災害の入店
レルから電話があった。
しかも敬語を使わずに。
客を連れてくるとの事だったが嫌な予感が拭えない。
「イル、カレン戦闘準備をしておけ。レルがナニカを連れてくるらしい。恐らく緊急事態だ」
「わ、わかりました」
「迎撃します?」
「いや様子を見てからだ」
「はい」
本当に何か大変な事に巻き込まれてないと良いが······。
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さてどうしようか、このまま歩けばあと数十分で店に着いてしまう。
それまでにどうにかしてこの化け物の正体を、目的を探らないといけない。
そうすれば何か穏便に事を済ませられるかもしれない。
かもしれないが······。
「この通りは邪魔な生き物が多いですねぇ。もっと静かな道はないんですか?」
「んーっと、俺はあんまりここら辺には詳しくないからなぁ」
「そうですかぁ、ならしょうがないですね」
聞けるわけがねぇ。
身体が喋ることにすら拒否反応起こしてんのに無理やり喋ってんだ。
これ以上なんかしてミスれば殺されちまう。
「お店の方角はどちらですか?」
「え?あっちだけど······」
「ありがとうございます」
ふっと右腕を前に翳すと道が現れた。
いや、道を作ったのだろう。
家々を破壊して。
「これで楽に向かえますね」
「ああ······」
道の突き当たりに恐らくだが俺の店が見える。
もしかして店を知っていた?
まあ知っていたとしてもさほど問題は無い。
今重要なのは対策課がこの辺りでは騒ぎ
を聞きつけてくるだろうという事だ。
それが吉と出るか凶と出るか。
まあ兎も角店へ向かおう。
道中は特に何事もなく、予定よりも断然はやく店に着くことになった。
心臓が強く拍動するなか、ドアを開ける。
「いらっしゃいませ〜」
いつもとは違ういやに明るいカレンさんの声。
イルさんも笑ってはいるが警戒が解かれていない。
落ち着いた足取りでテーブル席に座ると、彼女も反対側に座った。
「ねぇレルさん、メニューはないんですか?」
「ここはラーメンと餃子しかないから普通に頼めばいいよ」
「はーい」
ちらと厨房の方を見るとイルさんが口をパクパクして何かを伝えようとしていた。
えーっと、『だ・い・じょ・う・ぶ』か。
特に今は問題は無いので何も返さないでおこう。
そう思った瞬間、顎を掴まれ目を合わせることを強制される。
「ミア以外の女を見ないでください」
名前はミアって言うのか、なんて呑気な事を考える。
「わかりましたか?」
コクコクと首を振るとにこりと笑って手を離してくれた。
よく良く考えればあの瞬間に頭ごと吹き飛ばされても可笑しくなかった、とラーメンを注文してから俺は気付くのだった。
こんにちは羊木なさです。
またしばらくの間休みを取らせていただきます。
次回の投稿は3月10日になります。
1ヶ月も休んでしまい申し訳ないです。
ですがもうそろそろ新しい世界を創って皆さんにお見せできそうです。
恐らく4月中に第一話を投稿すると思います。
期待しててください。
以上羊木なさでした。