に入ってきたのはテメエ、事件後に武器庫に最初に入ったのもおそらくテメエだ。どう考えても怪しいぜ」


 エイダンの指摘は正しい。こいつ口悪いけど意外と鋭いんだよな。


 犯人がフレアであれば、今朝、ダイニングに入る前に塔に立ち寄り、死体を数分後に落ちるようにうまくバランス調節をして、後は運任せでダイニングに入る。それで死体が地面に落ちた時には自分はダイニングにいるからアリバイが成立する。


 武器庫の指摘についてもフレアは気晴らしだと言っていたが、いくらでも嘘がつける。


 よってこの場で最も怪しいのはフレアである。ということだ。


 フレアはエイダンの指摘にどう対応するのか。


 「私のことを自堕落女っていうなら分かってると思うけど、私が今朝ダイニングに最後に入ってきたのは私が自堕落のお寝坊さんだから。あと私が部屋に最後に入ってきたのがロキウの死体をいじるためだったとしたら、どうやって血もつけずに、柵に傷もつけずに女でひとつで上まであの巨体を運んだの?私はか弱い乙女だからそんなことできないよ」


 「デカブツの運送方法については今からテメエが吐くんだよ。それにテメエが犯人で朝飯前にロキウをいじったんだとしたら血をつけないことは可能だ。デカブツが死んでからだいぶ時間が経っていやがるからな。犯行直後に運ぶよりは血を付けずに運べる可能性は高いと思うぜ」


 「なるほど、血がある程度固まってきて、出血も止まってるから血を垂らさずに私が運んだんだと言いたいんだ、それは現実的じゃないね。それに武器を犯行直後じゃなくて、さっき運んだのだとしたらハンマーに付着した血を床に垂らさないためにさっきのレオが来る前に運んだと君は言いたいんだね」


 「ああ、そうだ。なんか反論はあんのか」


 「うーん結構難しそう」


 「俺が反論してもいいか」


 俺は疑問に思ったことを組み立ててみる。


 「まず、確かに時間が経てば血は固まるが、それでも結構な血が流れていたから武器の血の凝固はまだしも、ロキウの周りに広がっていた血の海は固まっていなかったと思う。俺たちは実際に運んだから分かるはずだ。俺たちが運んだ時も血は垂れてただろ。それと、もしフレアが犯人なのだとしたらわざわざあのタイミングでハンマーを戻しにくる必要はないんじゃないか?」


 そもそも俺らは血の凝固について専門にしているわけでもないから、どのくらいの量の血が一体何時間で固まるかなんて正確なことはわからないが。


 「ああ?だから犯行直後だと運ぶ時に血が垂れるだろうが」


 「拭けばいいだろ。わざわざ血の凝固を待つ必要なんてない」


 「……」


 盲点だったようでエイダンは黙る。


 血に関しては布かなんかで拭けば良い。

 だがどっちにしろ謎は残る。


 「拭いたにしろ、血の凝固を待ったにしろどうして犯人は武器をわざわざあるべき場所に戻したんだい?それと、布か何かで拭いたのならなぜ中途半端に血が残るようにしたんだい?」


 黙って聞いていたロサクが疑問を浮かべる。


 「見つけてもらいたかったから、なのかな」


 と俺は口にする。


 「それは、どういう意味だい?」 


 「……わからない。でもそれしか考えられない」


 犯人は本来血液を拭いて、使った武器の証拠隠滅を図ることができたはずなんだ。

 証拠を残す、と云うことは犯人にとって自分の首を絞めることに繋がるはずだから。

 それでも犯人はあえて血を残して武器を見せびらかす真似をした。ではそれはなぜ?


 「武器のことについては後で考えるとして、ロサクは最初に何を言いかけたんだ?はじめに言おうとしてたってことは結構大事なことだったんじゃないか?」


 とクルトが話をロサクに振る。


 そうだ、このまま考えてもきっと今はまだ分からない。まずはロサクの話を聞こう。


 「ええと、それなんだけど……」

 「んだよ、もったいぶってねぇでさっさと言え」


 エイダンがロサクを催促する。


 「ええと、覚悟して聞いて欲しいんだけれど……いいかい?」


 ロサクが一度円卓に座る全員をぐるりと見渡す。


 「ああ」


 と俺が返事をする。



 「玄関の扉が、開かなくなった」



 「……は?」


 と口にしたのは誰だっただろうか。


 それすらも理解できないほどに脳は思考停止していた。


 玄関の扉が開かない?


 それはつまり、この館に閉じ込められたってことか?


 殺人鬼が潜んでいるかもしれないこの館に?


 ありえない。


 そう言えば、昨日は初日で館の中に夢中だったし、今日は天気が悪いから外に出ようなんて考えもしていなかった。


 「それは一体どうしてだ?」


 「僕にもわからないんだ、クルトくん。さっき憔悴しきったノレナがここを出るって言い出してね…外は嵐で危険だからやめておいた方が良いって僕は言ったんだ。船を出そうにも出せないし、外にいても濡れるだけだしね。けれどノレナはそれを無視して外に出ようとしたんだ。そうしたら、玄関の扉が全く動かなかったんだ」


 「ちょ、ちょっと待ってくれ。普通玄関の扉に錠がある時って、外からは鍵が必要だけど中からは自由に開錠できるものじゃないのか?」


 俺は動揺しつつも当たり前の疑問を浮かべる。


 中から開けられない玄関の扉なんて設計ミスでしかない。


 「それが、この館の玄関扉は中からも鍵が必要だったんだ。錠があって、そこに鍵を挿せばなんとか出れるのかもしれないけど……」


 「そんな、まるで俺たちを閉じ込めるみたいな構造じゃ……」


 中にいる人間に鍵を必要とさせる意味がわからない。


 「僕たちはもう、閉じ込められたんだ」

 「そんな……」

 「ドアを壊すことはできないのか?例えば武器庫にある武器を使ったり」


 クルトが解決策を提案するも、


 「武器はまだ試してないけれど、あの頑丈な扉じゃ破れそうもないよ。さっき僕が全力でタックルしてもぴくりとも動かなかったんだ。おかげで肩が少し痛いよ」


 と強行突破はおそらく無理であるという答えが出される。


 「それじゃあ、窓から出るっていうのはどう?」


 とミロが提案する。


 「それも無理だと思うよ」

 「どうして?」

 「僕たちは昨日全部屋回ったけれど、どの部屋にある窓もとても人が通れるようなサイズにはなっていなかった。だから窓からの脱出も現実的じゃないかな」

 「なるほど……」


 ミロはせっかく良い解決法を思いついたと思ったのに、といった感じにしゅんとしてしまった。


 「それじゃあ鍵を探すというのはどうでしょうか、鍵穴はあるんですよね?」


 そこで今度はカサミラが提案する。


 鍵が掛けられていて、強行突破は無理となればその考えが出てくるのは当然といえる。

 鍵を回して外に出る。これが現在最も可能性のある脱出方法だろうか。


 「僕もそれが一番良いと思ってるよ。ただ、相当骨の折れる作業になるだろうね。全部屋回ってまだ一度も鍵らしきものは見かけていないし、犯人が隠し持っていたとしても鍵なんて小さなもの、荷物検査をしても出てくるとは思えないし上手く隠すだろうね」


 俺たちは昨日全ての部屋を見ていて、貴重品が入ってそうな引き出しも含めほとんどの引き出しなどを勝手に開けていた。そのどこにも鍵らしきものは入っていなかった。


 ただ、昨日確かに入ってきた玄関の扉に鍵が閉ざされている。これは館内のどこかに鍵がある可能性は高いと言っていいだろう。


 「一旦、今までの状況を整理しようか」


 と複雑になったこれまでの状況をロサクが説明してくれるそうだ。


 「まず、今日の朝、というかお昼頃に全員が起床した後、何者かによって殺されたとされるロキウが塔から落ちた。この時、僕たち全員のアリバイはある。それで、ロキウを塔から落とした方法、頭に馬の被り物を被せた理由、ロキウ殺害に至った動機は謎のまま。だけど、ロキウを殺害したとされる凶器は見つかっている。犯人は血を拭うなどして、凶器は一体何だったのかを謎のままにしておくこともできたけど、それをせずにあえて元の場所に戻して僕たちに凶器を見つけさせた。これも謎だね。それと、何者かによって玄関の扉に鍵がかけられていた。これについては扉を施錠した人物とロキウを殺した犯人はおそらく同一人物と見ていいと僕は思ってる。今はこれらが謎となっていて犯人特定が難しい状況となっている、という感じでいいかな?」


 ロサクの確認にみんなが頷く。


 ロキウを塔まで運び、塔から落とした方法。


 被り物を被せた理由。


 動機。


 凶器を発見させたこと。


 鍵を閉めた人物、鍵の在処。


 大まかに今の状況を見てもこれだけの謎が出てくる。


考えれば考えるほど謎が出てきて、より複雑に絡まって答えから遠のいているような、そんな状況。


「それじゃあ、これからは昨晩の行動について正直に話し合おうか」


「ああ、じゃあまず俺からでいいか?」


「うん、じゃあレオ君からお願いしようか」


「俺は昨日、ダイニングでみんなが解散した後もここにクルトと残り続けてた。具体的な時間はわからないけど、日を跨いでから二、三時間はここにいたと思う。それからクルトと二階まで上がって部屋の前で解散した。そうだよな、クルト」


「ああ、間違いない。ボクの動向もレオと全く同じと考えてもらって構わない。その後は朝まで一度も部屋を出ていない」


「なるほど、二人もどちらかが途中でお手洗いに行ったりは?」


「俺もクルトもそれぞれ二回くらいだったかな。それと俺の記憶ではどっちもそんなに長い時間トイレにはいなかったと思う」


「つまりボクたちは早くもシロってことだ」


「まあ、そうなるね。それじゃあ次はミロちゃん達は?」


「私はみんなも知ってるかもしれないけど、女の子四人で私の部屋に集まってお話してたよ。時間はあんまり覚えてないけど、その後解散して私は一回トイレに行ったよ。フレアは何か覚えてる?」


「私の記憶だと、レオ達よりは早く解散していたと思う。私たちが解散する直前に私は一階のトイレに行ったけど、その時ほんの薄っすらだけどダイニングの方から話し声が聞こえてきたから。あ、あとカサミラは少し早く帰ったよね」


「はい、そうですね。私は朝ごはんを担当していたので、一番に起きなきゃいけないなと思ったんです。だから早めに抜けさせてもらいました。それでも、私が部屋に戻ったのは少なくとも日を跨いで一時間以上は経過していたと思います」


「なるほど、そうなると女性陣全員もシロということになるね」


ここにいないノレナもおそらく似たような回答をするだろう。


「それじゃあ、エイダンくんは何をしていたんだい」


「オレは解散した後ずっと部屋にいてしばらくして寝た。それを証明するやつはいねぇけどな」


「エイダンの証言が本当ならエイダンもボク達と同じでシロになるな」


クルトの言葉にエイダンはふんと鼻を鳴らして返事をする。


「ロサクは何をしていたんだ?」


まだ、昨夜の行動を話していないロサクに話を振る。


「僕はあのあとロキウと僕の部屋にいたよ。しばらく話した後特に何もなく、解散したよ。話した時間はレオくん達と同じくらいかな」


 冷静さを欠くことなく、ロサクは簡潔に説明する。


 「なるほどな。全員の証言を信じるなら全員シロってことか」


 「まあ、そうなるね。でも、ミロちゃんが推定した死亡時刻はかなり広く見積もってるから、それを意識すると全員がシロであり全員がクロであるってことになるね」


 ミロは確かお昼に七時間から十時間前と言っていた。

 そもそもが広く見積もっているのに加え、ミロは別に専門家じゃない。

 だから昨晩の行動を確認したところで結局は曖昧なままだ。


 「どうやら今の話で犯人を絞るのは難しそうだな」

 「だね……」

 と言いつつみんな口には出さないがある程度怪しいと思われる人物はなんとなく頭の中に浮かべているだろう。


 動機という面でも誰が殺害可能かという面で見ても客観的にロサクが怪しくなる。

 一番ロキウと関係値が深くて、ロキウが殺される少し前まで一緒にいたのだから。


 ただロサクだと決定づけられるような証拠はない。


 ミロの親友だからあんまり疑いたくないが、フレアも若干怪しい。

 動機は不明だが、今朝ロキウが落ちる少し前にダイニングに入ってきたのと、事件後に武器庫にいたことが少し怪しく感じる。


 いや、起きたのが遅かったのは俺も同じでフレアと大して変わらなかった。起床時間で判断するのは違うか。いやしかし怪しいのは間違いない。


 何もわからないが故にここまで全く怪しく見えないクルト、エイダン、ノレナ、カサミラも一周回って怪しく見える。


 手の込んだ自殺という可能性は?いや管理人であるという可能性が一番強いか?


だめだ、さっぱりわからない。考えても考えても頭が混乱していくだけ。


 あまりにも材料が少なすぎる。いや、あるにはあるんだが決定的な何かが見えない。

 俺の頭脳がもう少しよくできていればあるいは既にたどり着いていたかもしれない。


 「僕からひとつ質問をしてもいいかな?」


 ロサクは何か知りたいことがあるようだ。


 「昨日、この館に入った時に最後尾にいたのは誰だい?」


 ロサクは俺たちが館に入ってきた時にこっそり犯人である俺らの中の誰かが鍵を閉めた可能性を考えてこの質問を投げかけたのだろう。


 「ええと、私とフレア……かな」

 「うん、私とミロだった」


 俺は先頭だったからよく見ていなかったが、どうやら最後尾はミロとフレアだったらしい。


 「なるほどね、その時に館の鍵を閉めたりしていないよね?」

 「うん、私たちはお互いがそれを証明できるよ」


 ミロは自信を持ってそう告げる。


 「わかった、ありがとう」


 ということは犯人が鍵を閉めたタイミングはもっとあとだろう。


 その後特に手を上げて質問をする人もおらず、そうこうしている間に夜ご飯を食べ終わり、先ほど俺が話していた殺害に使われた被り物と武器を地下室に見に行こうとなった。


 全員で武器と被り物を確認した後、地下室の入り口を閉めて解散となった。


 「ロサク、ちょっといいか」

 「ん、なんだい」


 俺はロサクに聞きたいことがあったため全員が散らばる時にロサクに声をかける。


 「馬の被り物の中の顔は本当にロキウだったんだよな?」


 声を潜めて尋ねる。


 「うん、間違いなくロキウだったよ。顔もそんなに崩れていなかったし」


 親友のロサクがそういうなら間違い無いのだろう。


 「他に何も違和感はなかったか?ロープが引っ掛けられてたとか」


 「いいや、特にそういったものはなかったよ。ロープでも引っ掛けられてあったら落下の謎も解けそうだったんだけどね」


 「そうか、悪いな、思い出させちゃって。ありがとう」


 「ううん、気にしないでくれ、それじゃあまた明日」


 「ああ、おやすみ」


 そういって俺は客室に戻り、ベッドの上で目を閉じた。


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