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エンジェルの警官

「はい、これ期待通りの一丁目二番地七号ね」

「あ、はい」


そろそろお腹が減り始めるお昼前、突如イルさんに岡持ちを渡された。


「今回は普通の客だから安心しろ」

「わかりました」


普通の客は100万ミクスのラーメンなんて頼まないと思うけど。

期待通りは確か隣の通りだったはず。

まあ行ってみるか。


「一二七、一二七······ここか」


ちょっとボロめの一軒家。

恐らくここで間違いないだろう。


「デリバリーです!ラーメン持ってきました!」

「はぁ〜い」


ガチャッとドアを開けて現れたのは布を被ったゴーストだった。


「いつもありがとね。お代はこれで」


手に札束、恐らく100万ミクスを置かれる。


「ありがとうございました」


そう言うとさっさと撤退する。

······ゴーストもラーメン食べるんだな。

そんなことを思いながら店に戻る。


「ただいま戻りました」

「おおっ!君はラーメンの!」


店にはどこか見覚えのあるヒューマンがラーメンを啜っていた。


「これがうちのバイトのレルだ」

「レル君、僕は少し前に工場にいたフィンだ。あの時は本当にありがとう」


ああ、あの社長か。


「レルです。あー、ご無事で何よりです」

「それにしてもここのラーメンは美味いね」

「だろ?」

「あの時死にかけで食ったラーメンも美味かったが、こう余裕のある時に食うのもまた美味い」


そしてしばらくの間フィンさんは自分の会社の話を続け、俺はただ聞き流していた。


「それじゃあいつか僕の会社に来るといい。価格は安くしておくよ」

「ありがとうございます」


フィンさんがスープを飲み干す。


「美味しかった。迎えが来るまでここで待たせてもらうよ」


そう言うとフィンはどこかに電話をかけた。


「別に構わないがそろそろ······」

「たのもーーー!!!」

「そろそろ他の面倒臭い客が来るからな」


ドアを勢いよく開け、大声で叫んだその影は警官を思わせる制服を着用していた。


「ラーメンと餃子!」

「待ってろ」


そう注文した彼女はカウンター席にどかりと座り込む。

よく見ると彼女の頭上には光輪が浮かんでいる。

そして小さな翼が背中から少し離れたところに浮かんでいる。


「君は新人?」

「はい、バイトのレルです」

「そっかぁ。そっちのお兄さんは?」

「あー、ちょっと有名な化粧品会社の社長をしているフィンだ。よろしく」

「よろしく〜、私はエンジェルのソノ。ところでレル君は私どっかで見たことあるんだよね〜」

「そうですか······」

「そうなんだよ。多分お仕事関係かな〜、前は何してたの?」


警官なら災害対策課と繋がりはあるだろうし隠しとくか。

同僚には申し訳ないが今更戻りたくはない。


「飲食店でバイトしてました」

「嘘つかなくてもいいよ。別に何してても構わないから」

「はぁ······」


なんでわかるんだよ。


「災害対策課で働いてました」

「だからか!それでこっちには戻······」

「ラーメンと餃子です。あとウチの従業員を引っこ抜こうとしないでください」

「ごめんね、イルちゃん。別にそういうつもりじゃないの」

「分かればいいんです」

「じゃあ頂こうかな」


ソノさんがラーメンと餃子に手をつけ始める。

ついでにフィンさんは迎えが来たようで美味しかったよ、と言って立ち去っていった。

餃子を齧りながらソノさんは片手にパソコンを弄っている。


「ほら、あったよ」


カウンター付近に突っ立っていた僕にパソコンを向ける。


「A.B.C災害行方不明者一覧。AからC災害で行方不明になった人は大体ここにいる」


そこには俺の名前と顔写真が貼り付けてあった。

やはり行方不明扱いになっていたか。


「これ、報告しといた方がいい?」

「結構です」

「そう?友達は嬉しがるだろうけど」

「あそこにはもう戻る気がないので」

「じゃあいっか」


そう言うと残りのラーメンをかき込み、スープを飲み干す。

そして俺に片手で1枚の紙を渡してくる。


「これ私の名刺。困ったら連絡してね」

「ありがとうございます」

「竹、美味しかったよ。また来るね」

「おう、じゃあな」


帰り際にラーメンと餃子代の200万ミクスをテーブルに置く。

ドアが閉じて、店のガラス越しから翼で飛び立って行くのが確認できる。


「あいつここら辺の警官全部まとめてるから仲良くしとけよ」

「マジですか?」

「マジだ」


流石にそれは強すぎるでしょ。


「つーかなんでそんな偉いエンジェルの方がここに来てるんですか?」

「まあ警官でもミスるときはミスるからな。たまにその尻拭いをさせられる」

「お金は入るからいいんですけどね。でも難易度めちゃ高です」

「しかも敵は殺すな、みたいな無理難題ふっかけてくることもあるし」

「へー」


警官の依頼大変すぎるでしょ。


「あれだな。あいつが来てるのは今までの依頼料の支払いと······」

「監視ですよね」

「人でもなんでも普通に殺してるからしょうがないよねー」

「この街じゃこんなラーメン店潰すより、街のパトロールでもしてた方が凶悪犯捕まえられんだろ」

「確かに」


そんな雑談をしていると気付けば今日の業務は終了していたのだった。

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