表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者たちの行進  作者: 春香秋灯
王国の悪魔
14/67

王弟殿下

 北の砦は、雪で覆われて、毎日が寒さとの戦いとなっていた。

 どこで知られたのか、前国王が亡くなるとすぐ、公国側から戦争が仕掛けられた。

 本来なら、国王が戦線に立つ習わしなのだが、まだ、跡継ぎがいない、ということで、王弟殿下が前線で戦っていた。


 前国王は強かったらしいが、王弟殿下はそれを超えるのではないか、と捕虜となった公国の者たちは言った。

 実際、王弟殿下本人である俺には、よくわからない。

 戦争なんぞ、ただのコマの取り合いだ。相手が武器を持ってきたので、それに対抗する武器で追い払っているだけだ。


 俺は、武器ではなく、自然災害を人為的に起こして、相手を全滅させたのだが。


 豪雪地帯に国境を置いたのは、前国王である。以前は、もう少し王国寄りに国境があったのだが、前国王はさらに北に侵略し、国境を替えてしまった。この豪雪地帯が良い防壁になると、読んだのだろう。私も前国王だったら、そうする。

 公国側としては、国境を以前の領地に戻したいらしい。こんな、何もないところを得たいなど、バカな話だ。

 お陰で、王国側が起こした雪崩に巻き込まれ、公国側の兵士は雪で圧死した。

 可哀想なので、王国側は、助かるだろう公国側の兵士を雪を掘って助けて、捕虜とした。人道支援は、後々、よい停戦条約の材料になる。

「王弟殿下、作業は終わりました」

「ご苦労。冷えたでしょう。温かい食べ物を先に食べて。捕虜の皆さんは、砦に残った者たちで対処」

「はっ!」

 俺はただ指示するだけ。温かい服を着て、温かい食べ物を食べる。それだけだが、王国の兵士たちは「優しい王弟殿下」なんて言ってくれる。


 公国側にとっては、悪魔らしいが。


 父である前国王のことは、捕虜も皆殺しの恐怖の帝王、と呼ばれていた。公国側から捕虜の交換を申し出ていたが、それを全て拒否したとか。公国側に捕らえられた王国側の兵士は、全て戦死として、家族に伝えられた。

 対する俺は、捕虜を丁重に扱うし、むやみやたらと攻撃はしないので、優しい部類なのだが、交渉する相手からは、悪魔のような人に見えてしまうらしい。

 その、悪魔、というものは、残念ながら、王国には存在しない。

 公国側の伝承か何かのものらしい。公国側の使者から聞いてみると、これがまあ、魔法が使える悪い貴族や悪い王様みたいだ。

 こんなに平和主義なのに、どうして、そんな悪魔みたい、なんていうんだ。俺は無駄な殺生はせず、平和的に停戦願っている。

 しかし、公国側は領地を返せ、と訴える。それはそれ、これはこれである。領地は返さない。

 その変わりに、これ以上の領地を広げない。

 そうこちらが譲歩しているというのに、聞かない。聞く耳を持たない公国側の上層部には、退場願いたいものである。

 そうぼやいていると、公国側の新しい捕虜から、こんな話が出てきた。


 公国側で、原因不明の病が流行している。


 治す薬も見つからず、相当数の死者が出ているとか。

「誰か、話がわかる五体満足の捕虜を使者に立ててくれ」

「はっ!」

 優秀な部下は、すぐに人選をしてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ