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そういえばムカデって食えたっけ

店にあるテレビが巨大なムカデを映し出す。

そしてそのムカデはビルに巻きついて威嚇している。


『いや〜最近はクラスが高い災害が多いですねぇ』

『まあそんな時期もあるでしょう』

『『あはははは!』』


特に今日も変わったことは無く、店でダラダラするだけの時間を過ごす。


「『デリバリー』いいっすかぁー?」

「どうぞー」


黒髪の青年が店に入ってくるなりそう言った。


「今テレビの中継でムカデ映ってるじゃないですかぁ?あの腹ん中に俺の妹がいると思うんでお願いしまーす」

「はいよ。イル、カレン先行ってこい」

「はーい!」

「了解です」

「レルはラーメン持ってけ」

「はい」


竹林さんがラーメンの調理に取り掛かる。


「あ、これ顔写真です」


青年がスマホに1枚の写真を表示する。


「この子がレイって言います。大切な妹なんでよろしくお願いしまーす」

「わかりました」

「ほら出来たぞ、持ってけ。あいつらには俺が精霊飛ばして色々伝えとくから」

「はい、行ってきます」


確かあの建物は射抜き通りの下側だった気がする。

岡持ちを持って走る。

途中にいた1メートルくらいのムカデはダガーで首を撥ねておいた。


「ここだな」


既に遠くからムカデは見えていたのでこのビルであることは間違いない。

突如ムカデの頭から腹までが引き裂かれた。

そのままムカデは真っ二つになってビルから剥がれ落ちていく。

恐らく対策課のような人達がムカデの回収作業に取り掛かっている。


「レルこっち〜!」


カレンさんが手招いている方へ向かうとムカデの体内からの救助活動が行われていた。


「どれ?」

「黒髪の人型実体、種族は不明」

「あれかな?とってくるね」


ぐちゃぐちゃになった有象無象をかき分けて1人の女性を抱いて戻ってきた。


「よく四肢欠損無しで生きてたね」

「ほんとうに凄いわ」


後ろを振り向くと大きな薙刀を持ったイルさんがいた。


「多分普通のヒューマンじゃなくない?」

「それか実体を無くせるか」


先程デーモンが肩から下を全部喰われて喚いていたのを思い出す。


「とにかくラーメン渡せそうにないんで店に持ち帰りますか」

「はい、レル持って」

「よろしくね〜」


人型実体を背負い、そのうえ岡持ちまで持たせるのはいかがなものかと。

30分以上歩いてようやく店に戻る。


「戻りましたー!」

「おつかれ〜」

「おお!レイ生きてたかぁ!心配はしてなかったけどな」


俺の背中にいる少女を見て依頼主である青年は嬉しそうにそう言った。


「いや〜迷惑かけました。後日レイと一緒にお礼させていただきます。さ、レイ起きて」

「······ん〜?」

「じゃあありがとうございましたぁ」


2人は手を取り合って店を出ていく。

なんか騒がしい人達だったな。


「竹林さん、そういえばムカデの毒牙貰ってきたんですよ。どうしますか?」

「そこらへん置いといてくれ。後で売りに行く」

「はーい」


イルさんがまな板の上にデカめの牙を置く。

もうあのまな板使いたくないんだけど。


「うーす、私が来たぞー」

「ちょっと待ってろ、今作る」

「そうか。······じゃあ3人ともこれを見てくれ」


そさくさと裏に戻ろうとしていた2人を呼び止めソノさんが写真を出す。


「こいつに見覚えはあるか?」

「ない!」

「ないでーす」

「あっても忘れました」


ソノさんが出した写真には1人の男が写っていた。


「ならこいつを捜し出して欲しい」

「おいおい、うちはなんでも屋じゃないからな」

「······ならこいつにラーメンを1つ『デリバリー』して欲しい。もしかしたらそこをうちの部下が尾行しているかも、だがな」

「はぁ······まあいいぞ」


竹林さんは1杯のラーメンをソノさんの前に置く。


「ありがとうな。それじゃあいただこうか」


ソノさんがラーメンを啜り始める。

今回の『デリバリー』はもしかしたら長丁場になるかもな。

まあ給料入るならなんでもいいか。


「そういえばなんだが」

「どうかしたか?」


ソノさんがラーメンを半分ほど食べ終わったところで箸を置く。


「次の『デリバリー』が終わったら部下を連れてきても構わないか?」

「数は?」

「10」

「まあいいぞ」

「感謝する。いい加減ちまちま借金を返すのが面倒になってきたんだ」


んー?

なんか今日はソノさんのテンションがいつもより低い、というか落ち着いているというかなんというか。

疲れてるのか?


「カレンさん、今日のソノさんって前回とテンション違いません?」

「仕事持ってくる時はいつもこんな感じだよ。オフの時はめっちゃテンション高いけどね」


そうなのか。

内緒話で得た何気ない情報に少し驚く。

まあエンジェルだってそんなもんか。


「美味しかったよ。じゃあまた今度な」

「おう、部下連れてくる時は連絡よこせよ」

「ああ」


ソノさんが飛び立って行くのを横目にテーブル席に座る。

······そういえばムカデって食えたっけ。

食えたなら貰っとけばよかった。

惜しいことしたな。

そんな風に食えたかもしれないムカデに思いを馳せながら次の客を待つのだった。

あんだけでかいムカデなら喜ぶ人は喜ぶんでしょうか。

羊なんで食ったことないですけど。


以上羊木なさでした。

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