食器を届けに
ひと仕事終えた後、店に戻ると何時ぞやの悪魔の方がいた。
「レル、おかえり〜」
「おかえりなさい」
「あーい」
「······どうも」
「うっす」
あー、名前なんだっけ、この悪魔。
まあいいか。
「そうだ竹林さん、今日の電波塔の事件の事なんですがいいですか」
「なんだ、依頼人でも死んだか?」
「あ、いえ、ラーメンはしっかり届けたんですが、事件解決の手柄を他の人に渡しました」
「どんなやつだ?」
「キョウカって言う人?悪魔?種族はわからない方です」
「そうか、まあ無事に届けられたならいいか」
いいんだ。
なんか怒られるかと思ってた。
「ちょうど用が済んだしもう帰るわ。私はご主人と一瞬でも長く同じ時を過ごしたいの」
「えー、ラビちゃんももっと居たらいいのに」
思い出した、ラビという名前だったな。
それよりも今日は前会った時よりも随分落ち着いているな。
いや、そんなことないか。
足めっちゃ震えてるしただの虚勢か、もしくはあの神族に何か言われたか。
「それじゃあ」
そう言って席を立ち、ドアの前まで行く。
「これ、アイツに渡してくれ」
竹林さんがカウンターの奥から紙袋を渡す。
目をパチリと大きく開いた後、顔を綻ばせてくすりと笑った。
「ありがとう、じゃあ」
ドアノブに手を掛け、そのままドアを開く。
そっとドアを閉じないように手で押さえると、振り向きもせず全速力で走って帰って行った。
「ホントにはやく帰りたかったんですね」
「だね〜」
あ、そうだこいつに名前を付けないと。
んー、外を歩きながらでも決めるか。
「俺、買い物行ってきますね」
「じゃあ私たちも行くー!」
「夕飯の買い出し行ってきますね」
「気をつけろよ」
まあこの二人が付いてくるのは予想範囲内だ。
店を出て飽和通りへと向かう。
「レルは何買うの?」
「こいつの新しいエサです」
ポケットから風龍が飛び出してくる。
「ギャ!」
「前に見せてくれたドラゴン?」
「その成体です」
「強そ〜!名前は?」
「まだ決まってないです」
「じゃあ私が付けてもいい?」
「まあいいですよ」
「やった!どーしよっかなー」
「私も考えてみましょうか」
二人が頭を悩ませること5分ほど。
そろそろ飽和通りが見えてきそうだ。
「······どこかの地方の風を操る神からとってルドラなんてどうかしら?」
「ギャフギャフ!」
「気に入ったか良かったなルドラ」
名前を付けられたルドラは嬉しそうに飛び跳ねるのであった。