親玉
「昨日のアノマロカリス、対策課に全滅させられたらしいですね」
「まあ妥当だよね〜」
昨日はあの後、数十個のビルを回り千匹弱のアノマロカリスを捕まることができた。
他にもアノマロカリスを狩っている同業者がいたらしく昼過ぎにはほとんどのアノマロカリスが狩り尽くされていた。
「あれで電波が悪くなったところもあるらしいぞ」
「ふーん、それでアノマロカリスはどうやって食べるの?」
「知らないから適当に鍋だ」
鍋か、火が通ってるならなんでもいいや。
そんなことを考えていると突如ドアが開いた。
「私だ」
今日初めてのお客様はソノさんだった。
ソノさんは慣れた様子でカウンター席に座り、注文をする。
「ラーメンをひとつ」
「はいよ」
注文を受けた竹林さんが調理を開始する。
「いや〜昨日のアノマロカリスは大変だったな」
「俺は何もせずにしばらくの食材を手に入れられたけどな」
「私の苦労も知らずに······」
「まあクラスA認定されたから追加でボーナスがあるんだろ?」
「多少はな」
2人がそんな会話をしているとラーメンが出来上がりソノさんの前に出される。
「ほらよ」
「ありがとう」
ソノさんがラーメンを啜り始める。
するとふっと窓の外が暗くなる。
「積帝雲でも来たか?」
「なにか嫌な予感がしますね」
店の前を砂嵐が吹き荒れる。
それと共に店がギシギシと音を鳴らし、外ではあらゆるものが風に乗って飛んでいる。
興味本位で窓から外を見てみるとアノマロカリスがいた。
それも超特大の。
「レル、どうだったの?」
「めっちゃでかいアノマロカリスがいます」
「私も見たーい。······うぉぉ」
「そんななのかしら?······うへぇ」
「どんぐらいあるんだ?」
「空に浮いてるのにここから角みたいな触覚しか見えないぐらいです」
いや下手したらこの街更地になるだろ。
「対策課にクラスG相当だって連絡しとくわ」
「ソノは行かなくていいのか?」
「これを食べ終わったら行くわ」
まあ依頼も入ってないし今回は俺たちは働かなくていいかな。
「おい今日はソノが最後の客だ。店は閉めとくからお前らあいつを狩ってこい」
「ほんとですか?」
「あのサイズはいい値段になる。なるべく手柄を取って分け前を増やしてもらえ」
「はーい」
「わかりました」
「うーす」
下敷きには絶対なりたくねぇなぁ。
なんなら行くの面倒だなぁ。
「レルはやく」
「はぁい」
「私たちにちゃんとついてきてね」
まあだるいけどいっか。
外に出て言われた通りについていくと気付けばアノマロカリスの背中にいた。
「なんで背中来たんですか?」
「え?なんとなくだけど」
「でもほら他の同業者さんもいるよ」
ほんとだ。
獣人に亜人、魔族に悪魔、天使も神族もほんといるな。
『アノマロカリスを狩りに来たやつ全員頭部に集合!!!』
頭の中に声が響き渡る。
軽いサイキックかな。
「ひとまず頭部に集まってみる?」
「そうだね」
「うーす」
大人数での共同作業って苦手なんだよな。
······いやお金がもらえるって考えたらギリ許せるか。