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愚者たちの行進  作者: 春香秋灯
妖精の祝福を受けた王子
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金貨十枚の価値

 最果てのエリカ様のお陰で、あの少女は無事、保護出来た。連れて行くべきだったと、ものすごく後悔した。こんな辛い目にばかりあって、可哀想なのに、少女は俺を見て笑う。責めない。

 それから、最果てのエリカ様の罰が始まった。海の聖域が真っ黒となり、もう、手がつけられなくなっていた。妖精の子の虐待は、代償が大きすぎた。

 三日三晩、不眠不休で、最果てのエリカ様自らの罰は、容赦なかった。その間に、俺は、あの帝国の筆頭魔法使いから話を聞いた。







「私も、妖精の子どもは初めてです。人になった妖精も、見てみたかったですね。ものすごく美しいそうです」

「アランと同じこといいますね」

「アラン様をご存知ですか。アラン様、元気ですか?」

 何も確執がないようで、世間話をするみたいに、アランのことを聞いてくる。

「少し前に、人になった妖精のことを聞きに行きました。元気でしたよ」

「あの人いなくなって、大変でしたよ。私の前にも筆頭魔法使いがいたんですが、力が違いすぎて。アラン様、すごいんですよ」

「そうなんだ。そういうふうには見えない、優しいおじいちゃんでしたよ」

「だいぶ丸くなりましたね」

 帝国とか王国とかの枠組みがないと、この筆頭魔法使いもいい人である。

 アランのことを知っているからかもしれない。

「しかし、これは可哀想だ」

 筆頭魔法使いが手を伸ばすと、少女はおびえて、俺の腕にしがみつく。

「なるほど、この子は、第四王女のものだ。大切にしなさい」

「この街はどうなるんだ?」

 妖精の子どもを虐待した街の行く末が気になった。妖精の価値観は、人間では読めない。

「話を聞いていると、最初の金貨十枚の価値は払い終わったんだろう。それが、また、彼女を売った男が金をせびったから、上乗せされ、を五年は繰り返したみたいだね。結果、五年で祝福は終わってる。その後は、負債だ。妖精の子どもを虐待したから、聖域は負債をため込んだ。何年分かはわからないが、その負債を今、エリカ様が払わせている」

「金貨じゃないんだ」

「金貨以上の負債だ。たぶん、この街全ての人の人生を捧げないといけないだろうね。人間と妖精は価値観が違う。妖精の子どもを虐待することは、人生を捧げないといけないほど、妖精の怒りを買っただろう。だから、エリカ様は罪人の印をつけている」

 今も、悲鳴があがっている。罪人の印は熱く熱せられた焼き鏝である。一生消えない罪人の印は、生きている限り、どこの街に行っても、酷い扱いを受ける。

 それは、一生どころではない。その子孫まで、苦しむ。

 実際、西の山の平民たちは、遠い先祖が犯した罪のために、今も蔑まされている。何かあると、山の平民だから、と言われる。

 この海の聖域近くの街は、この日から、罪人の街に成り下がった。







「よくよく考えてみると、金貨十枚以上で俺は親子を買ったわけなんだけど、実際は何枚だったか、わかんないんだよな」

「あれ、記録残っていますよ。教えましょうか?」

 なんと、優秀な側近スレイは、調べてくれていた。そうだよな、国の金なんだから、記録つけてるよな。

「その日は、聖域の教会に金貨十枚を寄付、使途不明金が二十枚とありました」

「ええー、アイリスが金貨二十枚ぽっちなのー。それはいかん。もっと払わねば」

「どこに払うんですか」

「どこって、うーん」

 アイリスは、あれから俺にべったりである。離れると不安になるようで、今も俺の腰にしがみついている。まだ、少女の上、ガリガリと肉付きが悪いので、何か間違いが起こることはない。

 それに、俺はまず、良い兄になろうと決めていた。

 いつまでもボロボロの服のままのアイリスを見る。

「まずは、アイリスを綺麗にしよう。そこからだ」

 これから時間はたっぷりある。長いこと、見つけられなかった分、うんといっぱい、お金をかけよう。

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