レルの行き先
「スパイシーサンダーバードのセットを3つお願いします」
代金を支払って店を出る。
快速列車に乗り最寄りで降りて徒歩で店へ向かう。
「ただいまでーす」
「おかえり〜」
「スパサン買ってきました」
「よくやった!」
袋を開けてスパサンセットをひとつずつ取り出していく。
「イル〜!レルが帰ってきたよ〜!」
はーい、と店の奥からイルさんの声が聞こえる。
トタトタと走る音が聞こえドアが開かれた。
「じゃっ、食べよっか!」
3人でテーブル席に座りセットを食べ始める。
「サンダーバードなんて久々に食べたよ!」
「私も」
「俺も昔はしょっちゅう食ってましたけどねー」
話をしながら食べていたらあっという間に食べ終えてしまった。
食べ終えたゴミを集めて裏のゴミ箱に捨ててから2人に告げる。
「今日は俺、帰り寄るところあるんで2人は先帰っててください」
「はーい」
「なるべく遅くならないでね」
ぱっと身支度をして店の扉を開く。
「それではまたあとで」
「じゃあねー」
ぱたんと扉を閉め、家とは逆方向に向かう。
こちら側にあるのは普段は行かない花街だ。
数十分程歩いていると華やかに光る看板が多数伺える。
ふらふらと歩いていると目の前から見た事のある顔が現れた。
「お!」
「あ······えっとフィンさんだ」
「よく覚えていたね。······ところで君もそうなのかい?」
「そうですよ。それより社長さんがこんなとこいていいんですか?」
「たまの息抜きも必要だろう」
「そうですね」
「どれ、行きつけの店がある。今夜は一緒に遊ばないか?」
「······いいですね。案内してください」
こちらとしてもどこにしようか迷っていたところなのでありがたい。
「いいが、今日は敬語はなしだ。そして俺たちが会ったことも内緒だ」
「もちろんだ」
こちらは店を紹介してもらえるのだ。
そんな無粋なことするはずがない。
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レルがどこかへ行くらしい。
私は別に興味がないのだがカレンが暇だからついて行こう、と言い出したためしょうがなくそれに同行することとなった。
レルが店を出てから数分後、私達も静かに店を出てレルの後ろ姿を探すのだった。
「あ!あれじゃない?」
「どれ?」
カレンが指した先には黒髪の青年、恐らくレルの後ろ姿が見えた。
「尾行開始!」
「はぁ······」
数十分程レルの後をつけていると風俗街に着いた。
「「あ〜······」」
まあ仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。
レルはヒューマンの男の子だし、ストレス発散も大切よね。
「ど······どこの店に入るかだけ見ない?」
「······まあいいわ」
好奇心には勝てないものだ。
良くないことだとはわかっているが、気になるものは気になる。
なにせ私もこういう場所は来たことがないのだ。
「あ、誰かと話してる」
「顔は見える?」
「全然。でも2人でどっかに行くみたい」
「ほらついてくわよ」
少し歩いた先で2人は建物に入っていった。
「はぇ〜」
「そろそろ帰りましょうか」
「うん」
突如、後ろから爆発音とともに瓦礫が飛び散ってくる。
「うわめんど」
「絶対痴話喧嘩でしょ」
振り返ると女性のゴーストが亜人の首元を掴んでいる。
「さっさと逃げよっか」
「うん」
依頼の時以外は面倒ごとに関わらない。
それがこの街で長生きする方法だと思う。