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花めく為に散る、  作者: 苫田 そう
13/27

13. お披露目

 ダイニングで解散してから俺は塔の部屋へ行った。

 塔の中央の下に残された血溜まり以外には特に何も見当たらなかった。


 何かおかしな点はないか確認をしながら螺旋階段を登っていって、塔の一番上のスペースまでいって、細部まで確認したが特に不審な点は見当たらなかった。

 低めの手すりももともと古い感じだったから特に変化はないように見えた。



 そして俺は今地下室の書庫に来ていた。


 流石に昨日のようなテンションとはいかず、全員大人しく部屋にこもっているようだった。


 俺は一人で何か手掛かりになるものは無いかと本を読んでいたが、当然そんな本は見つからなかった。


 途中で見つけた『大勇者ヘレネの手記』や『魔王軍幹部ファイル』などをパラパラ見ていたが、こんなことをしている場合じゃないなと思って書庫を出た。


 雨は降り止むどころか今朝より一層強くなっていて、雷の音などが地下まで微かに聞こえてくる。



 気になることがあったため地下室の真ん中の部屋にあたる牢屋の部屋を覗いてみる。


 昨日俺らが入ってそのあと牢屋の扉を開けっぱなしにしていたため、今も鉄格子の扉が開かれている。


 死体、のような人形の山の中の一つが昨日とは違うことに気づく。


 「馬の被り物が……」


 動物の頭を被っている人形たちのうち一つが被り物を剥がれていた。

 被り物の下はのっぺらぼうで、少し汚れている程度だった。


 ロキウに被せられていた馬の被り物はやっぱりここから取ったものだったのか。


 あとで一応みんなに報告しておこう。


 どうにも気味が悪いな……

 一人で長時間ここにいる気にもなれず、俺はスタスタと牢屋を出ていった。


 さらに気になることがあった俺はそのまま武器庫へ向かった。


 「お、レオじゃん」

 「フレアか」


 するとそこには先客として服を眺めるフレアがいた。


 「こんなところで何を?」


 俺は疑問に思ったことを率直に尋ねる。


 フレアの手は一瞬自身のポケットを気にした気がした。


 「いやあ、部屋にいてもどうにも落ち着かなくてねー。服でも見て気を紛らわそうと思ったの」


 とフレアは淡々と答える。


 なるほど気分転換か。


 「そういうレオは?」


 「俺もフレアと半分はおんなじだ。部屋に居ても落ち着かないだろうしな。もう半分はいろいろ調べたいこともあるから、さっきまで書庫にいて、牢屋を見てからここに来た」


 「うぇ〜……よく一人であの牢屋を見に行こうと思ったねー」


 「ちょっと気になることがあったんだ」


 「だとしても一人で行くかねぇ……それで、何か見つかったの?」


 「ああ。昨日牢屋を見た時、動物の被り物を身につけた人形たちがいただろ?」


 「いたいた」


 忘れるわけないでしょといった表情で応える。


 「そいつらのうち、一つ頭を剥がれているものがあった」


 「ええー……それってつまり……」 


 「そう、おそらくロキウの死体が被っていた馬の被り物だ」


 「なるほどね…わざわざあそこから剥ぎ取ったんだ。犯人は相当趣味が悪いね〜」


 「だな」


 フレアが並べられている服の方に視線を戻したので、俺は武器でも見に行こうかと部屋の奥に行こうとした。

 すると服を見ながらフレアが、


 「そういえばレオ、あんたミロとのことどうすんの?」 

 「ぎっ!?」


 と訊いてきて、突然ミロとのことを訊かれた俺は躓きそうになる。


 「な、なんでいきなりそんなこと聞くんだよ!」


 「ああ別に茶化そうとしたとかそういうんじゃなくて、ほら今こんな状況でしょ?レオのことだからこの館にいるうちにケリをつけようとしてるのかなと思ったんだけど、そんなこと言ってる場合じゃないじゃん?だからどうするのかなーって」


 「まぁ、それは確かに……」


 フレアの言う通りだ。本来この館でミロと仲直り。(というか喧嘩してるわけじゃないんだけど)とにかく前のように話せるようになれば良いと思ったが、今は状況が状況だ。


 人が一人死んでいる以上、意識がそっちに向くこともあって、さっきは何度か普通に話せていた。

 ただそれは一時的であって、決してミロとの仲が前進しているわけではなかった。

 逆に今はミロときちんと向き合うことができずにいた。


 「なんかあったらいつでも私に声かけてね」


 とフレアはウィンクをしてくる。


 「お、おう」


 俺はそう答えることしかできなかった。


 フレアはミロと仲が良いし、お言葉に甘えて今度色々聞こう。

 俺は再び向きを変え、奥の武器コーナーへと向かう。


 昨日ロキウが興奮していた【神級武器 ディアーナ】は昨日と変わらず、壁にかけてあった。


 昨日、あんなに楽しそうに武器を見てたのにな……


 他の神級武器にも目を通したが、昨日と大して変わっていないように見えた。しかし、その中で一つ昨日と明らかに違うものを発見した。予想はしていたが、俺は一気に自分の気が引き締まるのを自覚する。


 「フレア!ちょっとこっちに来てくれ!」


 思わずフレアに声をかける。


 「なになに!」


 フレアは合わせていたドレスを持ちながら駆け寄ってくる。


 「……っ」


 それを見た瞬間フレアは思わず口元に手をやって、それから目を背ける。


 「これは、後でみんなに報告しないとな……」 



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