デリバリー出陣
「チッ······」
サヤ、あの子は少々身の程をわきまえないところがありますね。
本当に私の神経を逆撫でするのが上手くなったようで。
次にあったときは悠久の時の中で死ぬまで殺してあげましょうか。
さて、そんなことより今回はデリバリーの方たちに頼むとしましょう。
私はもうあの空間には入れそうにありませんからね。
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カランカランと扉の鈴が店内に鳴り響く。
誰かと思ったらミアだった。
随分はやかったですね、と皮肉を言おうとする前にミアの言葉によって私の言葉は遮られた。
「レルさんのいる場所まで繋がるゲートを開いてあげるわ。その後は勝手にしてください」
「そうか、ありがとうな。イル、カレン、『デリバリー』の依頼だ」
「はーい!」
「了解です!」
「では私は店の外で待ってますので」
そう言ってミアは店の外に出ていった。
「カレン、岡持ちを持ってきてくれ」
「オッケーでーす」
「イルは看板をしまってくれ」
「わかりました」
「あと大太刀を部屋から持ってきてくれ」
「······?はい」
店の外の看板を折りたたんで壁に立て掛ける。
そして階段を上がって竹林さんの部屋に行きポールハンガーの隣にある大太刀を持って戻る。
「よし、これで準備完了だな」
「あれ今日は竹林さんも行くんですか?」
「ああ運動不足解消にな」
3人で店の外に出ると既にミアが不気味な門を出して待っていた。
「これをくぐったらすぐですよ。せいぜい死なないようにしてくださいね」
竹林さんがお礼を言ってからカレン、私、竹林さんの順に門に入る。
目の前が白い光で包まれた。
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ふぅっ、とサヤが大きなため息をつく。
「これで目的のほとんどは終わったからキミを解放してもいいんだけどね······」
「それなら今すぐ頼む」
「でも残念、あともう少し待っててね」
待てなんて言われたってここから逃げ出す目処が立たないんじゃ抵抗する気にもならない。
こういう時こそ『デリバリー』をすればいいんだろうけど通信手段がないからな。
どうしたものか。
「そうだ最後に1つ教えてあげよう。さっき君を連れてきたのは世界征服だとか嫌がらせだとか言ったがあれは嘘だ」
「嫌がらせはホントだろ」
「バレたか、まあそんなことよりもレルくんに知っておいて欲しいことがあるんだ」
ミアと出会った時と同じような威圧感に思わず胃の中のクッキーを吐き戻しそうになる。
「100万ミクスするラーメンはクソだ」
「それって······」
「来たみたいだね」
ここから離れた場所にミアの物と思われるゲートが開き中からカレンさん達が出てくる。
そして間髪入れずに俺は叫んでいた。
「『デリバリー』お願いします!!!」
「いいよー」
「了解です」
そんな軽い返答がまだ1日も経っていないだろうにたまらなく懐かしく思えた。