風龍と赤髪の眼帯女
割れたガラスが地面に散らばる。
「なんだお前ら!」
全員黒服にフード、カルトの類か。
視界右端で人質の身体が浮かび、そのまま窓の外へと移動していく。
「依頼を受けて参りました、『ラーメン・デリバリー』のレルです」
「ちっ、やれ!」
機関銃をポケットから取り出し即座に引き金を引く。
近寄ってくる奴を片っ端から吹き飛ばし、一分弱経ったあたりでミニガンをポケットにしまう。
「一人だけ生き残ったか」
「くそっ!お前のせいで我らの計画がめちゃくちゃだ!」
結界を解きながらカルトの長?リーダーのような黒フードがナイフを出す。
「殺してやる!」
「やってみろよ雑魚」
ナイフを前方に構えこちらに突っ込んでくる。
物理障壁の色を透明にし、自分の前方に出す。
自分と黒フードの距離が一メートルほどになった瞬間、後方から突風が巻き起こりナイフが遠くに飛んでいく。
「よくやった」
俺の隣にまだ名前の無い龍が立つ。
もう下に人質を置いてきたのか
さてどうするか。
黒フードはナイフと一緒に飛ばされて既に戦意喪失している様子だ。
「おい」
「ヒッ······!」
対策課は流石に来ないだろうし、殺すか。
それとも······。
「おい!性魔術教団!降参しろ······」
正面のドアを蹴破って十人程の武装した集団が入ってくる。
「······これはお前らがやったのか?」
「あ、はい。あと人質は下にいます」
「そうか······。シン、終わったぞ。ああ、そうだ、同業者が終わらせていた。それでは」
どういうことだ、リーダーっぽい人に話しかけられたと思ったら急に一人で会話し始めて。
そういえばこの人どっかで見た事あるな、赤い長髪に左目に着けた眼帯。
······誰だっけ?
「よし、お前らそこの黒フードを捕縛しろ。私はこいつと話をしている」
『はっ!』
俺と話すことなんて無いだろ、ああアレか報酬の山分けの話か?
「お前、名前は」
「レルです、貴女は?」
「キョウカだ」
キョウカ、聞いた事ある気がする。
そしてさっきの独り言に出てきたシンという名前もここ一年以内に聞いた気がする。
「今回の件なんだが、こちらも正規の依頼で動いていてな。こちらもタダで引くのは避けたい。そちらの依頼主は誰だ?」
「あー、ちょっと待ってて下さいね。名前を確認してきます」
「いやいい、個人の依頼なんだな?」
「はい恐らくは」
「ならこいつはもらっていいか?見たところ教祖のようだし」
「あ、どうぞ。俺たちはラーメンを届けに来ただけなんで」
「そうか······感謝する」
「いえいえ、それでは」
さっさと龍に乗って下の人質のいる所へ向かう。
これでラーメンを届けたら今回の仕事は終わりだ。
······あ、キョウカっていうさっきの人、アノマロカリスの時に指揮とってた人か。
なんかすっきりしたな。




